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気がついたらラミアに(なろう改訂版)  作者: 並矢 美樹
過去をただす

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190/238

190. 人との戦闘

 ハーピーの報告で、洞窟に集まった者共が、野盗や盗賊の類以下の存在であることが確定した。


 「そいつらの武器は分かった?」

 ミーリア様の鋭い言葉が飛ぶ。


 「はい、二人、道を挟んだ少し外れたところに弓を構えた者がいますが、他は剣と槍です」


 「分かった、ありがとう。

  アレア、レンス、その二人を気づかれない様に始末なさい。 あなたたちなら出来るでしょう。

  そして・・・」


 それから他の者の配置をミーリア様が指示しようとした時、ボブが鋭く声を上げた。

 「ミーリア様、お願いがあります」


 ミーリア様は指揮を遮られ、ちょっと不機嫌そうな感じで、冷気を撒き散らしながらボブを見て言った。

 「言いたいことがあるなら、早く言って。 急いでいる」


 ボブは片膝をついて頭を下げてミーリア様に言った。

 「この戦い、俺たち人間に先鋒を命じてください。 今回の戦いは、人間同士の醜い争いです。 ラミアの手を借りるにしても、俺たちが主に戦うのでなければ、身の置き所がありません。 それに俺たちは、アレクを除き、実戦が初めてです。 戦えるかどうかが未知数なので、もし後方を任されると、賊どもを取り逃がす恐れがあります」


 ミーリア様はちょっと考えたみたいだった。

 「分かったわ。 あなたたちの希望を叶えることにします。

  ミーリアは人間の砦方向に逃げられない様に、後方に包囲陣を敷け。

  人間は三方向から攻め立てよ。 分け方はボブに任せる。

  ナーリアは先鋒の指揮を取りつつ、それに続いて攻め込み、商人の保護を優先しろ。 アーロア、アリファはそこに加われ。

  ハーピーの3人も悪いが上空から全体を監視し、もし我らの網から逃れる者がいたら、それを頼みます。

  私は後方から全体の指揮をする。

  行動開始、全速で進め!」


 僕たちはそれぞれに行動を始める。

 あっという間に、アレア様とレンスが姿を消した。

 ハーピーはまた飛び去った。

 ミーリア様たちも別れていく。


 ボブが走りながら指示をしてくる。

 「デイヴ、キース、ギュート、バンジ、お前らはラミアの森側から頼む。 森方向に逃がすなよ。

  道の正面はナーリアたちもいるから、アレクとエレクとケンで頼む。 その方が良いだろう。

  奥側には俺とダイク、ハキ、ヤーレンで向かう」


 ナーリアも声をあげた。

 「今回は商人たちが戦っているから弓矢が使えない。

  私たちが姿を現し、私が槍を掲げたら、一斉に打ち掛かって」


 「了解」「分かった」「おう」

 それぞれに短く言葉を吐くと、エレクとケンを除いた友たちはそれぞれに散って行った。


 僕たちは少しだけ走るスピードを緩めて、見通しの良い道には出ずに戦いの場に近づいている。

 ボブたちは既に道を横切り、反対側に向かっている。

 急がないといけないのだが、ミーリア様たちの包囲陣が整って、ボブたちが反対側で待機しないと攻撃を始められない。 その時間を待たねばならない。


 セカンが気配を消して、戦いの場に近づいて行った。

 すぐに戻ってきた。

 「マズイわ。 もう商人たちまで武器を取って戦っている。

  商人たちが完全に制圧されてしまうのは時間の問題」


 ディフィーはずっとボブたちの動きと、デイヴたちの動きを目で追っていた様だ。

 「ナーリア、みんな配置に着いた」


 ナーリアは後方に目をやっていた。 ミーリア様の槍が振られた。

 ナーリアはもの凄く汗をかいている。

 「みんな、行くよ。 攻撃、打ち掛かれ!!」

 僕たちは一斉に戦いの場に突き進んで行った。


 僕らが道に躍り出ると、賊たちはすぐに気付き、とても驚いた顔をした。

 その驚いた顔に向かって、僕とエレクとケンは走った。

 そして僕らに賊たちの意識が集中して、僕たちに向かって来ようとした時、ナーリアの槍が振られた。

 僕らが賊に突っ込むより早く、左右から残りのみんなが戦いの場に突っ込んで行った。

 僕らに向かってきていた賊がほんの少し、左右から突っ込んできた友たちに気を取られた、その瞬間僕たち3人は槍で向かってきていた賊を斬り倒した。

 訓練で、ミーリア様たちに打ち掛かるより、余程簡単だった。

 それからは無我夢中で戦った。


——————————————————————————————


 ボブたちとデイヴたちに攻撃の合図の槍を振った後、ナーリアは自分も戦いの場に突入して行こうとした。

 私はナーリアの腕を掴んで、それを引き留めた。


 それに気がついた、というかそういう事態になるのを予想していたらしいアーロア様が言った。

 「ああ、ナーリアでもやっぱりそうなっちゃうんだね。

  私もその経験があるから分かるよ。

  自分の命令で誰かが戦いに入ると、どうしても自分もその場に行かなくちゃっていう気分になっちゃうんだよね。

  でもダメだよ、ナーリアはここでの指揮官なんだから、その気持ちを抑えなくちゃ」


 「でも、アーロア様、アレクたちも、ボブたちも、デイヴたちも私の命令で戦っています。 私も戦わなくっちゃ」


 「ま、そうなるよね、当然。 でも、『その気持ちに耐えるのも指揮官の役目』って、ラーリア様がミーリア様に言っていたって、私は聞いたよ」


 ナーリアは、ぐっと詰まった。


 「そんな心配しなくても、もう敵が来たわ。

  ナーリアの槍を見れば、誰がこの場の指揮官かは敵からも一目瞭然だもの、ナーリアを狙ってちゃんと向こうから来てくれるから大丈夫」


 アリファ様、それ大丈夫って言わないんじゃないでしょうか。


 「私が前で受ける。 アーロア、サポートして」


 「ほいほい。 ディフィー、反対側サポートして」


 ディフィーが明らかにうわずった声で応えた。

 「アーロア様、私に出来るでしょうか?」


 「大丈夫、出来る出来る、私が保証する。 薙刀二人の実力を見せましょう。

  セカンは、もし抜けられたら、ナーリアを守って、入ってきたのを斬り捨てて」


 ここまでアーロア様が言った時に、もう敵がやって来て、それを迎え撃ったアリファ様に斬りつけてきた。

 アリファ様は少しも動じることなく、盾で受けると、左手の短槍を敵に突き刺した。


 「ほら、もう敵来たよ」


 続けて3人の敵が来た。

 1人にアーロア様が対峙し簡単に斬り捨てた。

 残りの2人の片方をアリファ様は短槍で牽制すると、ディフィーに斬りかかろうとしたもう1人を盾で突き飛ばし、

 「はい、ディフィー」

 ディフィーは何か言われるままにその1人を斬った。


 牽制していた敵がその隙にアリファ様を斬ろうとしたのだが、当たり前の様に盾に弾かれた。

 アリファ様がそれに対して短槍を突き出そうとしたみたいだが、その前にアーロア様が斬っていた。


 ちょっと敵の間が開いた。

 「ちょっと、アーロア、あなたはディフィーとは違うんだから、取らないでよ」


 「ディフィーだって、私と同じ様にやれるよ。 それを手伝っているんだから、私もいいじゃん」

 なんか2人とも、とても余裕がある。


「あの、アーロア様、私は何をしたら良いでしょう?」

 一人指示されなかったサーブがアーロア様に声を掛けた。


 「あ、サーブはここでそのハルバード振り回されたら、ちょっと迷惑だから、アレク追っても良いよ。

  みんなアレクが心配って顔しているから、一人くらいはそっちに行っても良いや。

  アレクのところに行くまでは戦っちゃダメだよ。

  敵のいない所を縫って、アレクに近付くんだよ」


 「わかりました」

 サーブは嬉々としてアレクの戦っている方向に向かって行った。


 私もなんだか仕事がない。 敵が来ても、3人で終わってしまうし、敵もなかなか来ない。


 「あの、私、する事がないのですけど」

 私が言おうと思っていたことを、その前にナーリアに言われてしまった。


 「ナーリアはそこで槍を立てて、立っている事が仕事。 周りを見回していなさい」


————————————————————————————————


 戦ってみて分かったのだが、僕たちは結構強いみたいだ。

 とは言っても、最初の一撃が賊に効いたのは、賊が二重に不意を突かれたからだろう。

 まずは僕たちが現れた事、他の者が現れる事を賊は想定していなかっただろう。

 そしてもう一つは僕らの方に気を取られた時に左右から攻め込まれた事。

 これで賊は混乱したし、随分と一度に数が減った。

 そして気がつけば、僕たちはそれぞれに賊と一対一で対峙する状況になっていた。


 その時にはもうミーリア様たちも包囲を狭め切って、僕たちのすぐ側に居た。

 もちろんナーリアたちも近くに居たし、アレア様、レンスも来ていた。

 そのみんなが見ている中で、僕たちは危なげなく完勝した。


 賊の残りは5人だけで、一かたまりになっていたが、抵抗を諦める様に剣を鞘に戻した。

 僕は終わったと思い、転がっている商人に生きている者はいるのだろうかと、つい視線を賊から外してしまった。

 その瞬間、賊がまた剣を抜いて襲いかかってきた。

 僕はシマッタと思ったが、間に合わない斬られると思った。

 その時、近くに居たセカンの影が見えたかと思ったら、キラっと何かが煌めいた。


 「アレク、最後まで油断したらダメ。 危ない」

 僕に襲いかかってきた賊は、セカンに斬られていた。


 他に3人、同様に斬られている。

 エレクを襲った賊はアレア様が斬っていた。

 ハキを襲ったのはミーリベ様が。

 そしてギュートを襲ったのは、キースが剣で斬っていた。


 ミーリア様が一人だけ生き残っている賊に近付いて行った。

 何だか雰囲気が凄くやばい、騙し討ちの様な真似にミーリア様は激怒している様だ。

 ミーリア様の場合は怒れば怒るほど、冷静に冷たくなっていく、他のミーリアの方たちも僕たちも気圧されて、自然と体が後ろに下がってしまう。


 「あら、一人だけ残ってしまいましたね。

  あなたは不意打ちはしないのですか?」

 ミーリア様は冷たい口調で、最後の賊に質問した。


 「参った、降参だ。

  まさか本当にラミアが出て来るとは思わなかった。 ラミアが冬にも動けるとは知らなかった。 それにラミアの元にこれほど腕の立つ奴らがいるとも思っていなかった」

 最後の賊は自分から鞘ごと剣を投げ捨て、僕らを見回してそう言った。


 「あなたはこれだけのことをして、降参の一言で用が済むと思っているのですか?」

 ミーリア様の声はあまりに冷たい。


 賊は焦ったかの様に言った。

 「我の精をそなたたちに与えよう。 そこに居る者たちより高貴な精だぞ」


 ミーリア様から放出される極寒の冷気がブワッと膨れ上がった気がした。 僕たちは思わず半歩後ろに下がってしまった。

 ミーリア様はとても冷たい笑顔を浮かべると、何の躊躇いもなく、サクッと槍の穂先を賊の喉に突き入れた。


 「ラミアが誰の精でも欲しがると思っていたのですか?

  これでその認識が大きな間違いであったことだけは認識できましたね。

  ラミアは腐った精など欲しくないのです」


 ミーリア様がスッと槍を引くと、賊の首からは血が吹き出した。

 賊は血を止めようと首に手を当てたが、そのまま倒れて死んだ。

 ミーリア様はもうそんなのは見ていなかった。


 「商人とその護衛でまだ生きている者がいないかどうか確認して、もしいたら治療と保護を優先して。

  とにかく急いで確認しなさい」


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