19. 部屋を出て二人は
時間軸が少しズレて、戻ってきた2人が部屋を出ている時の話です。
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私はディフィーと一緒に部屋を出た。
食事を取りに行ったりの雑事は基本私・ディフィー・レンスの三人で請け負っている。
ナーリアとサーブはアレクの見張り役だからだ。 ナーリアは私たちのリーダーだから。 そしてサーブは私たちの中で力が一番強いからだ。 力ではやはり人間の男には敵わないと思うから、何かの時に複数で対処するにしても、一番力のあるサーブがいた方が良いだろう。
はっきりとそう決めた訳ではないが、五人の中では当然の暗黙の了解だ。
アレクが常に一緒に居ることになっているから、部屋の中では話せないこともある。
アレクのことを本人の前では話せない。
ラミアについても、アレクにどこまでしゃべって良いのか判断に迷うこともある。 もっともその辺はナーリアあたりは何でも構わずに話しそうなので、私はそれに合わせるだけで良いかと、無責任に考えているけど。
アレクのことを自分がどう感じている、思っているか、自分と他の人とは感じ方が同じなのか、異なっているのか、そんなことが気になる。
正直なところ、私はアレクが気になって仕方がない。
単純に人間の男の精を受けて、そのエネルギーに衝撃を受けたからだけではない。
もちろんそれもあるけど。
その辺を話してみることができるのはディフィーだ。
レンスはあまり自分の言葉を発しないし、発する時は彼女にとって決定事項であることが多いからだ。 私がアレクのことを話しても、うなづくか首を傾けるかくらいしか反応してくれないだろう。
ディフィーは私と見方は違っても、対等に反応してくれるだろう。
二人で話せる貴重な時間だから、早速ディフィーに話しかける。
「アレクのことをどう感じる?」
「人間の男の精は衝撃的だったわ。 あれほどエネルギーが得られるとは想像していなかった」
「うん、それはそうね。 でも、それ以外の部分は?」
「それに触ったり触られたりするのも、とても気持ち良いわね。 私は大好きになった。 くっついているだけでも気持ちが良い。
人間はラミアと違って、恒温動物だからかな。 ラミアは色々な条件で、体温の変化の幅が大きいらしいから」
「確かにそれはそうね、そういうところは私も全面的に同意する。
でもそうじゃなくて、信頼できるかというか、信用できるかってところよ」
「そうねぇ。 確かに、アレクを私たちのエネルギー源としてだけ考えるのは一方的かな、と思う。
彼にも当然しっかりとした人格があるのだから」
「そう、そこ。
私は最初は精というエネルギーを得られる存在としてだけ見ていたのだけど、実際に接しているとそれだけじゃないじゃん」
「そうね、彼はもちろんラミアではなく人間だけど、話せば普通に共通の理解が出来るし、彼の方から私たちに有利になる様な提案もしてくれる」
「私なんて、私たちが知らない草の汁を使うという方法で、傷の手当てまでしてもらったのよ。 単純にエネルギーを得るための道具みたいには考えられない。
ところで、彼がそんなことをしたのは、どういう意図があってのことだったのだと思う?」
傷の手当てをしてもらったことで、私の心が揺れたのは確かだ。
私は好奇心が旺盛な方だから、彼が提案した木ノ実の採取方法を一番に試してみた。 それは変わったことをしてみることが楽しそうだったからだけで、好意から彼の提案に従った訳ではない。
擦り傷を作ったのは、私が調子に乗ったからで、彼の提案の不備ではない。 それなのに私に対して傷の手当てを考えてくれたのは、単純な好意だと思う。
私は彼を対等の者と全く考えていなかったが、彼は種族を超えて対等の者と考えてくれたのかもしれないと思った時、私の心は確かに揺れた。
「あれはきっと意図なんてないのよ。 人間が誰かケガをしたら、それに対して行う行為。
それを無意識にあなたにも適用したのよ」
「やっぱり、そう思う? アレクにとっては人もラミアも無意識に同じ様に考えたってことよね」
「きっと、そんな意識もないわね。
それよりも私は、アレクがあの草の汁が傷に効く知っていたことの方に興味があるわ。
彼はもっとたくさん私たちが知らないことを知っている」
「彼はそれを私たちに教えてくれるかしら?」
「きっと教えてくれそうな感じが私はするわ。
なんとなく彼は私たちに親しみを持ってくれている感じがするもの。
そして私たちも、なんだか彼は人間だけど、親しくなっている感じがしている、違う?」
「そうね、そんな感じが私もするわ。
そして彼は親しくなった者に対しては優しいと思う」
「だからきっと彼の不利益にならないことならば、私たちの利益になることでも教えてくれると思うわ。
私たちもなるべく彼の利益になる様に振る舞えば、彼はより一層ね」
「そうね。 でも私はそんな風に難しく考えないでも良いと感じているわ。
今、私はアレクに好意を向けるのが心地好い。 だからなるべく良くしてあげる。
聞きたいことは聞く。 ダメなことなら、アレクも話しはしないでしょ」
「そうね、そういう風に考える方が健全ね。
私も彼は嫌いじゃないから、なるべく良くしてあげる。
それになんていっても、彼の精を受けるのは本当に魅力的だもの。
そのためだけでも、良くしてあげる価値は十分以上にあるわ」
「私はなんだかみんな、それだけじゃ無くなるんじゃないかっていう気もするけどね」
「どっちにしてもアレクは、私たちが知っている今までの人間とは、偶然だけど違う風になったのかもね」
私たちは小声でそんな話をしながら朝の食事の準備をし、部屋へと戻った。
部屋に戻った時、ちょっと今までと雰囲気が違っているのにすぐ気がついた。
話を聞いて、私は何故かズルいと思ってしまった。
アレクの精を一番最初に受けたのは、アレクを捕らえた時一人で頑張ったのだから、それは正当な報酬だと思う。
でも他にもナーリアはアレクに対して一番最初に何かしている気がする。 そして今回は、逆さの位置でアレクに身体全体で、強く密着したというのだ。 ズルいとしか言いようがない。
しかもしかもだ。 ナーリアはとっても気持ち良かったみたいなのも羨ましいけど、それ以上にアレクが今までの時と違う態度になっているのが妬ましい。
私は口移しの水を飲ませたせいで、私がやってみたかったからではあるけど、気持ちよかったではなく、唯一気持ち悪かったと言われたのだ。
なんだか、とても悔しい。




