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気がついたらラミアに(なろう改訂版)  作者: 並矢 美樹
過去をただす

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184/250

184. 洞窟への対処

 温泉から出た僕たちは軽い食事をして、訓練のために奥に向かう。


 イクス様だけは

 「どうせ訓練が終わったら、汗を流しにここに戻ってくるのでしょ。

  ラーリアたちや人間ちゃんたちは当然だけど、きっと話を聞いてミーリアたちもここに来るわ。

  最近は毎日の食事の準備を奥ではほとんどミーレナがしているのだけど、たまには彼女も楽をしてもいいでしょ。 私はここで食事の準備をしているわ。

  とは言っても、今、ラーリアたちはラーリアを除けば、ほとんど食事が必要ないのだけどね。 人間ちゃんたちを独占状況だから、エネルギーが足りちゃっているから」


 ああ、そうか、ボブだけはラーリア様以外も、ミーリア様、アレア様、アーロア様と起きている人が多いから、ラーリア様は食べ物も必要なんだ。

 デイヴ、エレク、ダイクの3人はラーリア様たちとミーリア様たちで2人。

 ケンは、それにアリファ様を入れて3人だ。

 アリファ様は「私は上位ではなくなりましたから。」と遠慮されたみたいだが、ミーリア様が「起きている者であなただけ人間からの精が得られないのは、周りの者が気を使うわ。 あなたも前のようにケンからもらって良いことにします」という言葉で数に入ったのだ。


 「でも私は戦いの後すぐに上位を外れましたから、今までもケンから精をもらったことがなかったのですが」


 アーリア、アーレア、アーロアが人間の精を受けられる様になったのは、戦いの後に僕らが順番を守っていることを、ラーリア様とミーリア様が知ってからのことだから、アリファ様はその順番に今まで入ったことがなかったのだ。


 ミーリア様はそれを忘れていたみたいだったが、

 「とにかく1人だけ別扱いはマズイのよ。 言われた通りにしなさい。

  それに、イクス様は物品係をあなたに引き継ぐつもりだということだから、あなたは公式な上位ではなくなったけど、準上位というところだから構わないわ」


 「え、私、そんな話伺っていないのですけど」


 「それなら今聞いたのだから、それでいいじゃない。

  イクス様も子育てをしながら物品係は出来ないから、丁度いいってことだったのよ」


 どうもミーリア様にしては珍しく、グダグダだったらしい。

 そしてバンジはもちろんラーリナ様とミーレナさんの2人。

 そしてハキ、ヤーレン、ギュート、キースは1人のみということで、最も独占状態なのがラリベ様、ラーリク様、ラリト様、ラーリン様の4人で、もうこの4人はお茶を飲む程度で、ほとんど食事を必要としてないというか、エネルギーは一杯で食欲はないのだとか。


 その日の訓練には、訓練の時には普段は姿を見せないアリファ様も来ていた。

 アリファ様は少し離れた場所から、みんなが訓練する姿をとても真剣に眺められていた。

 特にミーレナさんの訓練する姿と、アレア様、アーロア様の姿を熱心に見ていたようだが、だんだんと元気がなくなり、大きな溜め息をついていた。


 訓練が終わると、全員が僕らの家にやって来て温泉に入った。

 ダイクの先見の明で大きく作った温泉場だが、流石に全員一度に入るという訳にはいかず、二回に分けて入ることになった。

 当然僕等は後からとなり、ミーレナさん、アレア様、アーロア様も遠慮されて後からにすることになった。

 すると、ミーレナさんが後の組みならと、ラーリナ様とバンジも後の組みとなった。


 アリファ様は、「私は訓練をしていないから」と温泉自体を遠慮されたが、ケンが「何を言っているのですか、一緒に入りましょう」と促していると、ラリファ様とミーリファ様もアリファ様と一緒に入ろうと後の組みになった。

 ラーリア様とミーリア様もアレア様とアーロア様が後の組みになったので迷ったみたいだが、自分たちが後にすると先には他の者が入りづらくなりそうだったので、そのまま先の組みで温泉に浸かった。


 「訓練の後にここまで移動するのは面倒くさいな。

  本当はここで訓練ができれば良いのだが、さすがにここでは手狭だな。

  明日からは訓練は禁足地前の門のところの広場で行うことにしよう、奥よりはここに近いからな」

 ラーリア様のこの一言で、訓練を行う場所は奥から、門の前の広場に変わった。

 僕らの家の前は、もともと門の前の広場ほど広かった訳ではないのに加えて、この温泉場を広げたり、皮の毛抜き場を作ったりして、かなり狭くもなったからだ。


 僕たちが風呂に入っている間に、イクス様を友たちが手伝って、作業場に食事が用意されていた。

 ミーレナさんがイクス様にとても恐縮していたが、そのミーレナさん自身は食事を取ろうとはしていない、お茶で十分のようだ。

 結局のところ、ラーリア様とミーリア様以外のラーリア様たちとミーリア様たちは、お茶だけもらって、温泉の縁に座って尻尾を浸けて楽しむことを優先したようだ。


 ラーリア様が少し悪い顔をしてこんなことを言った。

 「アレク、食事をいらないと言っている者たちは、どうやら人間を独占していることを誇っているようだから、あいつらのことは放っておいて、こちらではあいつらの知らない何か新しい物を食べることにしよう。

  何か考えておいてくれ」


 「ラーリア様、そんなに都合よく、新しい食べ物なんて出て来ませんよ」


 僕はそう言ったのだが、

 「いいえ、きっとアレクは何か考え出してくれるんでしょ」

 横からミーリア様に変なプレッシャーを掛けられた。


 ナーリアたちからは期待の目を向けられた。

 うー、これは何か考えないとダメかな。


 食事が終わる頃になって、アレア様とアーロア様から、真剣な話がされた。

 どうやら2人で、人間の道の近くの洞窟にいる人間たちを偵察していたみたいなのだが、どうもその様子が怪しいらしい。


 「私の技能の許す限り近づいて観察したのですが、最初は漏れ聞こえてくる話から野盗の類かと思ったのですが、ちょっと違うようなのです。

  どうやら野盗を装った何者かであるようなのです」


 「もっと正確な情報を知るために、私たちよりも耳の良い者を起こそうかとも思うのですが、どうしましょうか」


 僕もなんだか怪しさを感じたので、ハーピーに頼んで監視してもらっていることをラーリア様、ミーリア様に伝える。

 ラーリア様はもっと情報を得るために、アーレアの何人かを起こすかどうか迷っているようだった。


 「その者たちが森の中に入って来て、我らの脅威となる可能性は低いのではないでしょうか。

  もし脅威となる可能性があるなら、戦闘力の高い残りのミーリアを起こす方が良いと私は思います」

 ミーリア様がラーリア様にそう進言した。


 僕は、なるほどそうかもしれないと思った。 ラーリア様たちは今は戦闘ができないのだ。 ラミアの里の安全を考えるなら、そっちの方がベターな選択の気がする。


 迷っているラーリア様に珍しく、デイヴが意見した。

 「ラーリア様、その洞窟に住み着いた人間なのですが、僕たちもその件について話を聞き考えてみたのですけど、どうも嫌な感じしかしないのです。

  それでですが、もしその人間たちと戦わねばならないことになったら、今度こそ僕たちを使ってください。

  今回は人間である僕たちが戦うことに意味があるような気がするのです」

 なんだか食いしん坊、楽天家のデイヴとは思えないしっかりとした厳しい口調でそう言った。


 ラーリア様はちょっと驚いた顔をしてデイヴを見たが、そこに確固とした決意を読み取って言った。

 「分かった。 もし戦わねばならない時が来たら、今回はお前たちに我らの代わりに戦ってもらう。 よろしく頼むぞ」


 友たちはみんな引き締まった顔でうなづいた。

 結局、ハーピーの監視もあるからということで、変化があるまで現状維持ということになった。


 アレア様とアーロア様は、もう1つ気掛かりがある様だった。

 それはその人間たちのいる洞窟から、アーリア様、アーリル様のいる洞穴が近いのだ。

 アリア様とアーロア様はボブとダイク、そしてバンジを呼んで来た。

 ボブとダイクは2人の元に行こうとしているみたいだから分かるが、バンジにはどんな用事なのか僕には分からなかった。


 「今回はアレクには行ってもらう必要はないよ」

 アーロア様にそう断られてしまった。


 「それじゃ行きませんから、話くらい聞かせてください。

  気になっちゃうじゃないですか」


 「まあ、話を聞くのは構わないよ」


 やって来たバンジにアレア様が言う。

 「バンジ、悪いがまたアーリアとアーリルの洞穴に行くのに付き合ってくれ」


 「えーと、俺が呼ばれたということは何か作ろうというのですか」


 「ああ、扉の補強を頼みたいのと。 一見では洞穴があることが分からないようにカモフラージュを頼みたいんだ」

 ああ、なるほどそういうことか、と僕たちは思った。


 「本当は離れた別の場所に移れれば良いのだが、あの2人がなんとか暮らせるような上手い場所を思い浮かばないんだ。

  仕方がないから、なんとか人間たちの目を向けさせないようにしたいんだ」

 アレア様はそう言い、アーロア様は

 「1番の問題は煙だと思うのよね。 これはどうしたら良いと思う」

と質問した。


 「なるべく煙が目立たないように拡散するような工夫はしますが、薪を燃やせばどうしても煙は出ちゃいます」

 ダイクがそう答えるとボブが、

 「ケンに頼んで、炭を運ぼう。 そうすれば煙はほとんど出ない」


 「そうだな、それが良い」

 ダイクも賛成した。


 それらの話を僕と共に聞いていたアリファ様が言った。

 「私、今日は2人のところに行かなくても良いかしら。

  私が行っても、この左手一本ではあまり作業の役に立たないだろうし、もう食料を私が行かなくても2人は受け取ると思うの」


 「アリファ、それは別に構わないけど、それであなたは何をするの?」

 アーロア様がアリファ様に訊ねた。


 「私は、ちょっとアレクに相談があるのよ」

 「僕にですか?」


 5人を送り出した後、僕はアリファ様と話をする。

 「アリファ様、僕に相談てどの様なことですか。」


 「アレクはミーレナ様の動きを見てどう思う? ミーレナ様は以前と同じ様に戦えると思わない? いえ、私には以前よりも強くなられた様な気がするわ」


 「はい、僕は以前のミーレナさんの戦闘は見たことがないので、比較はできないのですけど、ミーレナさんがとても強いのは、僕でも分かります」


 「そうよね。 ミーレナ様は、やっぱり本当に凄いわ。

  ところで、ミーレナ様も私も片手が使えないのだけど、私にもミーレナ様と同じ様なことが出来るかしら?」


 ミーレナさんの話が出たところで、この質問が来るのではと思っていたのだが、受けたくない質問だった。 僕は言い難いけど、思った通りのことを言わなくてはいけないと思った。

 「いえ、残念ですが、ミーレナさんのあの技は、アリファ様には無理だと思います」


 「やっぱりそうよね。 私もそうじゃないかと思ったわ」


 ミーレナさんは片手が使えないといっても、左手の指が動かないだけで、手首から上は普通に動く、それに比べてアリファ様は状態がもっと酷く、利き手であった右手の肘から下が全く動かないのだ。 条件が大きく違う。

 普段している格好からして違う。 ミーレナさんは普通の格好でいられるのだが、アリファ様は右手が肘から下がプラプラしてしまい邪魔になるので、右手を仕方なく首から回した布で吊っているのだ。


 「私もみんなが訓練しているのを見て、何かしたいと思ったのだけど、自分ではやれることが見つからないの。

  アレクなら、もしかしたら私でも扱える武器を知っているかと思ったのだけど」


 僕は考えてみたのだけど、何も思い浮かばなかった。

 片手で扱える武器と考えると僕にはショートソード位しか思い浮かばないし、それでは実際の戦いの場では不利すぎる。 右側からの攻撃に対して、あまりに不利なのだ。

 短い剣を使うなら、レンスの様に双剣が普通になってしまうし、利き手でない左手の非力さを補うのに、ディフィーの様に薙刀という訳にも行かない。

 僕は自分では何も思いつかなかったので、セカンを呼んでみた。

 セカンは図書館の本の中から、居合いというか抜刀術を見つけ出したのだから、何か案が思いつくかもしれない。


 セカンはかなり長い間、黙ってじっと考えていた。

 「アリファ様、私とミーレナさんがやっている抜刀術は、相手が自分の間合いに入るまで、武器を抜かずに待つという忍耐を強いられるのですが、それでも間合いに入った瞬間に自分から先に攻撃をします。

  それよりも酷くて相手の攻撃を受けることが必要になる様な戦い方でも、アリファ様は耐える覚悟がありますでしょうか」


 「相手の攻撃を受けて、一撃で殺られてしまわないのなら、構わないわ。

  少なくとも相手に一撃を放つまでは、どんなことがあっても耐えてみせるわ。

  何もできないよりは、その方がずっとマシだわ」


 「それでしたら、こんな戦い方なら出来ると思うのですけど」


 セカンの案を実現するために、僕とセカンと、それに鍛治をするボブたちとは、アリファ様の装備を作るのにかなりの時間を取られることになった。

 他と全く違う装備だし、かなり試行錯誤してみないとアリファ様にあった物を作ることができなかったからだ。


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