183. ハルバード
イクス様が泊まっていく時は、イクス様の意向が優先される。
まあ、みんなより順番というか、回数が少ないこともあるのだが、今は一応エネルギー摂取をしなければいけないのでは、という配慮がされているらしい。
イクス様は最初に僕に尻尾の方の膨らみを触らせた。
「ほら、もうここに卵があるってアレクくんにも判るでしょ。
触って判るとおり、鳥みたいに卵に硬い殻がある訳じゃないから、少しのことで割れちゃう様な事はないけど、逆に硬い殻で保護されている訳でもないから気をつけないといけないのよ。
ま、そこは胎生の人間と同じ様なものね」
イクス様は説明してくれるのだが、僕は親になった経験がないから、うーん、そうなのかと思うだけの頼りない男親だ。
「それで、ラミアは人間と比べると妊娠期間と言って良いのか分からないけど、卵が出来てから産まれるまでの日数が人間よりずっと短いことからも想像できると思うけど、とても小さい状態で産まれるのよ。
それは、びっくりしないでね。 そしてそこから最初はすごい勢いで、どんどん脱皮して、育っていくわ」
そう言いながらイクス様は、僕のを手で刺激していた。
「ま、今日はここまでね。 そんな訳で激しくするのはダメだから、アレクくんは横になっていて、あまり動かないでね。」
そう言うと、イクス様は僕の上に跨った。
「今日はなるべく長く楽しむつもりだから、みんなも参加して良いわよ。
アレクくんも近寄ったみんなを触ったりしてあげてね」
みんなその言葉を聞いて僕にくっ付いて来た。
「で、私はこのまま、少し違う話をするわ。
サーブちゃんは本当に体が大きくなったわね。」
「はい、イクス様」
「それでサーブちゃん、ハルバードは使える様になった?」
「まだとても使えると言えるレベルではないと思うのですが、毎日ラーリア様が付きっきりで教えてくださるので、最初から比べれば大分振れる様になってきたかなって、自分では感じています」
「そう。 やっぱり血かな」
「はい?」
イクス様の言葉に、サーブだけでなく、僕もみんなも動きが止まってしまった。
「サーブちゃんが今使っているハルバードはちょっと訳ありなのよ」
「はい、元々ラーリア様が使っていた物を直して、私に下さった物ですから特別です」
サーブはとても名誉なことの様にそう言った。
「まあそうなのだけど、あのハルバードはラーリアが持つよりも、サーブちゃんが持つ方が相応しいのよ。
それだからラーリアは傷み過ぎているので本来なら鋳潰して作り直した方が簡単なのに、ボブくんに無理を言って面倒な作業になるのに、直させたのよ。
気づいているか分からないけど、柄の部分も直しているけど、なるべく元のままにしてあるのよ」
「あの、どういうことなのですか?」
サーブが凄く真剣な声でイクス様に訊ねた。
「あのハルバードはね、元々はね、サーブちゃんのお父さんの物だったの。
この前のゴブとの戦いではラーリアはどうしても強力な武器が必要だったから、あのハルバードを使ってしまったけど、最後まで使うかを迷っていたのよ。
それだから、絶対にサーブちゃんに受け継がせたかったのね。
もちろんサーブちゃんがハルバードを選ばなければ、他のサーブちゃんの姉妹で受け継ぐ者がいないかを探したと思うけどね」
そうか、サーブのあのハルバードはそんな謂れがあったのか。
僕はそんなことを考えながらも、ハルバートの謂れに気を取られているサーブを、慰る気持ち半分、いたずら気分半分で攻撃した。
サーブは、話の方に意識を取られて、無防備な時に不意打ちを喰らった形になったからだろうか、それとも色々な気持ちが混ざって、気持ちが昂っていたからなのだろうか、急激に昇り詰めて崩れ落ちてしまった。
サーブ脇に退けて布団を掛けてやると、今度はナーリアがちゃっかりサーブがいたポジションを占めてから、イクス様に質問した。
「他にも誰かのお父さんが何か残していたりするのですか?」
「実はあまりそういった物は無いのよね。
あとはね、私が使っている双剣くらいね。 だから私の双剣はもう少ししたらレンスにあげるわ」
ナーリアが移動して空いた場所をレンスとディフィーで争っていた様だったのだが、レンスの動きが止まったので、ディフィーがそこを獲得した。
「そのお母さんの双剣は、お父さんの物だったの?」
「そうよ。 だからあなたが本当に双剣をちゃんと使える様になったら、これはあなたにあげるわ」
「絶対よ!」
「そんなに睨まなくても、ちゃんとあげるわよ。
でも私が認めるくらいちゃんと使えるようにならなかったら、絶対にあげない」
「えーと、みんな同じ年に生まれているのですから、みんなの父親は一緒にいたグループの可能性が高いと思うのですけど、何でそんな差ができたのですか?」
「アレクくんの想像通り、みんなの父親は一緒のグループというか、仲の良い友人だったわよ。
私たちは、みんなの父親が野盗に襲われている所に、偶然遭遇したのよ。
みんなの父親はそれぞれ強かったみたいなんだけど、如何せん多勢に無勢で、私たちが駆けつけた時には、もうほとんど瀕死の状態だったの。
レンスの父親はもうその時から体調が悪くて、馬車の中に隠されていたらしいのだけど、もう他のみんながやられそうな状態だったから、馬車から飛び出して、血を吐きながら奮戦している状態だった。
そこにその時のラーリアが突入したの。
野盗は30人もいて、みんなの父親は5人でしょ。 それも最初は4人で戦っていたのだもの、良くまだ生きていたというのが本当のところよ。
それもその時点で半数以上の野盗を討ち取って、他のほとんどにも手傷を負わせていたのだもの、凄まじいとしか言いようがないわ。
そんな状態だったから、サーブちゃんの父親はハルバードを持って倒れていたから、分かったのだけど、後の3人はどんな武器を使っていたかも、その時点では分からなかったの。
そして、私たちは瀕死の状態だったあなたたちの父親に、とりあえず噛み付いて意識を奪って、ラミアの里まで連れてきて出来る限りの治療をしたのよ。
運良く、彼らはとりあえず何とか一命を取り留めて、意識を取り戻したわ。
状況を理解した彼らは、助けられた礼を私たちに言ってくれたのだけど、何も礼として差出せる物が無いと言って、済まながっていたのね。
そこで、その時のラーリアのリーダーは彼らにおずおずと申し入れたのよ。
それなら、あなたたちの精をくれないかと。
すると、『そうであったラミアは精をエネルギーとするのであったな』と返事されたのだが、リーダーはその言葉の意味の間違いを指摘した。
『私が言った意味はそういうことではない。
我らはそなたらの闘いに感銘を受け、そなたたちとの間に子を設けたいと願ったのだ。
その願いを聞き届けて頂けないだろうか。
実はラミアは子を成すと生き続けることが出来ない。
だから、我らとしてはとても真剣なお願いなのだ』と。
あなたたちの父親たちは即答を避けたわ。
その時の私には、あなたたちの父親が即答を避けた訳が分からなかった。
本当のことを言えば、まだ若かった私は、命を助けられても、それでもラミアに協力してラミアの子を持つのは嫌なのか、と少し怒りの感情と絶望的な感情を持ったわ。
そしたら、私が担当していたレンスの父親に、『それは違う』と言われたの。
これだけの重傷では、今生きているといって生き続けられる可能性は低い、それでは子供を育てることが出来ない、そんな無責任な状態で子を成して良いのだろうかということだ、と。
その時のラーリアのリーダーはは私よりずっと年上だったから、いえ違うわね、私がラーリアの中で1人離れて若くて、戦闘力以外のことではずっと他のラーリアに劣っていたのだと思うわ。 とにかくリーダーはその辺の人間の男の意識が分かっていたのね、彼らにこう言ったわ。
『私らは子を産めば、その後少しばかりの時間、子に乳をやって育てる時間が与えられるだろうが、それできっと死んでしまうだろう。
でも、あなたたちの子が得られたなら、絶対にここにいるラミアたちは全力で命を懸けても育ててくれると信じている。
あなたたちも信じてくれないだろうか。
自分で育てられない可能性は、率直に言わせてもらうが確かに大きいと思う。 でもラミアは子を決して粗末にしないと誓うから』
あなたたちはそうして生まれたのよ」
僕はイクス様の話を聞いていて、自分はどうなんだ、と自らを振り返らずにはいられなかった。
自分も父親になろうとしているのに、そこまで生まれてくる子供のことを考えていただろうか、と。
ただ、ラミアのすることに流されていただけではないだろうか。
「あら、いけない。 話が長くなり過ぎて、アレクくんの興奮が収まってきちゃったわ。
続きはまた今度ね。
ナーリアちゃんも、みんなも、もっとアレクくんを刺激してあげて」
ナーリアたちもみんな話を聞くのに一生懸命で、動きが止まっていたのだけど、イクス様に急かされるように動き出したが、最初の勢いはなくなっていた。
それでも、もちろんイクス様に出させられたけど。
翌日の朝もイクス様に今度は口で出させられてしまった。 それも起きた瞬間です。
「ほら、私に掛かればこんなものよ」
「流石です。 イクス様」
「とても参考になりました」
「私も練習します」
「悔しいけど、負けてる」
「でも、素早く出させるだけが芸じゃないからね。 そこは間違えないように」
何なのこの会話、何だかいたたまれない。
ところでサーブは、あ、まだ寝てるのか。
温泉場は一晩経ったので、流石にお湯が一杯に溜まり溢れていた。
もちろん僕たちは一番に風呂に飛び込んだ。
「これが温泉なのね。 やっぱりちょっといつものお風呂とは違うわね」
イクス様がそう言うと、ディフィーが
「何となく、お湯が滑らかな感じがします」と言い、
ナーリアが
「嫌じゃないけど、少し匂いもするよね」と指摘した。
いつも通りナーリアに手荒に起こされたサーブが
「ま、何であれ、気持ちが良いのは確かさ。 それだけで十分だよ」
と言ったら、セカンが
「サーブに同感」と珍しくサーブに同調していた。
レンスはというと、風呂の中をゆらゆらと気持ちよさそうにゆっくり泳いでいる。
脱皮して体が大きくなったから、もうそういう行為は似合わないのだけどなぁ。




