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気がついたらラミアに(なろう改訂版)  作者: 並矢 美樹
過去をただす

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178. 卵と防具と武器

 「お母さん、良いの、それ。

  お母さんはラーリア様たちが子供を産むのに、アレクだけが子供を持てないのは可哀想だということで、私たちの代わりに急遽アレクの子供を産むことになったのだよね。

  ラーリア様たちより先にアレクとの間に卵できちゃったって、それで構わないの」


 「そんなこと言ったって、もう出来ちゃったんだからしょうがないじゃない。

  アレクくんが命懸けでハーピーの里に行くと思ったら、卵への道が勝手に開いちゃたんだもん。

  それに、卵が出来たのは私だけじゃないわ、ラリオとラーリンも出来ちゃったって」


 レンスが黙った。


 「あの、イクス様、それって、ラリオ様もラーリン様も、デイヴとキースの命の危険を思ったら、卵への道が開いちゃったってことですよね。

  だとしたら、卵が作れる体にギリギリなったと思われる、私とナーリアとレンスも卵への道が開いてしまうかもしれないってことですよね」


 セカンがイクス様に、ちょっと困ったような、ちょっと嬉しいような、複雑な顔をしてイクス様に訊ねた。

 ナーリアはそのセカンの言葉を聞き、露骨に嬉しそうな顔をした。

 レンスはびっくりした顔をしている。


 「さっきイクス様はもう一年待ちなさいと言われましたけど、勝手に開いちゃって卵が出来ちゃったら、それはしょうがないですよね」


 「まさか、お母さんと一緒の時にアレクの子供が産めるとは思ってなかった」


 僕はどんな顔をして良いのか分からない。

 イクス様に僕との間の卵が出来たと聞いた時に、もう頭が真っ白だったのだが、なんだか3人とも子供を産むことを前提に話している。


 イクス様は苦い顔をして言った。

 「訂正します。 勝手に開いちゃったは嘘です。

  あの時、アレクくんがハーピーの里に行ったら、もしかしたらもう戻ってこれないかもしれないと思ったら、何としてもアレクくんの子供が欲しいと思っちゃって、自分から開いてしまったことを告白します。

  だから、あなたたちはもう一年待って。

  ラリオとラーリンは、デイヴとキースが空を飛ぶのが怖かったという話をしたみたいで、そしたら、堕ちて死ぬ可能性に気がついて、即座に卵を作ったらしいわ」


 「それって、アレクにだってあり得る事態ですよね。

  やっぱり待ってなんていられません」


 「ナーリア、待て待て。 なんで墜ちる前提なんだ。

  堕ちないから、僕が死ぬこと前提にしないで」


 「だってハーピーが空で離したら堕ちちゃうんだよ」


 「エレオンもアライムもハライトも、僕たちのことを空中で離したりしないから、絶対に。

  デイヴやキースだって、最初は怖がっていたけど、今では飛んでる最中でもハーピーとしゃべっているくらい、平気になっているから、僕もだけど」


 「そうなの、危険はないの?」

 セカンまでそう言ってきた。


 「少なくともあの3人と飛んでいる分には危険はないから。

  もし墜ちるとしたら、僕たちだけでなく、きっとあの3人も一緒に墜ちるぞ。

  そう思うくらいに僕はあの3人を信頼している」


 「それなら、大丈夫だと信じる」


 「ああ、信じてくれ。 僕もだけど、彼ら3人も」


 「でも、あの時、お母さんは私たちが知らないことを良いことに、勝手に自分で道を開いてアレクと卵を作ったということよね」

 少し険を含んだ感じでレンスが蒸し返した。


 「だって、あの時は言う訳にはいかなかったし、私がアレクくんの子供を産むことは決まっていたのだし。

  ああ、もう白状したのだから、許してよ」

 レンスの言葉にイクス様の方がタジタジになるのは珍しい光景だ。


 「レンス、もうそれくらいで良いだろう。

  お前とイクス様の間の言い争いに口を挟むのは、ちょっと違う気もするのだが、私がイクス様の立場だったら同じ様にすると思うし。

  それよりも今の話を聞いていると、もう脱皮して無理をすれば卵を作れる可能性のあるお前たち3人が、私は羨ましくて仕方ないんだ。

  そうは思わないか、ディフィー」


 「確かに、その通りだわ。

  私とサーブはまだ脱皮してないから、卵が作れなくて、今の会話には入っていけない」


 ナーリアとセカンとレンスは、ちょっとバツの悪い顔をした。

 それを見たサーブは話を替える。

 「それにしても、これでアレクが父親になる事と、私たちが可愛がっていいレンスの妹が産まれることが確定した訳だ」


 そうなんだよなぁ。 今まではイクス様との間に子供を作ると決まっていたとはいえ、頭の中での観念的なことでしかなかったのだけど、卵が出来たと聞いたら、急にどうしたら良いのか分からない気分になってきた。


 「あと二週間くらい、卵を大きくする時期ですか。

  その間は、エネルギー補給のためにアレクの精をもっと得られるようにした方が良いのでしょうか。 それならその間はイクス様の順番をもっと優先的にした方が」


 「ナーリア、大丈夫よ。

  私の経験上で言わせてもらえば、卵を大きくするのにはそんなにエネルギーを必要としないの、というか、今のように命の実と呼んでる米を食べていれば十分ね。

  産まれてから、乳をやっている時期だけは、乳にすごくエネルギーを取られるから、少し優遇してくれるとありがたいかな」


 「はい、わかりました」

 他のみんなも頷いている。


 「二週間が過ぎた後は、もちろん体内に卵を残しておくのですよね」


 「勿論よ。 外に出す必要は今は何も無いもの。

  大事に体内で子供が大きくなって出てくるのを待つわ」


 この辺のところは卵胎生のラミアのことで、人間の僕にはよく分からない。

 理解が追いつかないなぁと思っていたら、その様子にイクス様が気づいた様だ。


 「アレクくん、手を貸して」

 イクス様は僕の手を取ると、尻尾の太腿に見える二本になっている先の、また一本に戻っているすぐ先を撫でさせた。


 「まだ分からないだろうし、人間からすると不思議に思うかもしれないけど、今アレクくんが触っている辺りに卵があるわ。

  もう二週間もするとその辺りが少し膨らむから、ちょっとは分かるかしら。

  でも、人間の女はすごくお腹が膨らむらしいけど、ラミアはそれ程じゃないの。

  ただ、体内に置いといても卵はデリケートだから、それからの二ヶ月程は私はあまり動けないわ。 そっと移動する程度ね」

 うーん、何だか具体的になってくると不安になるというか、緊張してきた。


 僕が自分個人の事として、頭の中であたふたしていると、ディフィーが言った。

 「あ、でも、もしかして、ラリオ様とラーリン様以外のラーリア様たちも、もう卵を作ろうとされているのですか?」


 「あら、気がついた?

  そうなのよ、私だけじゃなくて、ラリオとラーリンも卵が出来たと分かったら、ま、予定していたことではあるのだけど、みんな一斉に卵作ろうとしちゃって、人間ちゃんたちは良いように搾り取られているわ」

 絞り取られるって、ま、なんていうか、みんな拒否権ないだろうなぁ。


 「今一番大変なのは、きっとバンジね。 2人とも作る気満々だから」


 ナーリアたちは「そーよね」とか「確かに」とか言って笑っているけど、僕はとても笑える心境ではない。


 「そうすると、ラーリア様たちはみんなこれから激しくは動けなくなる訳ですね」


 「そういうことになるわ」


 「あの、もしかしてなんですけど、私たちに近接戦闘の訓練を急いだのって、そこに関係ありますか?」

 ディフィーが少し考えながら言った。


 「勿論よ。 ラーリアたちはこれから春までは戦力にはならないから、あなたたちにも弓以外でも頑張ってもらわないと、もしもの時に困るわ。

  ボブにはあなたたちの武器をまず先に作るように言ってあるはずだから、そんなにしないで手に入るはずよ」


 ここで根本的な問題にセカンが気がついた。

 「イクス様、私たち、今回の脱皮で体型が変わって、今現在、近接戦闘どころか、弓も胸当てが無くて使えません」


 そういった訳で、僕とセカンは防具というか、型作りと、胸当ての作り直しを最優先に行うことになった。

 作り直しと言っても、胸当ては樹脂で固めて形を固めてしまってあるので、ほとんど完全に新調である。

 そして、今回新調するにあたり、僕はセカンに言って、要所要所に大鳥の革を数枚重ねて貼って貰った。

 大鳥の革は、乾くと硬くなり、僕が想像した通り、数枚重ねると矢を通さないどころか、剣でも切れなかった。 その上、軽いから言うことなしだ。


 3人分の型を作り終えたと思ったら、少し遅れたがディフィーも脱皮した。

 驚いたことに、ディフィーも体が大きくなった。

 先に脱皮した3人よりは小さいが、もう体の小さいラミアというサイズでは無くなった。


 これにはイクス様も驚いた様で、

 「ディフィー、あなたはもうあなたの母親よりも体が大きくなったわ。

  あなたの望み通り、もう体の大きさ的には十分卵を作れると思うわ」

とディフィーに言った。


 ディフィーは涙を流して喜んだ。

 ディフィーの外見の変化はその大きさだけでなく、一番大きかった。

 赤い瞳は、今と比べたら以前はくすんでいたと評した方が良いだろう。今ではキラキラ輝く赤い瞳となった。

 肌の色は赤っぽい白では無く、桜色に染まった柔らかそうな肌になった。

 そして最近は自慢にしていた髪の色も、以前よりもっと明るい艶やかなピンクになっていった。

 そして今までの3人ではそれ程の違いを感じなかったのだが、尻尾の鱗の色が瞳の色と呼応するようにとても鮮やかな赤とオレンジのグラデーションになった。


 人間である僕の友たちは3人の変化にも驚いていたが、ディフィーの変化には開いた口が塞げないという雰囲気だった。


 「ディフィー、変わりすぎだろ。

  言われなきゃ、ディフィーだって分からないぞ」

 デイヴがそう言ってディフィーをからかった。


 「何言ってるのよ。 ピンクの髪は珍しいから間違えようがないでしょ」

 ディフィーは冷めた調子でデイヴに応戦した。


 ディフィーにとっては卵が作れるだけの体の大きさになったこと以外は、どうやら大した問題ではなかったらしい。

 ま、そんな事とは関係なく、僕の問題はディフィーの分の型作りだ。

 また僕は大急ぎで頑張ってディフィーの型を作った。 前の型から含めてこれだけたくさん型を作ると、さすがに慣れてきて、最初の頃にかかった時間の半分も掛からずに型を作れるようになり、どちらかというとその後のセカンの作業の方が時間がかかるようになった。

 僕はそのセカンの作業を手伝いつつ、胸当てとは違う防具を大鳥の革で作っていった。

 肩当てに籠手、そしてサーブの時に必要を痛感した、腰から下を鱗がある位置まで覆う防具だ。

 基本的にはスカートの様な形なのだが、ラミアの尻尾は柔軟に動くから、その動きを妨げてはいけない。

 いくつかの部分部分に分けて、それを紐で結ぶ様な形を考えたが、動きによっては防具で隠れない所が出来てしまったり、試行錯誤を繰り返したが、なんとか形になった。

 ちなみにこれは胸当てほど、体の形に左右されないので、一人一人の型を作る必要はなく、ちょっとホッとした。


 こうして4人分の防具が揃う頃になって、やっとサーブが脱皮した。


 「良かった。 私も脱皮した。

  脱皮に焦っていたエーレアたちの気持ちが私も分かったぞ」

と、サーブはホッとしていたが、実は僕もホッとした。

 サーブの分の防具をもう作るかどうか迷っていたのだ。


 サーブはとにかく大きくなった。

 今までも体が大きかったのだが、ナーリアたちより一回り確実に大きくなった。

 だけど、他はサーブは変わらなかった。 肌も目も髪も前と同じだった。


 実はナーリアたちの脱皮で、ボブも影響を受けていた。

 最初ナーリアたちの武器を作ることを先にしようと考えていたみたいなのだが、体の大きさが決まらないと、武器のサイズも決まらないのだ。

 そこでボブは先にまず僕ら人間の分の剣、その次に人間の分の槍を作った。

 そして、ナーリアの剣と槍、セカンの大小の刀、レンスの双刀、ディフィーの剣と薙刀と作り。

 サーブの剣とハルバードが後になった。


 とりあえずここまで、ボブは不休で武器を作り続けていた。

 それから後は、ラーリア様たちの武器なので、一人一人の好みや注文をしっかりと聞いて、ゆっくり作るみたいだ。

 それと、僕らの武器も使ってみての手直しとなる。

 武器を作るために炭も沢山必要で、それも忙しく焼き。

 持ち手などの部分は木や竹を使うので、そっちも忙しかった。

 なんとか僕たちの弓以外の武器が揃った。


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