173. 一緒の食事
その後、先にデイヴとキースが奥に行き、ラーリア様に先触れしてもらい、少し時間をおいてから僕はまたエレオンに掴まれて、奥に行った。
奥に行くのに、父祖様の墓所がある尾根の上を通って行けば最短距離になるのだが、エレオンたちに言って、それはやめてもらった。
やはり父祖様の墓所の上を飛ぶのは不敬な気がするんだよね。
ハーピーにはその気持ちは分からないかと思ったが、そんなことはなく、エレオンたちは快くそれを認めてくれた。
「別にハーピーだからといって、どこでも飛んで良いという事ではないのは理解できるぞ。 ラミアにとって特別な場所で、上を飛ぶのが不敬になるなら、俺たちもその気持ちに沿って、その上を飛ぶことはやめるようにするさ。
他のハーピーにも、このことは伝えよう」
「ありがとう。 そうしてくれると嬉しいよ」
奥に着くとラーリア様とデイヴ、キースがもう待っていた。
僕はまずラーリア様に紹介する。
「ラーリア様、こちらの3人がいつも僕たちを運んでくれて、今度のラミアとハーピーの会談の案内役に選ばれたエレオンとアライムとハライトです。
こちらはラミアのリーダーのラーリア様」
「3人とも世話になっているな。またこれからも世話をかける。
私がラミアのリーダーのラーリアだ。 よろしく頼む」
「私はハーピーの長ハルオンの孫のエレオンといいます。
今度の会談の案内役を任されました」
「私はアライムです」
「同じくハライトです」
「正式には会談の時にハーピー全体にラミアとして謝罪させてもううが、今回の件も、今までの件も、ラミアの間違った思い込みで一方的にハーピーに迷惑をかけていたことが判明した。 今ここでも謝罪の言葉を受け取り、戻った時に伝えていただければ嬉しい」
ラーリア様は言葉とともに頭を下げた。
エレオンはとても驚いた顔をした。
「頭をお上げください。
我々は単なる案内役です。 そのような丁寧な対応をしていただくような立場ではありません。
それでも、ラミアのリーダー自らが最初に我々に対してさえ謝罪してくれたことは、ハーピーの里に戻ったら一番に伝えさせていただきます」
「ありがとう。 そうしていただけるとありがたい。
さて、会談の場所なのだが、候補地はここか、先ほどまでそなたたちが居たアレクの家の所のどちらかと思っている。
ラミアの集落の広場でも悪い訳ではないが、先のことがあったばかりの場所なので、一応そこは候補から外したが。
ハーピーとしてはどこが適当だと考えるのだろうか」
「はい、正直に言って、私としては迷います。
ここは来るのに、尾根を1つ回りこまねばならないのが、ちょっと面倒になります。 ラミアの集落の広場というのは、やはり最近のことがありますから、私もちょっと避けた方が良いかとも思います。 アレクたちの住む家の所というのは、ちょっと場所としての重みが足りない気もします」
僕はちょっとラーリア様に補足した。
「尾根を回り込まないとならないというのは、父祖様の墓所の上は飛行禁止にしてもらったからです」
「なるほど、そういうことか。 父祖様の墓所の上を飛行禁止にしてもらうのは、やはりラミアとしてはありがたいな。
エレオン殿、アレクたちが暮らす家の所が場所の重みが足りないとのことだが、確かにそれだけの言葉だとそう思われるだろう。 しかし、実はラミアにとってはあの場所はとても重みのある場所なのだ。 ラミアにとってはここよりも場所としてはずっと重みがあるのだよ」
「そうなのですか。 それではあの家の前に集まって会談をするということで、私たちは構いません」
「それではそれでお願いする。
日時は三日後の昼過ぎで良いのだな」
「はい、そのように伝えるよう言付かっています」
僕とハーピー3人組はすぐに家に戻ってきた。
「はあ、あのラミア、なんていうか迫力あるな。
それで最初から謝られて、俺、焦ったよ」
「あ、俺もそう思った。 なんていうか、言葉も重みがあって、あんな調子で俺たちにまで即座に謝ってくるなんて、調子狂ったよ。
緊張してたのが、余計に緊張した」
「それだけラミアが真摯に、今までのことを反省しているし、謝罪しているってことだと思うぞ」
僕がそう言うと、ナーリアが言った。
「私たちは良く分からないけど、当時の人は偶然の出来事に縋り付いてしまうほど、子供ができなくなったことが大問題だったのよね。
その気持ちは私たちも分からない訳じゃない。
でもだからといって、ハーピーの人たちに大きな迷惑をかけてしまったことが許される訳ではないと思うけど」
「だからラミアがハーピーに謝罪するのは当然のことで、ラーリア様もそう思うからこそ、案内役のあなたたちにも最初に謝ったのだと思う」
セカンも続けて言った。
「少なくとも俺たちは、ラミアの謝罪の気持ちが真摯なものであることは良く分かったよ」
「俺たちは実際にラミアと戦った世代ではないから、もちろん許せない事ではあるけど、ラミアはラミアで止むに止まれぬ気持ちで行っていた事でもあるのだと思うよ。 たとえそれが間違った認識に立脚した事ではあっても。
俺たちはそれを許して、先に進もうと、どちらかというと簡単にできるのだろうが、戦った世代の人が今回その方向に踏み出すというのは大変な事だと思うよ」
アライムとハライトも話に加わった。
ちょっと真面目すぎる雰囲気になって、誰も次の言葉が出なくなった。
エレオンがちょっと話題を変えてきた。
「そういえば、ここはラミアにとってとても重みのある場所だと言われたが、それはどういう事なんだ?」
「ああ、ここは元々は父祖様の家だからな」
サーブがそう答えた。
「ん、なんだそれは?」
僕は簡単に説明した。
「そこの峰の上は飛ばないでくれと言っただろ。
そこの峰にはラミアにとってはとても大切な人間が葬られているからなんだ。
その人が昔ここに住んでいたのさ。
だからここはラミアにとってはとても大事な重みのある場所なんだ」
「アレク、ここはそんな所なのか。 よくそんな場所を平然と使っていられるな」
「最初は驚いた。 でも慣れた」
とレンスが言ったのを聞いたハーピー3人はなんて言って良いのか分からないという顔をした。
「ま、それはともかく、お前たちもうそろそろ帰らなければならないのだろ。 そしたら明日の昼にもう一度ここに来ないか。
会談にきていただいた長たちに、何か軽い食べ物や飲み物をお出ししたいと思うのだが、その相談にのってくれないか。
それとこの前はハーピーの食事を楽しませてもらったからな、今度は逆にここの食事を楽しんでみるというのはどうだ」
「お、それは面白いな。
その中で長たちが好きそうな軽くつまめる物を見繕おうか」
「ああ、そうしてくれるとありがたいな」
翌日の昼前にハーピーは4人でやって来た。
「会談にはシロシュウメ 様も来ますから、やっぱり女性ハーピーの意見も必要かと思いまして」
「いや、ウスベニメは前は私が食事を作ったのに、私だけ食事に呼ばれないのは納得できない、と息巻いていたぞ」
アライムが暴露して、ウスベニメに睨まれている。
「ま、理由なんてなんでもいいさ。 よく来てくれた、歓迎するし、意見もありがたいよ、ウスベニメ。
こっちが仲間のラミアたちだ」
僕は紹介するとともに、ナーリアたちに言った。
「ほら、女性ハーピーもいるだろ」
ナーリアたちはラミアでない同性というのは初めてなので、最初戸惑ったみたいだが、すぐに同じ女性として打ち解けて、男のデリカシーのなさの話題で盛り上がり出した。
「アライム、お前の不用意な発言のおかげで、俺まで一緒くたに槍玉に挙げられるじゃないか」
僕がそういうと、エレオンとハライトも
「全く迷惑な奴だ」
と苦い顔をして僕の側についた。
僕はハーピーたちにセカンやナーリアに手伝ってもらいながら、肉を焼いたり、魚を焼いたり、そしてコメを炊いて、ハーピーに食べさせてみた。
ハーピーたちの料理は蒸すか茹でるかが主なので、焼いた肉や、魚を珍しがるかと思ったのだ。
今回土産に芋を持って来てくれたウスベニメは、その調理する所もずっと観察していた。
「ああ、焼いた料理は懐かしいわ」
あれ、僕はちょっと失敗したかなと思った。
「ハーピーにも焼いた料理ってあったの?
蒸したり、煮たりだけかと思って、珍しがるかと思ったのだけど」
「私の祖母は人型のハーピーだったので、火を使えたんです。
ハーピーも鳥型は姿が火を使うには羽が邪魔ですし、羽が火に弱すぎて駄目ですけど、人型は普通に火を使ったんですよ。
今では人型のハーピーがいないので、ハーピーは火を使わないのです。
ま、少しだけ無理すれば出来ないことはないのですけど、温泉のお湯や高温な蒸気の調理で用が足りてしまうので、無理する必要がないのです」
話を聞いていたディフィーが疑問を口にした。
「温泉て、何なの?
お湯や高温の蒸気と言ったけど、鳥型のハーピーは火を使わないのでしょ。 それでどうしてお湯や蒸気が使えるの。 火が無ければお湯も沸かないし、蒸気も出ないでしょ」
「ラミアは温泉は知らないのか?」
「知らないわ。 少なくとも私は見たことない」
「ああ、それじゃあ分からないな。
泉は水が湧き出している場所をいうのだけど、その湧き出しているのが水ではなくお湯になっているところを温泉というんだ。 場所によっては熱くなりすぎて、蒸気になって出ている所もあるんだ。
ハーピーはそういう場所を利用して調理している。 だから火を使わなくても熱を加えた調理が出来る」
「何となく言っていることはわかったけど、水でなくお湯が出てるって想像できないわ」
「そうだな、上から見たらそんなに遠くない場所にあるみたいだから、今度その場所に行ってみよう」
「そんな所が近くにあるの?」
「ああ、この間空を飛んだ時に初めて気がついたけど、割と近くにある」
「それならぜひ行ってみたいわ」
僕がディフィーとそんな話をしている間、セカンとナーリアはウスベニメと話が盛り上がっていた。
ウスベニメの「羽が邪魔」という言葉から、人型と比べて羽が邪魔だとか、尻尾が邪魔だとか、そんな話で盛り上がっている。
僕から見れば、どっちも人間にはできないことが出来るから、人型と比べては一長一短で色々だね、の一言で終わってしまうと思うのだが。
家の外では、レンスのことを最初の時に僕のあとをつけていた1人だと、3人組が気づいてから、サーブも含めて話が盛り上がっているみたいだ。
レンスはかなり手前から気づかれていたことを聞き、ちょっとプライドが傷ついたみたいで、どうして気づいたかをしつこく聞いている。
結局ハーピーの男は食べることを楽しみ、ウスベニメはおしゃべりを楽しんでいった。
男連中は何でも美味いという言葉で参考にならなかったし、目的は半分達成という感じだった。
ま、ナーリアたちもハーピーと仲良くなったから、十分意味のある時間だったのだけどね。
「ラミアの独り言」ep.15 同世代で同性の友人 が、この時期の話です。 暇があれば、そちらも読んでくださると嬉しいです。




