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気がついたらラミアに(なろう改訂版)  作者: 並矢 美樹
過去をただす

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171. 冬籠りの前

 ラミアの冬籠りは全員が一斉にという訳ではない。

 ある程度のグループごとに順番に冬籠りの為の、集落の一番深い位置にある、冬籠りの部屋で眠りについていく。

 最初に眠りにつくのは当然子供たちで、麦踏みの後、ほんの数日で眠りについた。

 その次は若い子たちで、子供たちが眠りについて、その眠りが深まり少しのことでは目が覚めなくなった頃のタイミングで、若い子たちも部屋に入り眠りにつく。

 具体的には二日ほど間を空けたようだ。


 ミーリア様は子供たちと若い子たちが眠りについたら、ちょっと寂しそうだ。

 「全く、なんで私が子供たちや若い子にまとわりつかれるの」

などと僕たちには困っているような顔をしていたが、内心は嬉しくて、時間の許す限り、話をしたり構っていたようで、それでミーリア様は余計にまとわりつかれていた。

 上位ラミアからは不思議な光景を見るような目をされていたが、その光景も冬籠りですぐに見られなくなった。


 本来なら次はナーリアの姉妹たちの番なのだが、今回はまだやることがあるので、順番を少し後に変更してもらった。

 何をしているのかというと、クロスボウの完成と、その試射だ。


 完成したクロスボウをまずはターリアたち、ワーリアたち、ヤーレアたち一人づつに的に向けて試射してもらう。

 クロスボウは普通の弓とは違い、個人に合わせて作っている訳ではなく、みんな同じ性能だ。

 僕はそこに少しこだわりを持って、弓の強さなどに違いが出ないで均一になるように作るときに気をつけて作らせた。

 まあ、持ち手の部分だとか、弓としての性能にあまり関わらない部分はそれぞれ自分の好みで好きにして良いことにしたから、形が全く同じという訳ではないけど。

 でもほぼ均一になっているから15人全員同じ場所から的に向かって射った。

 距離は最初はレンスの射つ位置から始まり、最終的には僕とサーブとディフィーが射つ位置になった。


 「何これ、凄い。 どうなってるの。

  どうなっているかは自分で作ったから分かっているのだけど、こんな威力なんて思ってなかった」

 ワーリアがびっくりして声を出す。


 「そりゃ、このくらいの威力は出るよ。

  元々は非力なディフィーが僕らと同じ威力になる様に作ろうかと考えたモノなのだから」


 「なんでこれをディフィーのために作らなかったの?」


 「これ持って林の中歩いたら、絶対に獲物に警戒されるだろ。

  これ持って気配を隠して移動なんて無理だから、狩には向かないからだよ」


 「いや、実際に出来た物を見ていたら、使い方によっては使えないこともない気がしてきた」

 セカンがそんなことを言い出した。


 「いや、狩の話は今はいいから、とにかく今はみんな練習して」


 次々と的に向けて射っては矢を回収し、練習を重ねると、15人はすぐにクロスボウの操作に慣れ、動作に淀みがなくなり、同じ調子で射てる様になった。


 「なんていうか、これ、普通の弓より簡単」

 ターリドがそういうとみんな同意していた。


 予想した通りの結果なのだが、クロスボウは威力はあるけど、普通の弓と比べると命中率は良くない。

 ま、これは僕たちに比べればの話であって、もしかすると普通なのかもしれない。

 そして、僕としては速射性にこだわって作ったつもりだったのだけど、矢を射るスピードはサーブにも劣っていて、ディフィーと同じ程度だ。

 いや、最近はディフィーはあの特殊な弓を使っても素早くなっている気がするから、エーレルと同じ程度と評価する方が良いのかもしれない。 ちなみにエーレルの弓もディフィーと一緒に改造して、ディフィーと同じ形の物となっている。


 僕は今回のクロスボウの練習を見ていて、1つ考えついたことがあった。

 作ったクロスボウはその先端に錘を付けた紐が垂れている。

 弦を引くのに使った機構を、矢を射つのに邪魔にならない位置に引き戻す為のモノだ。

 その紐がブラブラしているのを見ていたら、この紐を目安にして、弓を少し上むきに構える角度を統一できるのではないかと考えた。

 当たり前のことだが、矢は少し上むきに射った方が遠くまで届く。

 だけど普通の弓では射手が自分の勘で、その角度を考えて、敵を狙って射っているに過ぎない。

 ま、それは当たり前のことで、弓の性能も違うし、射手の弓を引ける長さも違うから、人それぞれで当然だ。 その上、人によっては矢も個人に合わせてある。 もうバラバラだ。

 しかし、クロスボウだったら、性能はほぼ一緒だから、上に向ける角度を同じにして射てば、ほぼ同じ場所に矢が落ちるのではないだろうかと考えた。

 とにかく実験してみないと上手くいくか分からない。


 実験にはワーリアたちとナーリア、セカンが付き合ってくれた。

 まず一番最初にワーリアたちのクロスボウの錘の付いた紐が出ている部分に上向きに構えた時の角度がわかる様に、とりあえず糊で板をくっ付けた。

 そのクロスボウを持って草原に行き、まずは一番遠くまで飛びそうな角度で試しに何本か矢をワーリアに射ってもらった。

 ナーリアが落ちた矢の位置を確認して、一番遠くまで飛んだ角度をセカンがワーリアのクロスボウに取り付けた板に印をつけた。

 その後でワーリアたち5人のクロスボウに、ワーリアにつけた印と同じ位置と、クロスボウを水平に構えた時との半分の位置との、2箇所に印を付けた。

 そして5人一緒に、印で上向きの角度を同じにして、矢を一斉に放ってみた。

 どちらの印に合わせた矢も5本とも、ほぼ同じ場所に突き刺さった。


 地面に矢が突き刺さった場所を確認してきたナーリアが興奮した面持ちで戻ってきた。

 「凄いね。5本とも本当にほとんど同じ場所に飛んでいるよ」


 「何をそんなに興奮しているの?

  矢が同じ場所に落ちたからって、それってそんなに興奮する様なことなの?」

 ワリファが不思議そうな顔をして、ナーリアに尋ねた。


 「興奮することだよ。 これって、もしかしたら戦い方が変わるかもしれない凄いことだよ」

 ナーリアは流石に指揮官の立場で、この事実を考えた様だ。


 「うん、作戦は全く違ったものになるのは確実」

 セカンも既にクロスボウを使った作戦を頭の中で構築している様だ。


 「ワリファ、戦いの実際の場に出ていない私たちにはあまり分からないけど、最初からアレクも戦いでの使い勝手を考えて、この武器を作っているんだよ。

  まだ私たちには良く分かってないけど、きっととても意味があるんだよ」

 ワーリルがそう言った。


 この実験の後、僕は全てのクロスボウに角度を同じにする為の板を取り付けた。

 ワーリアたちに付けた時は、ちょっとした仮留めだったが、今度は少しのことでは外れない様にガッチリと取り付けた。

 もちろん全ての板に、ワーリアとした実験で確かめた位置の印を付けてある。

 そして、その改造を終えたら、3つのグループとも連れて草原に行って試してみた。

 今回の試射には、話を聞いたラーリア様、ラリオ様、ラーリル様、そしてミーリア様とイクス様も一緒に付いてきた。


 ナーリアが号令をかけている。

 「みんな、準備できている? 大丈夫ね、行くわよ。

  遠の位置に構え、射て!」

 3グループが一斉に射った。


 「次、中の位置に構え、射て!」


 「最後よ。 近の位置に構え、射て!」

 15本づつの矢が、それぞれ同じ様な位置にまとまって刺さっている。


 ラリオ様が声をあげた。

 「凄いな、これは」


 「少し射つのに時間がかかるのが問題だけど、そこは運用の仕方次第ね」

 ラーリル様も続く。


 「とにかく、物凄い戦力であることは確かだ。

  これをどの様に運用するかは、もうきっとセカンやディフィーが一生懸命考えていることだろう」

 「ええ、確実にそうだと思います」

 ラーリア様、ミーリア様も驚いた表情で会話に加わった。


 「でも私たち、せっかく面白くなってきたところなのに、冬籠りしなくちゃならない」

 ワーリアがプンプン怒っている。


 「それは仕方ないだろ、順番だし」

 「そうよ、本当ならもっと先の順番だったのに、クロスボウのことがあったから、私たちの順番を後に回してもらったのだから、もうこれ以上は無理よ」

 ターリア、ヤーレアがワーリアを宥めた。


 「でも、クロスボウが完成して、まだ少し試射しただけじゃない。

  それであれだけ色々興味をそそる様な話をラーリア様たちがしているんだよ。

  もう少し関わっていたいよ」

 ワーリアがそう言ってまだ怒っていると


 「みんなそう思っているよ。

  その中で私たち各グループのリーダーがそんな調子だと、絶対にミーリア様に怒られるよ。

  最近、私たちに対しても軽口を叩いたりしてくるミーリア様だけど、怒ったら氷のミーリア様の降臨だよ」

 「あ、それは絶対に嫌かも」

 ヤーレアの言葉にワーリアが急に静かになった。


 「『私たち今はナーリアの一員ですから、冬籠りはするとしても、一番最後で良いと思うのですけど』ってミーリア様にちょっと言ったら、『あなたたち、何を言っているの』って返されたのだけど、その時、冷気出てきた。 怖かった」

 エーレアの震え声のこの一言で、ワーリアの怒りはどこかに消し飛んだ。


 「あー、でも、春に目覚めるまでに、また大きくナーリアたちに差をつけられちゃう気がする」


 「「「うん、残念だけど、激しく同意。」」」


 こうしてナーリアたちの姉妹グループも、未練タラタラながらも冬籠りに入った。


 こうして後残っているのは、以前からの上位グループだけになった。

 ここで、ミーリア様は慣例を破り強権を発動した。


 「この冬は、ラーリア様たちが冬籠りをしませんし、ナーリアたちもしません。

  ということで一応外で何かあっても、すぐに分かるので、例年の様に当番で起きているグループを作ることはしません。

  とりあえずまだ色々と残務処理が残っているので、ミーリアの上は残ってください。

  あと何人か指名しますので、それ以外は冬籠りに入ってください」


 ミーリア様はあまり理由を説明しなかったが、誰もミーリア様の言葉に逆らう訳がなく、みんな素直に従った。

 あと何人か指名すると言ったメンバーは、アレア様、アーロア様、そしてアリファ様だった。

 つまり、この3人を冬籠りさせてしまうと、アーリア様とアーリル様が冬を越せないのではないかという配慮だった。


 ボブとダイクとアリファ様は、まだ一日置き程度の頻度で二人を軽く訪ねている。

 その時にアレア様かアーロア様が一緒しているのだ。

 アーリア様とアーリル様は最初人間の街道近くの大きな洞窟の中で冬を過ごすことを考えた様だが、それはアレア様に危険だからと反対され、そこから少しだけ離れた小さな洞穴で暮らしている。

 穴が小さく浅いので、そこでは流石に眠りに入るという訳にはいかない。

 起きていれば、食料など必要な物は出てくるし、もう暖をとるために火は欠かせない感じになってきている。

 本当にアーリル様が火を使える様になっていてよかった。

 そうでないと冬越しは絶対に無理な状況だった。


 「ま、何はともあれ、ミーリアの言葉に誰も逆らわないから、面倒がなくて良かったな。

  ミーリアの悪名も役に立つということだ」


 ラーリア様の冗談に、ミーリア様は本気ですごく嫌そうな顔をした。


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