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気がついたらラミアに(なろう改訂版)  作者: 並矢 美樹
過去をただす

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169. 秋の最後の依頼

 クロスボウ作りは、それからターリアも加わって、僕たちの家にはナーリアたちの姉妹がみんな集まってきている。


 「私たちだけ、新しい弓がないのは不公平よ」

 ターリルのこの一言で、ターリアたちもクロスボウ作りに加わることになり、ま、何というか全員集合状態なのだ。


 「ああ、もう煩くってちっとも仕事が出来ないわ。

  仕方がないから、私も弓を作るわ」

 口ではそう言いながら、ミーリア様までが弓作りを始めると、それなら今まで我慢していたが、私たちもとミーリア様たちまでやって来て弓作りをしている。


 全く何で急にみんな弓作りを始めるんだ、という感じなのだが、理由はミーリア様が教えてくれた。

 「アレクは人間だからすぐに忘れているみたいだけど、もうすぐラミアは冬籠りなのよ。 それだからみんな、その前に武器を手に入れたいと、集まって来ちゃった訳。

  それでも今はミーリアがみんなで来ちゃっているから、他の上位グループは遠慮して来てないのよ。 私たちがいなければ、ミーレアたちも来ているか、アーレア、アーロアたちなら両方来ていたかもね」


 なるほど、そういう事かと思ったけど、忙しくなってしまうことには変わりがない。

 僕たちは朝、森に入ると素材が足りなくなるので、鹿を二頭づつ獲った。

 無理をしないで、エーレアたちに教えながらというスタンスで狩をしたのだが、エーレアたちもどんどん上達していって、僕たち程ではないが、5人に一頭の鹿を任せるのは不安ではなくなった。

 獲って来た鹿の処理はエーレアたちに任せて、僕たちはもうやって来ているみんなへの技術指導に回る。

 セカンとディフィーは主にミーリア様たちの弓作りを担当して、サーブとレンスは弓作りの合間を縫っての矢作りを担当し、僕とナーリアでクロスボウを担当した。

 そしてこれだけの人数が朝から夕方まで居て、その昼食をミーレナさんが一人担当している。 流石に食材をこの量は僕たちには用意できないので、みんなそれぞれに用意して来てもらっているのだが、食事も期待されちゃっているのが見え見えで、ミーレナさんが苦笑しながらも、フル回転している。

 こんな状態で、ミーレナさんがこっちに来ちゃってて、ラーリア様たちや友たちは何をしているのかとも思ったのだが、ミーレナさんによると炭焼きと鍛治をし始めたとのことだ。

 鍛治はともかく、炭焼きはケンとラリファ様に申し訳ない気持ちになる。


 そうこうしている間に、次の休日が明日に迫ったのだが、弓もクロスボウもこの三日である程度形になり、糊が完全に乾くのを待つまでになった。

 忙し過ぎたので仕上げは休み明けにしてもらう。

 そこまでいくと、調整はサーブとレンスに任せるしかないから、僕は暇になるはずだ。


 その休日は、セカンとディフィーの強い要望で、家からトンネルまでの埋まってしまっている道を復旧することになっている。

 冬になる前に、図書館に通う道をしっかりと整備しておきたいというのだ。

 ナーリアとレンスも賛成して、休日はその作業をすることが決定してしまった。

 僕は休日にならない気がするのだけど、冬籠りの前に終わらせたいと言うのだ。

 家での冬越えの準備では僕も含め人間はとても焦っていたのだが、ラミアは冬籠りの前にとなると焦るようだ。

 きっと、ラミアには家での冬越えの実感がないし、人間には集落でも冬籠りの実感がないからなのだろう。


 休日の朝、少しゆっくりしていたら、ミーリア様が上の順位のミーリア様たちと一緒にやって来た。

 ナーリアがちょっと驚いている。


 「ミーリア様たち、おはようございます。

  私、今日はきっと弓作りに来ていない誰かかと思っていたのですけど」


 「ナーリア、今日は強権発動で、私たちが来たのよ」


 「はい? 強権発動って、何か緊急事態なんですか?」

 ミーリア様の言葉に、ナーリアが急に緊張した声で応えた。


 「違うわよ。

  小耳に挟んじゃったのだけど、今日あなたたちはトンネルへの道を復旧させるのでしょ。 それの手伝いに来たのよ」


 ナーリアはミーリア様の背後を気にして、小声で言った。

 「あの、ミーリア様、トンネルのことは他のミーリア様たちに知られて構わないのですか?」


 「ええ、これを機会にまず順位が上のミーリアから奥のことを教え始めようと思っているのよ。

  禁足地の奥のことは、上位の者や、お前たちの姉妹はおぼろげに知っているけど、きちんと知らせていないから。 本格的には来春からだけど、その前にまずミーリアの上からと考えたのよ」


 「わかりました。 そういうことですか」


 トンネルへの道の復旧は、思っていたよりも簡単に終わってしまった。

 それはそうだ、僕たちだけでも、今回かもう一回くらいで終わるだろうと踏んでいたのに、強力なミーリア様たちの助力があれば、あっという間に終わってしまう。

 それに予想していた通り、道はほとんど傷んでいる所がなく、上に積もった土と枯葉と草を除けるだけで、ほとんど復旧作業は終わってしまったのだ。


 「こんな所にトンネルがあったんだねぇ。

  このトンネルを抜けると図書館という訳かい」

 ミーリオ様がちょっと感慨深そうな感じで言った。


 「何でこんな所にトンネルがあるんでしょう?」

 ミーリル様が尋ねてきた。


 「何でも、元々は父祖様が図書館に通うのに使われていたんじゃないか、とイクス様が言われていました」

と、ディフィーが答えた。


 「えっ、父祖様が通うのに使われたということは、お前たちが今使っている家って」

 ミーリル様が言葉の意味を考えて気がついたようだ。


 「何、ミーリル、今まで気づいてなかったの?

  ナーリアたちが使っている家は、元々は父祖様が暮らしていた家よ。

  代々のラーリア様たちが、手入れして使えるようにしていたので、今ナーリアたちが使えているのよ」

 ミーリア様が揶揄うようにさらっと言った。


 「ナーリア、お前たち、よくそんな所で暮らせるな」

 ミーリファ様が呆れるように言った。


 「もう慣れました。

  それを初めて聞いた時にはどうしようかと思ったのですが、聞く前にもう暮らしていましたから、今更だなって。

  でも、イクス様も昔、この家を使われる時に、最初は尻尾が震えてなかなか中に入れなかったって、言ってましたから、ああ、私も普通だと納得しました」

 ナーリアが、答えている。


 「それにしても、こんなトンネルを掘ってまで、父祖様は図書館に通ったということよね。

  それ程、図書館というモノは重要ということね。

  そこに自由に通えるナーリアたちが羨ましいわ。

  私も早く許可をもらって図書館に通いたいわ」

 ミーリド様がすごく図書館に行ってみたそうに話した。


 「来春になったら、ぜひ図書館に通ってください。

  本当に凄いです」

 「その時には図書館の周りは花がいっぱい咲いている予定」

 セカンとレンスがそれに答えている。

 そんなおしゃべりをしながら家に戻ってきた。


 「何だか、あの話を聞いた後だと、この家に入るのに緊張するな」

 ミーリオ様が家の前でそんなことを言った。


 家の中に入るとイクス様が中で待っていた。

 「あら、誰も家に居ないと思ったら、ミーリアたちと何をしてたの?」


 「トンネルまでの道の復旧をミーリア様たちが手伝ってくれていたのです」


 「あら、それで終わった?」


 「はい、想像していた通り、道自体は傷んでいる所がほとんどなかったので、土を退けるだけで用が済んだので、ミーリア様たちが手伝ってくれたのであっさり終わりました」


 「そう、良かったわね」


 「イクス様はこちらには遊びに来られたのですか?」

 ミーリア様がイクス様とナーリアとの話に加わった。


 「それだけでも良いのだけど、今日はちょっと真面目な話もあるのよね」


 僕はセカンと一緒に竃に火を入れ、お湯を沸かす。

 今日は大人だけだから、マール草のお茶を入れた。

 若い子たちと一緒の時には少しスッキリした感じになるハイク草のお茶を淹れるのだが、そうでない時はマール草のお茶を淹れることが多い。

 ナーリアたちは最初の頃こそ、マール草のお茶に微妙な顔をしていたのだが、最近は慣れて、僕が淹れなくても自分たちでも淹れて飲んでいる。

 今問題になっているのは、春までマール草の干した在庫が持つかどうかだ。


 「みんなで考えて欲しいのだけど、何か子供達に対して楽しい思い出になるような催しはないかしら?」


 僕たちもだが、ミーリア様たちも、一体どういう話なのか、という顔をしている。


 イクス様は話を続けられた。

 「もう本当にすぐ冬ごもりでしょ。

  その前に、若い子たちにもだけど、特に子供たちに何か楽しい思いをさせたいのよ。

  そうでないと、怖い思いをずっと抱えて冬の間寝ていることになるわ。

  それじゃあ、可哀想でしょ」


 僕はなるほどなぁと、とても感心した。

 やっぱりイクス様はお母さんなんだなぁ、と思った。



 「そうですね、イクス様。

  子供たちが冬籠りで寝る時に思い出すことが、ゴブとの戦いや、ミーレア様とハーピーとの戦い、そしてアーリア・アーリルの罰のシーンでは、本当に可哀想です」

 ミーリア様は今まで考えたこともなかったことを反省しているような、悔やんでいるような調子でそう言った。


 「確かにイクス様の言われる通りだ。

  我々は子供たちのことにまで、目が向いていなかった。

  今、ラーリア様たちが禁足地の復活と子作りに集中されて、集落のことをミーリアに任せられていたのに、我らの配慮が足りていなかった」

 ミーリオ様も反省の言葉を述べられた。


 「ミーリアもミーリオもそんなに深刻な顔をしないで。

  あなたたちが思い浮かばなかったのは仕方ないわ。 私はこれでも母親ですからね。 母親が子供たちの気持ちが気にかかるのは当然のことなのよ。 あなたたちが気が回らなかったと恥じることでもないし、私が誇るようなことでもないのよ」

 イクス様の言葉にレンスがちょっと頬を赤らめたが、少し嬉しそうな顔をした。


 「アレクくん、何か良い案はない?」


 僕はちょっと考えてからイクス様に答えた。

 「ヤーレンに聞いてみないと確かなことは言えないのですけど、たぶん1回目の麦踏みは終わっていると思うけど、2回目がそろそろじゃないかと思うんです。

  子供たちに麦踏みの体験をさせて、その後でちょっとした遊びをするというのではどうでしょうか」


 僕は頭の中で、遊びの計画が出来上がっていくのを感じた。


 「何だかよく分からないのだけど、任せても良いかな」


 「はい、大丈夫です。 明日にでもヤーレンと打ち合わせて具体化します」


 「うん、よろしく頼むわ」


 「それで、ミーリア様たちにもお願いがあるのですけど」


「ラミアの独り言」ep.14 不満 が、この時期の話です。 暇があれば、そちらも読んでくださると嬉しいです。

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