↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
気がついたらラミアに(なろう改訂版)  作者: 並矢 美樹
犠牲の上に

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

161/305

161. 空を行く

 僕が先頭で山の峰に向かって道らしいところを進んでいると、デイヴが声を掛けてきた。

 「アレク、その旗、俺に貸してくれ。 振りながら歩くというのも楽しそうだ」


 ま、別に僕は旗を振りたい訳じゃないから、デイヴに旗を渡す。


 「良し、先に行け、俺は旗を振りながら後ろから行く」

 デイヴに促されて、僕とキースは前を進む。


 キースが小声で言った。

 「デイヴは旗を振りたいんじゃなくて、杖にしたいんだよ。

  登りになったら、途端にバテてきたのさ」


 「デイヴは狩人にしては太り過ぎだよな、あれじゃあ」


 「あの喰いっぷりだから」

 僕とキースは小さく笑った。


 少し登って、一つ丘を越えたという感じになると、僕らがやって来た森が隠れて見えなくなった。

 するとそれを待っていたかのように、ハーピーが三羽僕らの視界に現れ、目の前近くに降り立った。


 「お前たち、ここはハーピーの領土だと分かっていて入って来たのだな。

  その旗は降伏の印と受け取るが、それで間違いはないな」


 僕はハーピーを初めて間近に見て、ちょっと狼狽えていた。

 僕が口を開く前に、デイヴがしゃべった。


 「あ、この旗を降伏の白旗だと思ったのか、それは悪かった。

  そういう意味ではなかったんだ」


 「なら、どういうつもりなのだ」

 ハーピーはちょっと身構えた。


 「身構えないでくれ。

  降伏の印ではないが、私たちは君たちに危害を加える気もないし、敵対する気もない。

  持っている武器も、君たちにとって何の脅威にもならないだろう、この小さなナイフしかない」

 そう言ってデイヴはその場でくるりと体を一周回転させて、ハーピーに他に何の武器も携えていないことを見せた。


 「それではその旗はどういった意味なのだ」

 やっと僕も口を出す余裕が出来た。


 「ハーピーは目が良いと聞くから、こんな旗を振らなくても僕たちが接近していることに、きっと気付くだろうとは思ったけど、こうして僕たちの接近を自分からわざわざ知らせれば、少なくとも問答無用に攻撃をされることはないと思ったんだ」


 「なるほど、その理屈は理解できる。

  それでは問いを変えよう。

  そうして何故そのように自らの接近を知らせてまで、わがハーピーの領土にやって来たのだ?」


 デイヴが何を言っているのだ、という調子で言った。

 「そんなの、話をしたいからに決まっているだろ。

  それ以外の目的があったら、教えて欲しいくらいだ」


 ハーピーの3羽は、いや3人と言った方がいいのか、なるほどそれはそうだと納得した様な顔をした。

 「確かに、お前の言う通りだな。

  森の中では、お前たちの後ろに最初2匹、後からもう1匹増えて3匹のラミアが続いていた。

  森からお前たちが出た時に3匹は去っていったが、それで少し必要以上に警戒してしまったところがあるようだ。

  まずお前たちの立場と、お前たちの要望を聞こう」


 僕はラミアが僕たちの後ろを追っていたと聞き、すぐに心配して追っていてくれたのだなと思った。

 そしてきっとイクス様に止められたのだろうと見当がついた。

 こんな時だけど嬉しかった。


 「今回、僕たちはまずラミアに代わり、今回の事態を引き起こしたことに、ラミア全体の意思として、謝罪しに来た。

  そしてそれだけでなく、ラミアとハーピー全体に関わる重大な提案を持って来た。 

  ハーピーの長と呼べは良いのだろうか、ハーピーをまとめている者に会いたい」


 3羽のハーピーは僕の口上を聞いてちょっと驚いたようだ。

 3羽で小声で、どう対応するかを相談をしている。


 「我々では、今のお前たちの話を判断できない。

  とりあえず上に取り次いで、その指示を待つ。

  しばらくここで待ってくれ」

 1羽のハーピーが飛び立って行った。


 残りの2羽にデイヴが話しかける。

 「今は待っているだけの時間だから、くだらないことを聞いてもいいか?」


 「何だ、言ってみろ。 答えるとは限らないがな」

 ハーピーも雑談に応じる様だ。


 「お前たちを数える時には、何羽と言えばいいのか、それとも何人と言えば良いのか、どっちなんだ?」


 「なるほど、それは難しい問題だな。

  人間は何人で決まりだが、ハーピーは迷うのは分からなくはない。

  自分たちでは、姿形は鳥寄りの生物だが、話したり顔の作りから人寄りと判断して何人と数えるぞ。

  それにハーピーは人とも交わるしな」


 僕もちょっと興味を引かれた。

 「ハーピーも人と交わるのか。

  ラミアみたいに人と交わらないと子が持てないのか?」


 「いや、ハーピーはそんなことはない。

  人と交わることも出来ると言うだけで、ハーピー同士で普通に子を成すことができる。

  それにハーピーはラミアと違って、人と子を成すと、その子がどちら寄りになるかは分からない。

  人寄りになることもあるし、ハーピー寄りになることもある。

  その中間になることもあって、今の住処ではなかなかに難しい」


 僕はちょっと気になることを聞いた気がしたが、デイヴが話を続けてしまった。

 「そうか、ハーピーは何人で数えるんだな。

  ラミアも迷うんだよ。 さっきお前たちは何匹っていう風に数えていたみたいだけど、ラミアも半分人間だろ、何人の方が合っている様な気がするんだよなぁ」


 「ああ、それも分かる気がするよ。

  今、ハーピーはラミアと仲が悪いから、蔑んだ意味合いを含んで何匹って数えるが、見た目だけならハーピーよりも人間寄りだからな、ラミアは」


 うん、何だかデイヴは急激にハーピーと打ち解けている。

 キースは自分ではしゃべらずに、デイヴのことをやれやれという感じで見ている。


 一度飛び去ったハーピーが戻って来た。

 「長たちはお前たちに会うと言っている。

  ついて来い、といっても羽のないお前たちでは地を登っていくしかないのか。

  時間が掛かるな、仕方ない、我らがお前たちを運んでやろう」


 僕たちは腕を横に広げさせられた。


 「動くなよ。 我らハーピーの足の爪はとても鋭い、動くと怪我をするからな」


 広げた腕を足で掴まれて、僕たちは空高くへと連れて行かれた。

 デイヴの悲鳴が聞こえる、僕も我慢しているが同じ気持ちだ。


 「落とすなよ。 絶対に落とすなよー」

 「静かにしていろ。 暴れさえしなければ危険はない」

 「そんなこと言ったって、怖いものは怖いんだ」


 デイヴの悲鳴は聞こえるが、キースの声は聞こえない。

 頭を巡らしてキースを見ると、駄目だ完全に固まっている。


 ほんの僅かな時間で、僕たちは元いた尾根から、違う尾根へと移り高度も高い位置になった。

 僅かに広場の様に広くなった所に、僕たちは着陸した。


 「よし、長たちの所に行くぞ。 すぐ近くだ、お前たちが歩いてもすぐに行ける」


 と言われても、正直まだ足が震えて立つことも出来ない。

 「すまない。 申し訳ないが、まだ足が震えて立つことも出来ない。

  少し休憩させてもらえないだろうか」


 「何だ、たったあれだけの事で腰が抜けたのか」


 「そう言われると面目無いのだが、その通りの状態だ」


 先ほどの一人がハーピーの長たちの所に報告に行った様だ。

 すぐに戻って来た。


 「少し休んで落ち着いてからで良いとのお達しだ。 良かったな」


 僕たちは、やれやれと楽な姿勢に腰を下ろして、少し休むことにした。

 すると女性のハーピーが水の入った桶と、コップを持って来てくれた。


 「このハーピーの里に人間が来るなんて珍しいですね。

  空を飛んだのは初めてですか?

  人間は空を飛ぶ様には出来ていませんから、初めてでは仕方ないでしょう。

  水でも飲んで、少し休んでください」


 「ありがとうございます。 助かります」


 僕にはハーピーのする事なす事が全て珍しい。

 女性のハーピーと分かったのは、顔つきと胸があるからだ、声も高い。

 そしてハーピーは羽の途中に3本指の手がある、というか、羽の途中に指が生えている。

 その手というか指を使って、桶やコップを持って来てくれた。

 女性のハーピーが桶を置いたり、コップを渡してくれたりするごとに、綺麗な羽があちこちにと動き、まるで舞を踊っているかの様な美しい光景になる。

 つい見惚れてしまった。


 「ハーピーをあまり見たことがないのですか?」


 「はい、実は間近に接するのは初めてです」


 「そうですか。 ハーピーは手が羽の途中にあるというか、人間で言うところの腕の部分が羽になっているから、どうしても何かすると羽が動いてしまうのですよ」


 「とても美しく、優雅に見えます」


 「人間からはそう見えるのですか。

  私たちハーピーにしてみると、空を飛ぶ時以外は邪魔に思えてしまうのですけど」


 「そうなんですか、ちょっと意外だなぁ」


 「意外とは?」


 「いえ、ハーピーは空を飛ぶ種族ですから、羽をとても自慢にしているのだと思っていたので」


 「ま、確かにその通りなのですけど。

  悔しいけれど、日常生活の中で邪魔に思うことも、かなり多いのです」


 「少しそれ分かる気がします。

  僕は今、ラミアと共に暮らしているのですけど、ラミアも尻尾が邪魔って言う時がありますから」


 女性のハーピーは急に僕たちのことを警戒したようだ。

 「ラミアと暮らしているって、それじゃあ、ここに何しに来たのですか?」


 「あ、ごめんなさい。 警戒しないでください。

  僕たちラミアと暮らしていますけど、ハーピーに対して何の害意もありませんから」


 「そうなんですか、騙して卵を盗っていこうとしているのではないですか?」


 「そんなことしません。

  僕たちのここに来たまず最初の理由は、今回の件のラミアの正式な謝罪を伝えることなんです。

  それにそういう事態を引き起こす、根本的な認識の間違いがはっきりしたので、今後二度とこのようなことは起きないことを説明に来たんです」


 「信じて良いのですか?」


 「はい、まだ信じられないでしょうけど、僕の話していることは嘘ではありませんから、信じてください」


 ハーピーの女性は疑わしいという顔をしていたが、とりあえず信じてくれたようだ。

 「今はまだとりあえずですけど、あなたたち3人の人間の言うことを信じます」


 「ありがとう。 その信頼は裏切りません」

 僕が頭を下げると、デイヴとキースも頭を下げた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。