16. 外から帰ったら
集落に戻って、納品を済ましたら、部屋に戻るのかと思っていたら水場へと直行した。
水場というのは連れてこられた日に、最初にしなければならないこととして、体を洗う様に言われたあの水場である。
ナーリアたちは装備を外し、服を脱ぎ、近くの棚にそれらをしまう。
僕にも同様にするように言う。
部屋に居る時は服を着ていなかったのだから、すでにもう見慣れた気になっても良いだろうと思うのだが、外でしっかり明るいうちに服を脱がれると、なんとなく顔を合わせにくい。
彼女たちラミアは服を脱いでいることに、全く抵抗感も羞恥心もないので、ドギマギする自分が恥ずかしい。
躊躇うと余計に恥ずかしいから、さっさと脱いで水に浸かる。
今、季節はもうすぐ一番暑い時を迎えようとしているところだから、こうやって身体を水に浸け清潔にするのは気持ちが良い。
ナーリアたちは互いに見せ合ったりして、入念に身体を洗っている。
彼女らが丁寧に時間をかけて洗っているから、僕としてはとても丁寧に自分の身体を上から下まで洗ったつもりなのだが、全然及ばない。
ラミアって清潔好きなのかな。
確かにラミアは尻尾で移動するから、靴を履く訳ではないから、尻尾が汚れ易いのかもしれない。 でも見た感じ、ツルツルとした表面が汚れていた様には見えなかったのだけど。
待ちきれずに先に水から出ると、気付いたサーブが声をかけてくれた。
「右手の棚に身体を拭う布があるから、それで身体を拭いて、待っていてくれ」
なんか警戒心が緩いなあ。 他に近くにラミアいないよ。
とはいえ、セカンが別の木に飛びついた時の様子から考えると、僕が逃げたり彼女らの武器でも取ろうとしたら、即座に水から飛び出して来そうだけど。
僕は服を着るために、着ていた物を置いた棚に近づくため、声を掛けた。
「服着るよ」
「え〜、洗ったのに服着るの?」
ナーリアが間の抜けた感じの声で聞いてくる。
「ばか、もしもの時のために隠す必要があるでしょ。 忘れたの?」
ディフィーが小声でナーリアに注意している。
「それにしてもラミアは清潔好きなんだね。
とても入念に身体を清めるんだね」
「ラミアの尻尾は鱗で覆われているでしょ。 気をつけないと、その鱗の間に吸血ダニが入り込むのよ」
セカンが必要を解説してくれる。
「ん、あれは最悪」レンスがつけ加える。
「まともに食い付かれると、食い付かれた所の鱗を一枚剥がして処置しなければならない。
あれは痛いし、剥がした所が脱皮するまでの間ずっと不快感が残る。
そういう目に合わないために、入念に洗って確かめる必要があるんだ」
サーブ、詳しい解説だな。
「この点に関しては、靴を履いて歩く人間を羨ましく思うわ。 足音が騒がしいけど」
そうだね、ディフィー。 ラミアは音立てないもんな。
「だからラミアには不潔な娘は一人もいないよ。 凄いでしょ」
ナーリア、何を威張っているんだ。
身体を拭いた布も、拭き終えたらすぐに洗い、近くの物干しに干しておく。
巣穴に濡れた物を持ち込まないのは、中の乾燥を極力保つ為だ。
ナーリアたちは着ていた物や装備を手に持って行く。
水で身体を清めたら、何も身につけないのが普通らしい。
その後は人目を避ける意味もあり、部屋に直行した。
部屋に入ると、サーブに即座に服を脱がされた。 部屋の中で服を着ているのは不潔なのだそうだ。
まあ、仕事をしている時に着ている訳だから、不潔といえばそうかもしれない。 部屋着と外着を分ければ良いんじゃないかなぁ。
ディフィーとレンスが晩の食事を取りに行ってくれている間に、僕はセカンに声を掛ける。
「セカン、ちょっといいかな。 こっちに来て見せて。」
僕はセカンが、調子にのって木を飛び移っている時に、失敗して少し擦り傷を作ったことに気がついていた。
僕は昼食時に摘んだ傷に効く薬草を揉んで、その汁を傷に塗ってやった。
「ん、何なの?」
「この草の汁は傷に効くんだ。 治りが早くなる。 知らなかった?」
「うん、知らない」
ナーリアとサーブも興味津々だ。
「そういうこと詳しいの?」ナーリアが聞いてきた。
「うん、まあ詳しい方かな。 本職じゃないけど、学校にあった本で覚えた。」
その後、食事を取ってきた二人も加わって、食事の間もずっと質問攻めだった。 他にどんな草を知っているか、学校ってなに、本て何?
僕としては、尻尾さえ見なければ普通の女の子が擦り傷作ったら、そりゃ治療してあげるよね。
そんな軽い気持ちだったのだけど、それがきっかけで随分色々話す羽目になった。
別に隠す必要があることじゃないから良いんだけどね。
食いつきがしつこかったのはセカンとディフィー。
サーブは割とすぐに心ここにあらずの感じになった。 ま、気持ち分かるけどね。
ちなみに晩の食事は、昼間外で働いたからだろうか、みんなきちんと食べました。




