↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
気がついたらラミアに(なろう改訂版)  作者: 並矢 美樹
犠牲の上に

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

158/307

158. 夜を過ごす場所

 「ダイク、お前、大丈夫か。 真っ青だぞ」


 「ああ、大丈夫だ。

  ちょっとびっくりしただけだ」

 そうダイクは言ったが、俺もきっと顔色が悪いだろう。

 みんなも黙っているが、それは言うべき言葉が見つからないからだろう。


 「俺は正直言って、そんなにアーリル様と何度も親しくした訳じゃない。

  俺たちがアーリア、アーレア、アーロアと親しく接し出したのは、どちらかというと、ゴブとの戦いの後だろ。

  その頃にはもうアーリル様はもう半分謹慎しているような感じで、自分から俺に接してくるような事はなかったんだ。

  その状態をどうにかしたいと思ってか、ミーリル様やミーレル様は自分の番の時にアーリル様も呼んで話たり、遊んだりもしたんだ。

  少し接すれば、誰でもすぐに分かるよ、アーリル様がとても優しいラミアだって」

 みんな黙ってダイクの言葉を聞いている。


 「俺たちその時の戦いに出た訳じゃないけど、アーリル様はその時の事をとても悔やんでいて、『私が変に情に流されてアーリアを追わなければ、アーリアたち3人以外は突撃しないで戦線の維持が出来たのに、私が追った為に一緒にいたアリファもアーリベも追うことになり、それを見てアーリク以下も仕方なしにアーリアを追わねばならなくなった。 戦線の崩壊を招きかけたのは私のせいだった』と言っていた」


 「でもそれ仕方ねぇじゃん。 例えばもしボブが突撃したら、俺だって追うぜ。 だって追わなきゃ、突撃した奴が死んじまうじゃねぇか」


 「ケン、それは駄目だろう。 そんなことしたら戦線が崩壊しちゃう」

 ヤーレンがそう言うと、ケンは

 「でも、放っておいたら、確実に死ぬぞ。 それを見てられるか!」


 「前提が間違っているよ。 ボブが突撃しようとしたら、突撃する前にアレクに止められるよ」


 「俺だって止めるぞ。 お前だって止めるだろ」

 エレクの言葉に、珍しく真剣な調子でデイヴがボソッと言った。


 「俺が間違った無謀なことをしようとしたら、デイヴでも、エレクでも、アレクでも、そしてケンだって止めてくれるだろ。

  でもどうしてアーリア様は止められなかったんだろうなぁ」

 ボブが悲しそうな調子で言った。


 「俺は、ラーリア様もミーリア様も忙しいから、ミーレア様と一緒のことも結構多かったんだ。

  そうするとミーレア様はアーリア様、アレア様、アーロア様を順番に呼んで俺に会わしていたんだ。

  だから、みんなより少し前から多く会っていた。

  アーリア様も悪い人じゃないんだ。 ちょっと思い込みが激しいところがあるけど、ラミア全体の役に立ちたいっていう気持ちは凄く強いラミアなんだ。

  なんでこんなことになっちまったんだろうなぁ」


 「でも、ボブ、今回のアーリル様の気持ちを利用したやり口は、俺には許せない」


 「ダイク、分かっている。 それは誰も同じ気持ちだ。

  アーリア様自身もそう感じているだろうよ」


 「それでもだ、そのせいでミーレア様は亡くなって、アーリル様まで自分の尻尾を自ら切ることになった」

 ダイクはとうとう涙を抑えられなくなったみたいだ。


 「俺にはアーリル様があんな可哀想なことをしなければならない訳がわからないよ。

  アーリル様は優しいだけで、何も悪くないじゃないか」


 「それを言うなら、譴責処分を受けたアーリベ様、アーリナ様、アーリン様だって同じことさ。 3人とも最後だろうからアーリル様に悔いのないように行動して欲しいと考えただけ。

  それにもっと言えば、ラーリア様たちやミーリア様も自分たちを処分したけど、みんなラミアの集落のことを考えてした行動だった」

 ハキが冷静に指摘した。


 「悪意のない行動なら罪がない訳ではない。

  アーリア様の行動だって、悪意があった訳ではないと思う、今回も、ゴブの戦いの時も」

 普段、こんな話の時に全く口を出さないキースがそう言って、みんなちょっとした驚きとともに、その言葉を噛み締めた。


 「そうだな、その通りだ」


—————————————————————————————


 さて、俺は夜に近い時間となり、ちょっと困った事態になっている。

 俺たち人間は夜は大体ラーリア様たちの部屋か、ミーリア様たちの部屋かミーレア様たちの部屋かで過ごすのだが、今晩俺はミーレア様は亡くなり、ラーリア様とミーリア様は謹慎中で行く当てがないのだ。

 まあ、ラーリア様たちは禁足地の方の部屋で謹慎するとのことだから、上位区画のラーリア様の部屋は空いている。

 俺がそこで一晩寝ても怒られないと思うから、そうしようかと考えた。

 思えばこのラミアの里に来て以来、初めての一人寝かもしれない。

 ちょっと腹が減っている。

 カウンターの部屋に行き、イクス様にでも言えば食べ物はもらえるだろうけど、この洞窟内ではどうせ火は使えないから食べられるものは限られている。

 面倒なのでそのまま寝ようかと考えていた。


 「あ、ボブ、居た。 こっちよ。 こっちに来て」

 アーロア様に声を掛けられた。


 「この部屋に入って」

 俺は元々ミーレナさんの部屋だった部屋に招き入れられた。


 「アーレア、じゃなかったアレア様、ボブ連れてきたよ」


 「アーロア、お願いだから様付けで呼ぶのやめて。 凄くそれ嫌だから」


 「じゃアレア、ボブ見つけてきたよ。

  アリファとダイクも呼んでくるよ」

 アーロア様はまたすぐ居なくなった。


 「アーロアは絶対に私のことを様を付けて呼んで遊んでいる。

  あ、ボブ、食べ物あるよ。

  セカンとディフィーが気を利かせて、今晩の分の干し肉を用意してくれた。

  大鳥の肉だということだよ」


 「あの、アレア様、この部屋はミーレナさんの部屋だと思うのですけど、使って良いのでしょうか?」


 「うん、ミーレナ様が『私は完全に禁足地に移るから、アレアがこの部屋を使って』と譲ってくれたんだ。

  だから大丈夫。

  ところで、ボブはミーレナ様をミーレナさんと呼ぶのだな」


 「はい、俺もまだ慣れないのですけど、本人から『様』ではなく『さん』付けで呼ぶようにという命令でして、俺たち人間とナーリアたちやエーレアたちは、心の中で最大限の敬意を込めて『さん』付けさせていただいてます」


 「そうか、ミーレナ様らしいな」

 俺は心の中でセカンとディフィーに感謝して干し肉を食いながら、アレア様と話しながらアーロア様が戻るのを待った。


 「アレア、戻ったよ。 ちょっと人数が増えちゃったけど」

 一番最初に部屋に入って来たのは、ミーリル様だった。


 「アレア、ダイクを呼びつけるのだもの、私も来ちゃったわ。

  悪だくみするなら、私も一枚噛ませなさい」


 「ミーリル様、悪だくみだなんて」


 「違わないでしょ」

 アレア様は苦笑している。


 ダイクも入って来て、ちらっと視線を交わす。

 アリファ様は見るからに憔悴している。

 最後にアーロア様が入って来て扉を閉めた。


 「最初にその後のことで今までに分かっていることを説明しておくわ。

  アーリアとアーリルの怪我は、アレクが治療して血は止まり、今のところ死ぬ様な事はないわ。

  それで二人の居場所は確認してあり、アーレアが気配を消して交代で見張っている。

  二人は見張りがついていることをあり得ると思っているみたいだけど、気づかれてはいないと思う」


 ダイクとアリファ様がちょっとホッとした顔をした、たぶん俺も。


 「良かったと単純には喜べないわね。

  生きていれば、死ぬより辛い苦しみがずっと続く」

 とても沈痛な顔をしてミーリル様が呟いた。

 その言葉にラミア全員が暗く沈む。


 「でも、それでも、生きていてくれて、俺は嬉しいです」

 そのダイクの言葉はラミアたちに感動を与えた様だ。


 「でも今のままじゃ、生き延びられないよね」

 雰囲気を変える為だろう、アーロア様が少し口調を変えて言った。


 「ああ、あれでは無理だろう。

  尻尾の切断面をかばっているから、移動速度も遅いし、季節も厳しくなってきているし、取れる食物もほとんどないだろう。

  治療の薬も、アレクが渡す間も無く、ナーリアたちの家を出て行ってしまったので、持っていないし、装備という装備が何もない。

  あれでは無理だ」

 アレア様が現状から否定的な意見を言う。


 「つまりはどうにかして少し援助しないと、生き続ける事は出来ないということよね」

 アーロア様が結論づける。


 「でも難しいわよ。

  私たちが表立って援助する訳にはいかないし、私たちが援助すると苦しみを伸ばすためにしているかと思われるかもしれない」


 「流石にそれはないと思います」

 今まで何も喋らなかったアリファ様がミーリル様の言葉に反論した。


 俺は、俺とダイクがこの場に呼ばれている理由を理解した。

 「俺とダイクが二人に会いに行きます。

  俺とダイクは人間だから、単純に生きていて欲しいという気持ちだけで行けます。 

  それと、俺とダイクのここに来る時に背負っていた荷物を二人にあげれば、最低限の事は出来ます。

  アーリル様はもう火を使えるから、少し指導すればどうにか寒さもしのげるはず」


  「二人とも尻尾を失くしているから穴を掘ることが出来ないけど、俺が道具を持って行って、人間の穴の掘り方を教えれば、小さな洞窟でも利用すれば冬籠りができるかもしれない」

 俺の言葉にダイクも続いてくれた。


 「私が食料係に頼んで食料を分けてもらって、二人に運びます。

  私が持って行くなら、二人も受け取ると思うので」


 「アリファ、あなた片手で大丈夫。 使えなくなったの利き手でしょ」


 「心配してくれてありがとう、アーロア。

  でも大丈夫、もうだいぶ慣れたし、それに肩がけのバックに入れて行けば片手でも十分よ」


 「あとは薬の類だな」


 「アレア様、それは大丈夫です。 アレクが用意してますよ。

  というより、きっと明日の朝、自分で持って行こうと考えていると思いますよ」


 「ああ、確実にそうだな」

 俺の言葉にダイクが太鼓判を押した。


 「それじゃあ、明日アレクが森に出る前に行って、その薬も持って、ボブとダイクとアリファに二人の元に行ってもらうことにしよう。

  もちろん私が案内する」


 「あの、私、ナーリアたちの家へ行く許可がありません」

 そうだった、アリファ様は上位を外れたので、許可がないのだった。


 「私がミーリオに話しておくわ。

  今はラーリア様たちとミーリアが謹慎中だから、順位的にミーリオの許可で大丈夫だから。

  ほら、私がここに来て役に立ったでしょ、アーロア」


 「はい、その通りです。

 ミーリル様、いじめないでくださいよぉ」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。