14. 初めての外出準備
「とにかく今日からいつも通りの仕事をしなければいけないのだから、アレクもきちんと付いてきてね」
食事をあまり食べなかったことは華麗にスルーして、ナーリアが僕に服を差し出しながら言ってきた。
「外に出れるなら、逃げるチャンスがある、などとは思わないことだ」
サーブが釘を刺す様に言う。
サーブがそう言ってくるのは、当然のことだなと思う。
まだ会って二日しか経っていないし、逃亡を疑うのは当然のことだ。
「分かっている。 変な真似はしない。」
僕はあっさりと本心からそう答える。
ラーリアと呼ばれているらしいラミアたちと比べれば、ずっと弱そうに見えるけど、ナーリアたちだってラミアだよ。 僕が勝てそうには思えない。
それに僕はラミアの能力が分かっていない。
今逃亡を図るのは絶対無謀だ。
観察して、このラミアたちの能力を見極めることに、今は神経を集中しよう。
僕は服を着ただけだけど、ラミアたちは扉近くの収納庫から取り出して、武器も身につけていく。
腰に剣とナイフを下げ、背には弓を背負う。
随分と重武装な気がする。
「今日は何か獣でも狩に行くの?」
「普通に木ノ実や果実の採取だよ」
そうだよね、という顔でナーリアとサーブの顔を見ながらセカンが答えてくれた。
「今日はアレクが初めてだから、ここから一番近いところでの木ノ実採りだよ」
ナーリアがそう言った。
ということは、この武装は僕を逃さないための武器か、ちょっと背中を冷や汗が・・・。
僕はちょっと軽口を叩く。
「僕のためにしては少し大げさだね。」
「何を言ってるの。 部落を出れば、ここは深い森の中。 獣もゴブなんかも何時近寄って来るか分からない。
剣や弓を持っていくのは当たり前でしょ」
ディフィーに言われた。
なるほど、人里に近い所なら強い獣もゴブなんかもあまり近付いてこないけど、ここは深い森の中、武装は当然必要だよね。
でも今の言い方は、僕のことは心配してないというか、武装なんてしなくても僕の逃走など阻止できる、って感じだよな。
僕は意識せずに渋面をしてしまったらしい。
それに気づいたサーブが見当違いに慰めてくれた。
「心配するな。
さすがにお前に武器は持たせてはやれないけど、普通はラミアを見て、ゴブも獣も襲ってはこない。 向こうがこっちに気づくより、こっちが気付く方が早いしな。
それに一番ここに近い場所だからな、安心してて大丈夫だ」
僕を真ん中に包囲する様にして、外に出ようと通路を進んでいく。
そのまま外に出るのかと思ったら、出入り口近くの扉のないちょっと広そうな部屋に入っていく。
中には石のカウンターがあった。 そのカウンターに居るラミアに、ナーリアが声を掛けに行った。
「おおっ、ナーリアたちか。 そいつが役立たずの人間かい?
話は聞いているよ」
「はい、初めて連れ出すので、今日は一番近くで採取しようかと思います」
「そうだね、初めてのことだから様子見に簡単なことからするのが良いだろうね。
ミーリア様にも、ナーリアたちはとりあえず無理をさせず大目に見てやってほしい、と言われているわ」
「ありがとうございます」
「それで、その役立たずの分はどうする?」
「はい、役立たずでも荷物くらいは持てると思うので、その分もください」
「わかった。 近くの採取じゃ昼用の食料はいらないね」
「はい、現地調達できますから」
カウンターに、きっと採取した木ノ実や果実を入れるためだろう、何かの蔓で編んで作った丈夫そうな肩がけ袋と、皮で作った水筒が並べられた。
一人一人それを受け取り、僕にも渡された。
「気を付けて行って来るんだよ。 無理しなくて良いからね」
カウンターのラミアは僕を見ながら、最後にそう声を掛けてきた。
今のは僕以外のラミアたちに対してだな。 目が不信感で一杯だった気がする。
「はい、ありがとうございます。 行ってきます」
僕たちは大急ぎでこの部屋を出た。
部屋には僕たちだけでなく多くのラミアがいたのだが、その好奇に向ける視線は僕にだけでなくて、皆にも向かっていたようで、辛かったみたいだ。
「視線が痛い」レンスが小さな声で呟いた。
「しばらくはずっとこんな感じ?」セカンが追随した。
「ほら、しゃべってないで急いで外に出ちゃおうよ」
サーブが小声だけど強い口調でそう言うと、自らどんどん先に進む。
追い掛ける様にみんな進んでいく。
僕も一緒に急ぎながら、
確かに視線もすごくて大変だけど、なんかずっと「役立たず」って言われるのも地味にダメージがあるなあ、
なんて考えていた。
外に出た。
意外に早く外に出ることができたなぁ。
地下の部屋の中から外に出ただけで、何だか生きてることを実感して嬉しくなる。 最初に地下の部屋に閉じ込められた時には、もう生きて外には出れないかも知れない、なんて風にも考えたりしたんだ。
陽の光が眩しいぜ。




