12. 回想しちゃうよね
夜中に目が覚めてしまった。
この二日、考えてみるとこの事態になってまだたったの二日でしかない。 全く予想もしていなかった状況に緊張しっぱなしで、疲れが限界にまで達していたのだろうか。 口移しの水を飲まされなければ、凄く気持ち良いだけというのを確かめられて安心した記憶はあるのだが、そこから先の記憶がない。
目が覚めたのは、きっと少しの身動きも出来ないからだろう。 昨晩の様に、手足はそれぞれに一人づつによって押さえつけられている、いや抱きつかれているし、また胴体も抱きつき枕にされて腰に手を回されている。
これ毎晩の基本的ポジションになるのかな、慣れないとダメなやつなのかな。 ちょっとため息。
僕の脚の間に身体を入れて、胴体を抱き枕にしているのはディフィーだ。 きっと明日の朝の順番なんだろう。
結局仕切り屋のサーブは自分を最後の順番にしたということか。
気を使うタイプなのかな。 名前があるとより個性が見えてくる気がするなぁ。
ラミアたちはみんな眠りに付いているみたいだ。 ラミアも普通に寝るんだな。
ラミアの睡眠が人間と比べて短いのか長いのか分からないけど、人間だって人それぞれだし、誰も起き出す気配もないからまだ夜は長いのかも知れない。
う、動けない。
動けないのが気になってしまったら、目が冴えてしまって、再び寝ようと思っても眠れない。
両親が共に流行り病で、何も考える暇もないままに、あっという間に亡くなってしまった。 引き取ってくれる叔母夫婦がいたことは、どちらかというとラッキーなことだと思う。 でも当たり前だけど叔母夫婦もそんなに余裕がある訳はなく、僕は自立の道を目指さねばならなかった。 最も簡単だと思ったのは、狩人を目指すことだ。 狩人なら農民の様に耕す土地が必要な訳でもないし、獲ってきた獲物を売ればすぐに金になる。
それに何より、狩に出ていれば、煩わしい人間関係に悩むことはないから。
狩人になるとしても、その為には様々なスキルを身につけなくてはならない。 狩の仕方なんてのは当然だが、それ以上に戦闘技術を身につけなくてはいけない。 そう森や山には獣以外にも危険がたくさん潜んでいるのだ。 幸い人里に近いところには、弱い物しかいない。 弱い物なら、剣や槍そして弓なんていう狩にも使える戦闘技術を学び、その生態を知っていれば、絶対とはいえないけど対処できる。
しかしまあ、例えば弱い魔物のゴブでも、集団で襲われたら即座にアウトだけど。 それを最初から恐れていたら何も出来ない。
叔母の家の仕事の合間を見つけては、小さな用事を請け負って、僕は狩人学校入学のための資金を貯めた。
そんなことをしていると、色々言う奴が出てくる。 僕のことを悪く言うのは構わないが、口が悪い隣人は叔母夫婦のことを「教育もしてやれないのか」と陰口を叩く。
それはとても心が痛む。 早く、早く、独立したかった。
狩人学校では全てのことに全力で取り組んで、早くちゃんとした狩人としての技量を身につけようと頑張った。 そして分かったのは、僕には圧倒的に集団行動というか、他の人との共同作業が苦手なことだった。
他人が何を考えているのかを察することが苦手だ。 他人の行動が理解できない。 僕にすれば、合理的な判断が、他の人にとっては考えられないことであるらしいことが多々ある。 逆に僕が誰かを、当然この様に動くだろうと予想して何かをしようとすれば、その予想はことごとく外れていく。
狩の場や、戦闘の場ではそれは命取りになりかねない。 結果、僕はソロでの行為、その技術に集中した。
もう一つ僕が一生懸命に覚えたのは、一人暮らしの技術だ。
料理や普通の家事はもちろん、サバイバル的なことや、建築・鍛治・薬草など、役に立ちそうに思えることは何でも覚えようと考えた。
狩人学校には結構色々な蔵書があったのだ、活用しない理由はない。
卒業間近になり、学校の薄い付き合いではあるが、友人たちは腕試しにグループで数泊の狩に行く。 僕がそんなグループに所属している訳はなく、関係のない話だと、卒業後にどうするかばかり考えていたのだが、まあ親しい方のグループに一緒に行かないか誘われた。
狩で一緒に獲ることは期待しないが、それ以外の山野草や料理にはとても期待しているとはっきり言ってきたのが気に入った。 僕も自分の実力を知りたい気持ちもあり、それならと同行することにした。
友人たちの狩は順調だった。
友人たちの狩を近くで見ながら、僕はそこから外れた獲物を狙い、満足できる調子で狩ることができた。 季節が良いからか、食材となる山野草も多く、毎日獲った獲物と共に僕にしてみれば豪勢な食事を作ることもできた。
順調だった、何もかもが順調で、僕たちは完全に油断していたのだと思う。
森に入ってすぐの時は、ゴブなどの弱い魔物も警戒していたのに、狩が上手く行き、そんな弱い魔物にも出くわさなかった。 それで大丈夫だと思い込んでしまったのだ。
そして予定より深く入り込んでしまった。
一体いつからラミアたちに気付かれていたのだろう。 僕が気付いた時には、もう僕たちは一人外れていた僕を除いて、完全に制圧されていた。
きっと監視され、機会を伺われ、完璧な計画と統率の下に襲われたのだと思う。 未熟な僕たちとはいえ、反撃の一つどころか声一つ上げられた者がいなかったのだから。
それにしても自分だけがほんの偶然で友人たちとは違う扱いを受けることになったが、これはラッキーだったのか、それともアンラッキーだったのか、どっちなのかさえ分からない。
いや、違ったことがラッキーになる様にしていくんだ。 幸いこのラミアたちは、何だかとても人が好い。
何だかちょっとだけ、少なくとも友人たちよりはラッキーなんじゃないかと思う。 いや絶対ラッキーだ。
それにしても、叔母さん、心配して、そして悲しんでくれるかな。
僕が行方不明になったという連絡はまだ入ってないと思うけど。




