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気がついたらラミアに(なろう改訂版)  作者: 並矢 美樹
犠牲の上に

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111. 猟と漁

 さて、肉を得る為に狩をしようと思っても、そう簡単に出来ることではない。

 ここのところのゴブとの騒ぎで、この辺り一帯の鹿や猪はみんな逃げてしまって、以前に調べた行動範囲にはまだ戻ってきていない。

 食べ物が豊富なこの森をそうそう完全に離れることはないと思うから、そのうち戻ってくると思うのだが、何もしない訳にもいかない。

 そこで、逃げることも出来ず隠れていることしか出来なかったであろう、ウサギを初心に返って獲る事にした。

 僕は森の中で色々なところに以前と同じ罠を仕掛けていく。

 ナーリアたちは今が盛りの木の実をどんどん集めていく。

 ラミアたちは人間だとかなり処理をしないと食べれない団栗の類も簡単に食べられるらしい。


 「それにしても、アレクがウサギ獲りの罠を仕掛けていくのを見ると、何だか懐かしいな」

 サーブがそんなことを言い出した。


 「懐かしいって、そんな懐かしがる程昔のことじゃないだろ。

  ほんの先日のことじゃないか」


 「確かにそうなんだけど、それから後の日々が余りに強烈だったから、何だか遠い昔の様な気がしちゃってな」


 「あ、その気持ち、私も分かるわ」

 ディフィーまでそんなことを言い出した。

 「あの頃はまだアレクがナイフしか持たしてもらえなくて、このウサギの罠を作るくらいしか出来なかったのよね。

  今の剣鉈を腰に付けている姿とは、大きな違いだわ」


 そう言われると、確かに自分でももう腰に剣鉈を付けて、弓矢を背に背負っている今の格好が普通になっていて、ナイフだけだった時が余り想像できない。

 特に剣鉈は外にいる時には、今では常時腰に下げているから、完全にそれが普通になっている。


 「それにしても、鹿も猪もいないね。

  私には気配の欠片も感じられないわ。

  ディフィーはどう?」

 ナーリアが本来の目的を思い出して、言葉に出した。


 「私にも全く感じられない。

  セカンとレンスが何か見つけてくれば良いのだけど」


 そんなことを話しながらウサギの罠を仕掛けていると、二人が戻ってきた。


 「どうだった?」

 ナーリアが声を掛ける。


 「ダメ、全然いない。

  みんなこの森から逃げちゃったみたい」

 「あれだけ大騒ぎして、ゴブの大群が居たのだから、鹿や猪だって逃げる。

  少しの間は仕方ない」

 レンスもセカンも全く収穫はなかった様だ。


 「仕方ないな。 他のモノを獲ることを考えよう。

  それじゃあ、準備の為に少し竹を多めに切って戻ろう」

 僕はちょっと考えることがあって、そう提案した。


 「アレクは何かというと、竹を切って何かしようとするなぁ」

 サーブにそう言われて、なるほど確かにそうだと思った。


 「だって、竹は便利だろ。

  結構丈夫だし、そこいら中にあるし、切ってもすぐにまた生えるし」


 「確かにそうだけど、今までラミアはこんなに竹を利用しなかったから、ちょっと驚いている」

 セカンがそう言って加わってきた。


 「いや、まだまだだから。

  竹の利用法はもっとずっと色々あるから」


 「なんか、そういうの教われると思うと、楽しみよね」

 ナーリアがちょっと嬉しそうに言った。


 僕たちは竹を抱えて家に戻ってきた。

 さて、昼をどうしようと考えるが、何も出てこない。

 肉も使い切ってしまって、もうないんだよなぁ、豆も戻してない。

 ダメな時もあるさ、と割り切って昼飯作りを諦め、僕は川に下見に行くことにした。


 「ちょっと僕は午後からのことを考えて、川に下見に行ってくるよ」


 「え、アレク、昼食の準備はいいの?」

 ナーリアにちょっと驚かれた。


 「と、言われても、肉も全くないし、命の実を煮るくらいしか出来ることがないから、まだ時間があると思って」


 「そうね、材料がなければ何も作り様がないものね。

  今日採った木の実で、人間が食べれるモノはないかな?」


 僕は今日採った木の実を見せてもらう。


 「そのまま人間が食べれるモノはないけど、軽く炒ればコレとコレは食べれるな」


 「それ、どうするの?」


 「平たい鍋を弱火にかけて、その実を入れて揺すっているんだ。

  最初、実から水蒸気が出る様になって、それでも揺すっていると今度は薄く煙が立つ様になるから、そうすれば出来上がり」


 「簡単ね。 それなら私でも出来るわ。

  命の実を煮たり、実を炒ったりは私がしておくわ」

 昼食の簡単な準備をナーリアが引き受けてくれた。


 「私はアレクに付いて行く。

  一人では退屈かもしれない、二人で行く方が良い」


 「え、レンス、それ狡い」

 ディフィーが文句を言った。


 「狡くない。 さっきは私はアレクから離れて、周りの偵察に行った」


 「それなら私も偵察に行った。

  私もアレクと一緒に川に行く権利がある」

 セカンも加わってきた。


 「わかった、わかった、お前たち二人はアレクと一緒に行って来い。

  確かに二人はさっきは離れて偵察に行っていたからな」

 サーブがそう言って、裁定した。


 こういうところはサーブは、ナーリアよりとてもリーダーっぽいんだよな。


 「せっかくアレクと二人と思ったのに」


 「レンスはここのとこ、風呂の時といい、隙があればすぐにアレクと二人だけになりたがる」


 レンスとセカンはまだ言い争っていた。


 二人と共に川までやって来た。

 僕は川辺でちょっと川をジッと注視した。


 「居た。 やっぱり溯って来ている」


 「居たって、何が居たの?」

 セカンが聞いてくる。


 「そんなの魚に決まっているだろ。

  大きな魚が川を遡っているじゃないか、見えるだろ」


 「ほんとだ。 結構大きい魚がいる。

  アレクはあの魚が欲しいの?」

 レンスがそう聞いてきた。


 「ああ、あれを捕ろうと思っている」


 その答えを聞いたレンスは背中の弓を構え、魚に向かって矢を放った。

 「あれっ、意外に難しい」


 矢を外した、レンスはちょっと意地になった感じで、2本目を射ろうと構え始めた。


 「いや、今捕ろうと思っていた訳じゃなくて」


 そう言っている僕の横でもう一人も矢を射った。


 「本当だ。難しい」

 セカンも外した。 レンスは2射目も外した。


 「まったくもう。 水の中の魚は見えている位置と本当に居る位置がちょっと違うんだよ。

  こんな感じ」


 僕も収まりそうにない二人に引きずられて、矢を射った。

 僕の矢は当たった。


 「なんで? なんでアレクは当たるの?」

 レンスが聞いてきた。


 「魚が居る深さにもよるんだけど、見える位置より少し手前を狙って射ってみて」


 「ほんとだ。 当たった」

 セカンが先に魚に当てた。


 次にレンスが射って当たったが、一番最後になり悔しがった。


 「でも、弓矢で魚を獲ろうと思っていた訳じゃないんだよ。

  とりあえず当たった魚と矢を回収して来ないとな」


 僕が靴を脱ぎ始めると、

 「それ、私がやる。

  アレクだと靴脱いだり、ズボン脱いだりしないとダメでしょ、私ならその必要はないから。

  それに私の矢が一番多いから」

 レンスがさっさと水に入り、魚と矢を回収してきてくれた。


 ラミアは下半身は尻尾で、靴や衣服を着けれないので、確かにそのまま水に入れる。 僕は近くの笹を採ってきて、鰓から口に通して持ち手を作った。

 こんなことなら、何か入れ物を持って来るんだった。


 「それでアレクは弓矢じゃなくて、どうやって魚を獲ろうと思っていたの?」


 セカンの質問に僕は地面に絵を描いて説明した。

 「この魚はこの時期に川を遡って来る魚だから、川に竹で行き止まりを作って誘導してやれば、一箇所に追い込める。

  そしたらそこで捕まえれば、効率よく捕ることが出来るという訳さ。

  こういう事をするのに、どこが都合の良い場所か下見に来た訳」


 「うん、理解した」

 セカンは僕の説明で簡単に理解出来た様だが、レンスは良く分かっていない様だ。


 「ま、もう時間がないから、急いで家に戻ろう」


 僕は家に戻ると、水浴び場の方で魚を捌くことにした。

 本当は川辺でしてくれば良かったのだけど、運ぶ入れ物がなかったからちょっと出来なかったのだ。

 家の中では、風呂場の方の水場でやるのは、臭いやなんかでちょっと避けたい。


 まな板と木鉢と塩をセカンにも手伝ってもらって、運んで行った。

 まずは表面の鱗をナイフの背で落とした。

 その後、僕は慎重に、あまり刃を中に入れない様に気をつけて魚の腹を裂く。

 あった、綺麗な卵がたくさん腹の中にある。 そっと傷つけない様に、木鉢に移す。

 2匹が卵で1匹が白子だった。

 3匹のうち、1匹はまず三枚に下ろして、その後大きめの切り身にして塩を振りかけた。

 2匹は鰓を取り去っただけで、全体に、外側も内側にもしっかり塩をして、倉庫の風通しの良いところに吊るしておいた。


 僕はまず最初に卵と白子を小鉢に人数分に分けて、ナーリアたちに出してあげた。


 「アレク、これ何?」

 「魚の卵と白子」

 「白子って?」

 「魚の精のことだよ。 とにかく食べてみろって。

  人間も食べるモノだから、絶対食えるから」


 ナーリアたちは魚の卵を食べる習慣がなかったのか、恐る恐るという感じで口にした。


 「うわっ、何これ、美味しい。」

 ディフィーが声をあげた。


 「美味しいだけじゃない。

  アレクの精ほどじゃないけど、エネルギーも凄いぞ」

 サーブ、そこで僕の精を引き合いに出さないでくれ。


 「卵と精だというから、エネルギーが得られるのは理解できるけど、魚の卵と精って、こんなに簡単に得ることができるの?」


 「セカン、それは違うぞ。

  あの大きな魚は普段川で見かけないだろ。

  あの魚は産卵のためにこの時期だけ海から遡って来るんだ。

  だから今の時期だけの恵みだよ」


 「そうなの、それは残念」

 ナーリアたちはみんなとても残念がった。


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