↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
気がついたらラミアに(なろう改訂版)  作者: 並矢 美樹
犠牲の上に

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

105/297

105. 解ってなかった

 その日の話題は、ほぼそこまでという感じになったので、僕は少し疑問に思っていたことを尋ねてみた。

 「あの、ラーリア様たちは今回の戦いが事前にはどんなものになると考えていられたのですか?」


 正直な話、僕は戦いというものに参加したことも当然なかったので、全く想像がついていなかった。

 ゴブの集団を怖いと思うのは、それはもう本能的なもので、戦わねばならないということはわかるし、自分が出来ることをとにかく懸命にしようと考えはした。

 ディフィーとセカンが立てた作戦の意味も理解できている。

 でもそこに現実がどうなるかの、血生臭い想像が全く出来ていなかった。

 今になって、少し分かってきたのだ、ラーリア様たちがどれほどの凄惨な場を予想しながら作戦を考え、実行していたのかを。


 「今回の戦いで始まる前に予想したのは、まず最初はアーレアの半数は確実に戦場に来るまでに殺されると思ったな」


 「ああ、それは確実だと思っていた」


 「アーレア、いえ今はアレアですか、彼女は全滅を覚悟していましたね」


 僕たちは息をのんだ、そんな覚悟でいたのか。


 「アーレアは、あの戦いの前の探索で疲れ切っていて、自分たちが戦場ではあまり役に立たないと分かっていた。

  だからこそアレアは囮役を自らアーレアが適役だと買って出たのだろう。

  上位の中で自分たちは、例え全滅しようとも、戦力的に損害が一番少ないからと」

 ラーリア様が僕たちにアレア様の、いやアーレア様たちの戦いに向かう前の決死の気持ちを解説してくれた。


 「本陣に1人、また1人と戻ってきて、最後の1人が戻ってきた時、アーレアたちは号泣していた。

  戦いの真っ最中だが、思わずもらい泣きしそうだった」

 ミーリド様が振り返った。


 「私も、もう集落に行って休んで、と言ってやれなかったのが、とても辛かったです。

  そんな思いでみんなが戦っているのに、あのアーリアは!!」

 ミーリア様が思い出しただけで、また怒りがぶり返したみたいだ。


 「ミーリア、また冷気がダダ漏れだぞ」

 ラーリア様が冗談口で宥めた。

 うん、確かにミーリア様が怒っていると怖いし、空気が凍るのが分かる。


 「それにしても、戦いが終わってから、アーレアが1人も欠けてなかったのには、驚いたな。

  一人一人の技能や努力もあっただろうが、アレアの指揮も素晴らしかったということだな」


 「そこに疑いはないな。

  ま、アレアの指揮も良かったが、アーロアの指揮も良かったな。

  左翼は完璧だった」


 「アーロアも覚悟していたのでしょう。

  そうでなければアーロクが刺された後、あれだけ冷静に対処はできないでしょう。

  左翼を全く混乱させなかった掌握力は素晴らしかったですね」


 ラーリク様とラーリナ様が加わってアレア様、アーロア様の指揮ぶりを褒めた。


 「話が脱線したな、で予想だが、一番太鼓で、つまり本陣の弓の攻撃でどれだけゴブを討ち取れるかだが、私は50と予想していたが、みんなはどう思っていた?」


 「私はもう少し多く、60くらいかと。」


 「ミーリア、それは希望的観測すぎるだろう。

  私は40くらいと考えていたぞ。

  楽観して失敗するよりは、悲観的に見ておく方が良い」

 ラリファ様がそう言った。


 「たったそれだけですか?」

 僕はあまりにも少ない予想に、ちょっと弓矢を作った者として傷ついた。


 「いや、それでもお前の弓矢を評価しての数なんだぞ。

  今までの私たちの弓矢では、30の数さえ難しい数字だ。

  まさか本陣の弓矢の攻撃だけで3桁に手が届くなんて誰も考えないさ」

 ラリオ様が僕に言い訳してくれた。


 「その大外れの予想のおかげで、私たちは今ここにいるのだけどね。」


 「全くだ、予想通りの展開なら、私たちはここには居ない。」


 話の展開についていけない。


 「あら、分からないかしら。

  私たちラーリアは全滅を予想していたのよ。

  私たちラーリアに任されたのは、1匹でも多くのゴブを討ち取ること、自分たちが生き残ることを考える余裕はなかったわ。

  私たちが全滅するまでに、なんとかミーリア、ミーレアで全滅させられるだけの数にゴブを減らすという作戦だから」


 僕だけではない、ナーリアも、サーブも、セカンも、ディフィーも、レンスも、顔から血の気が引いて青くなったのが分かった。


 「実際に3番太鼓が鳴った時は、ゴブの真ん中で青息吐息だったしなぁ。

  氷のミーリアの冷静な判断で助かったという訳さ。

  ちょっとでもあの3番太鼓の音が遅かったら、ラーリアの何人かは確実に死んでいたな」

 ラーリル様の言葉に他のラーリア様たちも口々にミーリア様の3番太鼓のタイミングを褒めたり、助かったと礼を言う。


 僕にはラーリア様たちの武勇は圧倒的に見えて、危ないなんてところは全く分からなかった。

 実際の場でも、ラーリア様たちが死を覚悟しなければならないような状況にあったのだと知り、ちょっと衝撃だった。

 考えもしなかった、そんなにヤバかったんだ。


 「そしてラーリア様たちの後を追って、私たちの出番。

  ミーリア、ミーレアでゴブを石にかじりついでも殲滅する。

  ラーリア様たちも同じでしょうが、私たちも腕一本、尻尾だけでも、いえ、指一本でも動くならゴブに立ち向かう決意でした。

  1匹たりとも逃してはならない、我らミーリアはラミアの盾。

  盾の後ろは味方のみなのですから」

 ミーリル様が誇り高くそう言った。


 「それにしても、私とミーレアだけはその掃討戦に加わってはいけないという命令だけは、未だに納得できません。

  せめて、ミーレアだけで良いではないですか」

 ミーリア様がラーリア様に事が終わってまでも異議だてするのも珍しい。


 「それは命令するだろう、しなかったら先頭で突き進むだろ」


 「当然です。 私はミーリアのリーダーですから。

  それに私の指揮でみんなが死地に飛び込んでいるのです。

  私だけが安全な後方に居て良い訳がありません」


 「こうなんですから、ラーリア様、もっとガンと叱ってください。

  私たちの言うことなんて、全く耳に入りませんから。

  全く指揮官が死んでどうするんだ、というのが理解できないのです、このバカは」

 ミーリオ様が、酸っぱい顔をして、ラーリア様に言った。


 「ミーリア、お前だって分かっているだろ、まだその後も指揮をとる者が必要だったって。

  それにお前のいた場所だって絶対安全という訳ではなく、現にすぐ側でサーブが刺されたのだろ。

  もしものことを考えて指揮官と、そのスペアを違う場所に残すのは当然のことだ」


 「もちろん、頭では分かっているのです。

  でも、自分以外のミーリアが下手をすれば全滅かもしれない戦いの場に、自分だけが出ていくことを禁止されるのは、あまりに(むご)くないですか」


 「気持ちは分かる。

  だが、それに耐えるのも指揮官の務めだ」


 3番太鼓の時にミーリア様とミーレア様のみ指揮の声だけで動かなかったのは、そういった込み入った事情があったのだと初めて理解した。

 そしてそれが先頭でゴブたちに切り込むより辛いということも、僕でさえ何となく理解できた。


 「で、その後は、生き残ったミーリア、ミーレアとアーリア、アーロアをミーリアかミーレアが指揮して、戦いに出なかったゴブを始末する予定だった訳だ。

  ここは問題ないだろう」


 話を聞いていたら、何だかとんでもなく悲観的な予想の元に動いていた気がするのだが、結局どのくらいの犠牲を覚悟していたのか、よく分からなかった。


 「まず、ラーリアの全滅は確定だな。

  ミーリア、ミーレアも2-3人づつ残れば良い方。

  アーレアは半分も残っていない。

  アーリア、アーロアは半分くらいは残るか。

  まあ、総数としては20名やっとが生き残るという感じかな」


 何なのその数字、そんな予想の元に上位のみんなは動いていたのかよ。

 何て表現していいか分からない。


 「200以上対60の戦いですからね、そのくらいがやっとのことだと考えるのが当然です。

  悪くいけば、上位だけでなく、連れていった者の全滅、その後の集落の全滅もあり得る状況でしたから、それでも楽観的な数字です」


「ラミアの独り言」ep.5 自問が、この頃の話です。

余裕があれば、そちらも読んでいただけると嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。