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気がついたらラミアに(なろう改訂版)  作者: 並矢 美樹
犠牲の上に

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103/104

103. 少し変わった日常と

ここから新章「犠牲の上に」となります。

 ゴブとの戦いが終わり、日常生活が帰ってきた。

 でもこの戦いの後で変わったことも沢山あった。


 まず第一に、僕だけでなく、人間の行動が基本自由になったこと。

 今までは、もう形だけだったけど、一応監視がいつでも一緒にいたのだけど、武器の携帯も許されて、完全にこのラミアの集落の一員として認められ、監視に誰かが付くということがなくなった。


 それで、ラーリア様から、今後の人間の身の振り方というか、どうしていくかを人間に問われた。

 「ラミアの集落としては、このままここに居て欲しいが、人間の自由意志に任せる。

  ただ、もし出て行ったとしても、ラミアに敵対しないで欲しい」と。


 僕は元々、森で一人で暮らすことを目標にしていたから、今の状況はその目標よりも良い状況な訳で、出て行く必要は全くなかった。

 強いて言えば、叔母さんに生きていることを伝えたい気持ちが少しある程度。


 他のみんなはというと、

 「今さら戻っても居場所もないし」

 「元々独立するために狩人学校入ったのだし」

 「もう心配しているという時期も過ぎちゃっただろうし」

 「まだラミアに世話になった恩を返した気がしないし」

 などと軒並み残る方向になってしまった。


 僕は学校で友たちと個々の事情とか話そうとも聞こうともしなかったから、ちょっと軒並み残る方向になったのが意外だった。

 狩人学校に入校するような者は、やはり似たり寄ったりの事情を抱えていたのかもしれないと思った。


 残ることになって、僕は彼らも僕みたいに、それぞれどこかのグループに入れられるのかと思ったのだが、そんなことはなくて、今まで通りだった。

 ま、確かにどこかに所属させてしまうと、今までと同じ様にラーリア様たちやミーリア様たちが精を受けることが出来なくなるからなぁ。

 結局友たちは、彼らで一つのグループとみなされた。

 友たちの生活の基本は変わらなかった。


 ただ、僕が精を出せること、つまり不能ではないことがミーリア様にまで完全にばれてから、どういう形でナーリアたちに接しているか、詳しく聞かれた。

 口移しの水を使って出させていた時と違い、「使わずにだと、どの程度の頻度で出せるのか?」と問われても、答えにくいし、難しい。


 「個人差も大きいですから、あくまで僕の場合はです」と断って答えても、時には間隔がもっと開く時もありますし、気分でできない時もある、したくて多くすることもあるし、と例外ばかりであまり参考になると思えない。


 ナーリアたちも、「一応順番だけは決まってますけど、後は臨機応変で」なんて言っている。


 少しも参考にならなかったのではないかと僕は思ったのだが、ラーリア様、ミーリア様は、順番を決めて、ということを忠実に実行したようで、ミーレア様たちも喜んでいたが、その下のアーリア・アーレア・アーロアは今まではほとんどなかった機会がきちんと得られるようになって、すごく喜んだ。


 それから、ミーリア様たちの下5人も、火の扱いを覚えるために、来るようになった。

 これは昼の食事の問題が大きかったからかもしれない。

 人間たちは最近は天気が悪くない限り、僕の家に来て、昼食をとっている。

 それに便乗する形で、ラーリア様たちとミーリアの上5人が交互にというかある程度順番に来ていたのだが、それにミーリアの下5人が異議申し立てをしたのだ。


 で、その5人も火の扱いを覚えるという大義名分で、僕たちの家に来る許可を得た訳だ。

 今回はミーリア様も落ちこむことはなかった。

 ミーリア様は戦いの後、来る機会が増えて、来る度に竃に火を点けるのをかって出て、セカンの個人指導を受けて、今では完全にマスターしているからだ。

 ミーリア様って雰囲気とは違って本当はすごい努力家なんだと思う。


 そんなこんなで、なんとなく戦いの後の日常が回り始めた時、ラーリア様は僕たちの家で昼食会を開くと言い出した。

 メンバーはラーリア様たちと、ミーリア様の上5人、そしてイクス様、食事を用意する僕たちナーリア6人も、混ざって良いとのことだった。

 この日は僕たちの家に来ることが許されている人も、流石に遠慮することとなり、自分たちナーリア6人は食事係だとわかってはいても、なんだかこの場にいて良いのだろうかという感じだ。


 僕は少し特別感を感じられるような食事を出したいと思い、鹿肉に軽く塩をしたら大きな葉で包み、土を水で練ってまた包んで竃に入れ焼いた。

 本当は塩で包みたかったが、ここでは塩は岩塩が取れるのだが、ちょっと貴重だから、我慢して土で包んだのだ。

 朝から竃に入れておいて、回りの土が完全に乾いて固まって、それからヒビが入って少し割れて、なんとなく中から湯気が出てきた感じになったら竃から取り出しておいた。


 昼食会の始めの時間の時には、ちょうど粗熱が取れたくらいの時間だった。

 僕はみんなの前にその塊を持っていき、叩いて割って中身を取り出し、切り分けて配った。

 ちょっとしたパフォーマンスだが、火を使った料理にあまり馴染みのないラミアだから、かなりウケた。

 他は、いつもの命の実と果物などだ。


 さて、食事会もまあ何とか上手くやり終えたぞ、と僕たちが安心した時、ラーリア様の真剣な言葉が始まった。

 「さて、食事もしたことだし、今日の本題に入ろう」


 僕たち6人は寝耳に水という感じで驚いたのだが、他のラーリア様たち、ミーリア様たち、そしてイクス様は真剣な表情となった。

 「今回の戦いに関しての率直な意見と、ゴブの今後の動向をどう見るか、我々の今後の方針に関して、思うところを自由に話してくれ」


 ラリト様が口火を切った。

 「今回思いがけず大勝したが、実態は紙一重の勝利だった。

  自分の担当した所でのことで心苦しいが、アーリアの命令無視と勝手な行いで、(すんで)に戦線が崩壊する所だった」


 ラリト様の声がとても沈痛な響きに充ちていたので、場の空気が一気に暗く重苦しいものになった。


 「あの時点でアーリアの一角が崩れても、逃げれたゴブの数はそう大したことはありません。

  勝利は動かなかったのではないでしょうか」

 ミーリル様がその空気を払いのけるかの様に、ラリト様の紙一重の勝利だったという言葉に疑問を挟んだ。


 「そんなことはない。

  逃げられていたら、集落を守るための陣を敷かねばならなくなり、残りのゴブを壊滅させる余裕はなかった。

  それではゴブはすぐにまた息を吹き返してくる」

 ラーリン様がそれに答えた。


 「正直に言って、戦力的に一杯一杯だったな。

  逃げられていたら、あの後は集落の近くで守りの陣を敷くのがやっとだったろう。 

  その辺はミーリアはどう思った?」

 ラーリア様がミーリア様に話を振った。


 「はい、あの時点で、失礼ですがラーリア様たちとアーレアは疲労困憊、ミーリア・ミーレア・アーロアしか戦力にならなかったと判断します。

  その3隊も、けが人もいたので、半分少しの戦力でしょうか。

  集落の近くで守るのが精一杯だったと思います」


 「要するに、あそこで逃げられて、長期戦になれば、ゴブは増えていき、我らは減っていくという、どうにもならない数の差で、我らの敗亡が決まったということだな。 紙一重もいいとこだな」

 ラリオ様がまとめてしまわれた。


 「その事態を引き起こしかけた張本人のアーリアの処分はどうしましょう」

 ラーリン様が冷たい声で言った。 冷静に話しているが、余程腹に据えかねているという雰囲気だ。


 「隊の指揮を執る器ではないな、あれは」


 「ここまでのことをして、そのままにはしておけないだろう」


 「それにあそこまで信頼を失っては、下の者がついていかないだろう」


 「しかし、今切ってしまうと、少なくともアーリアだけでなく、アーリルも確実に集落を出て行ってしまうだろう。

  他のアーリアも、他の者の目を気にして追随しかねない。

  ただでさえ兵力が枯渇している現状で、それは痛い」


 「本来、アーリアは戦闘能力は高い。

  新たに下の者を昇格させれば埋められるというものでも無い」


 この場に自分たちがいる場違いさに、僕もナーリアたちも、音も立てないようにして、黙って小さくなっているしかなかった。

 何でこんな話している場に僕たち居るの?


 「現状を考えますと、今回だけは大目に見て、今後どれだけ努力するかを見る、という方向性しか無いのではと考えます。

  今回のことを真摯に反省し、汚名を(そそ)ぐように努力せよ、とアーリアには釘をさすことで収めるべきかと」


 「氷のミーリアがそう言うなら、それで仕方ないな」

 ラーリア様がそう結論づけた。


 「あの、『氷の』っていうのは何なんですか?」


 「おや、本人は知らないのか。

  お前、周りではみんなそう言っているぞ」


 ラーリア様たちは皆生暖かい笑顔を向けているし、他の4人のミーリア様たちは下を向いて顔を見られない様にしていた。


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