102. 論功報償
ラーリア様がやってきた次の日、このラミアの集落に住む者全てが広場に集められた。
なんのことはない、ラーリア様は僕たちがこの集まりに参加できるかどうかを見にきてくれたということだった。
「この里にいる者たちよ、ここのところの大体の事情はすでにもう知っていると思う。
正確な情報を隠していたことをすまないと思うが、その事情を含め、一切をここに教えておこう」
ラーリア様は広場ら集まった全ての人にそう言って語り始めた。
僕たちにとっては、すでにみんな知っていた事なのだが、ラーリア様から改めて語られると、本当にラミアの里の滅亡の危機だったのだと改めて感じた。
僕たちでも、そんな風に感じたのだから、情報を伏せられていた人たち、一部しか伝えられていなかった人たちは、ラーリア様の言葉を一言も聞き漏らすまいと真剣に聞いていた。
それは戦いに赴いた上位ラミアも同じ事で、自分たちがどれほど重要な役割の中にいたかを再確認するものだった。
そして全てが語り終えられた時、広場は安堵の空気と歓声に満たされた。
ラーリア様の言葉は続く、
「私はここで、今回の戦いで、大きな貢献をした者たちを、みんなに伝え、その貢献に対して、みんなと共に感謝を捧げたい。
みんな、聞いてくれ」
ラーリア様は集まった者を前に一呼吸おいた。
「今回の戦いで一番の貢献をしてくれた者、それは200匹を超える武装したゴブを、たった10名で挑発し、予定の戦場まで誘導してきてくれたアーレアたちだ」
ラーリア、ミーリア、ミーレア、アーロア、そしてエーレア、ターリア、ワーリア、ヤーレアもちろん僕以外のナーリアも、尻尾の先で地を叩いた。
「この10名の決死の行動がなければ、勝利などあり得なかった。
私をはじめ、今回の戦に出た者たちは皆、お前たちの働きを眼に焼き付けたぞ」
僕は隣にいたセカンに尋ねた、
「周りのラミアが尻尾を地面に打ち付けたけど、あれはどういう意味があるの?」
「最高に讃える行為であると共に、私はそれを見た、私はそれを証言するという意味がある」
「それをされるというのはすごい栄誉になるのかな。」
「そういう事」
歓声が収まるのを待って、ラーリア様は話を続けた。
「次はナーリアだ。
今回の戦いの作戦立案、指揮方法の献策、物資・食料の調達など多大な貢献をした。
それだけではない、まだ上位ラミアでもないのに、戦いの場でも序盤の戦いの主役を演じた」
僕たちは自分たちが讃えられることは考えていなかったので、びっくりした。
そしてラーリア様の言葉と共に、ラーリア様たち、ミーリア様たち、ミーレア様、アーレア様、アーロア様が尻尾で地を叩いてくれた。
感激した。
「そして、戦線の崩壊を食い止めた、エーレアたちとミーレナだ。
エーレアたちは戦闘を担わない補助的な係として戦場にいたのだが、戦線崩壊の危機に自ら戦って防いでくれた。
ミーレナも機転を利かせ、自分の持ち場を離れてまで、孤軍奮闘して戦線崩壊を防いだ。
ミーレナがその奮闘の時に怪我をしたのが残念だ」
ラリト様、ラーリン様、アーレアたち、そしてアーリアたちが地を叩いた。
「あともちろん、ミーリア、ミーレア、アーロアとそれをバックアップしたターリア、ワーリア、ヤーレアのしっかりした貢献も忘れてはならない」
ラーリア様はまた一呼吸おいて話を続けた。
「もう一つ、今回の戦いで、戦いの場には出なかったが大きな貢献があった。
今回の戦いに、人間たちの作ってくれた矢や薬、食料などは、これらは必要不可欠な物だった。
そして、戦いの後の怪我の治療などでも大きな力になった。
私はこれも讃えたい。
それから彼らが戦いに出ることを、私が断りはしたが、申し出てくれたことも、皆に知らしておく」
ラーリア様たち、ミーリアの上5人、アーレア様が地を打った。
「私からはこんなところだが、ミーリアからはどうだ?」
ラーリア様が下がり、ミーリア様が前に出た。
本当だ、空気が凍った。
「私からも補足で大きな貢献を讃えます。
まず第一にラーリア様はあえて触れませんでしたが、ラーリア様たちの圧倒的武勇、そして長い時間にわたる奮闘を讃えないでは、この戦いは語れません」
戦いに参加した者全員の地を打つ音が響いた。
「アーレアの貢献は讃えられましたが、もう少し理由を加えたいと思います。
アーレアはゴブの集団を見つけ出す事でも、その場所に案内することでも貢献しています」
ラーリア、ミーリア、ミーレア、アーロアが地を叩いた。
「それから、戦線崩壊の危機に本陣から全速力で駆けつけて、それを防いだことも大きく讃えられるべきでしょう」
ラリト様、ラーリン様、そしてエーレアたちが大きく地を打った。
「ナーリアたちの戦いの場での行動も讃えられるべきでしょう。
ナーリアたちはもう下がっても良いとの命令を聞かず、矢が尽きるまで場に留まって奮戦していたことを私は讃えます」
ミーリア様たちが全員地を叩いてくれた。
「それから、個人的に二人讃えます。
人間のアレク、この者の作った弓、矢、薬、食べ物が今回の勝利を呼び込みました」
ラーリア様たち、ミーリア様たちが地を叩いてくれた。
「そして、ナーリア、グループではなく個人です。
ナーリアの提案した太鼓と鉦による指揮法は戦い全体を動かしました。
そして戦場が混乱した時の私への助言は全体を救いました」
戦いに参加した全員が地を叩いた、そしてイクス様が熱烈に地を叩いた。
「私からは以上です。」
ラーリア様が話を続けられた。
「この戦いはなんとか勝利したが、予想していた人数よりずっと少なかったが犠牲も出てしまった」
ラーリア様の「予想していた人数よりずっと少なかった」との言葉で、広場は静まりかえってしまった。
「犠牲者を悼むのはすでにしたから、ここではしない。 話を続ける。
それに加えて、残念なことに、ミーレナ、アリファから怪我のため上位としての職務が遂行できないと引退届が出された。
そこで空席を埋める為に、移動と任命を行う。
アーレア、お前はミーレアに昇格とする。
ただしミーレアの一員がアーレアと呼ばれては紛らわしいから、少し改名してアレアと名乗れ」
「承りました」 アーレア様、いやアレア様は膝を落とし、頭を下げた。
「アーレアはアレオがこれからは指揮をとれ」 同様の礼をアレオ様がした。
「アーリアが3人、アーレアが1人、アーロアが1人、計5人足りなくなるが、そこにはエーレアの5人を昇格することとする」
「あの、私たちですか?」 エーレアが不思議そうに質問した。
「なんだ不服か?」
「いえ、とんでもありません」
「なら、どうするのだ?」
エーレアたちは全員、片膝を落とし、頭を下げた。
「まあ、エーレアたちの驚きも分からなくはない。
今回の戦いの貢献度からいったら、ナーリアたちの昇格と思うだろうからな。
そのナーリアたちだが、ナーリアたちの昇格も考えなかった訳ではない。
ただ今現在ナーリアたちは禁足地に住むなどの特殊事情も抱えている。
そこで、ナーリアたちは今のままで、上位とし、6人ではあるが、アーリア、アーレア、アーロアと同格とする。
以上だ」
集まりが終わり、僕たちは家に戻った。
みんな感激の面持ちをしている、僕は今ひとつ実感がない。
「私たち全体で讃えられたのよ。あんたはなんでそんなに感動が薄いのよ」
ディフィーにそう言われても、なんともなぁ。
ぽやんとしているナーリアがより一層ぽやんとしている。
「私なんて個人で讃えられちゃったよ、あ、アレクもだけど」
なんだか地に足が着いてない感じ、ラミアだから尻尾か。
「アレクは実感できなかもしれないが、本当に感動したなぁ」
「うん、感動した」
サーブも、レンスもウルウルしている。
「アレク、こんな風に全体で讃えられるなんて数年に1度、もしかしたら10年に1度、そのくらいに珍しいこと。
最高の栄誉」
ふーん、そんなものなんだ。
「それにしても6人で上位という言葉に驚いた」
「別枠で作られたからか?」
「違う、"6人"というところ、アレクも入っている」
「そう言われてみればそうだな、アレクも上位ラミアと認められたということか」
「アレクはラミアじゃなくて人だけど、上位の一員として認められたという訳ね」
「えっ、それじゃ僕、もう捕虜じゃなくなったの?」
「アレク、何言っているんだ。
そんなのとっくになくなっているだろ。
捕虜が武器を腰に下げて歩ける訳ないだろ」
「アレクにラミアの常識は通じない」
僕は気がついたら、いつの間にかこのラミアの社会の完全な一員になっていたらしい。
この話で、最初の章「ラミアの捕虜」は終わりです。
かなり長い一章となりましたが、如何だったでしょうか?
次からは新たな章となりますが、これからもよろしくお願いします。
並矢 美樹




