第2章 宇宙膜モデルの力学的定式化
本章では、宇宙の加速膨張を内部流体ではなく境界条件によって説明するため、宇宙を有限領域として扱う膜モデルを定式化する。
本モデルにおいて、宇宙は時間依存するスケール因子 a(t) によって特徴づけられる有限領域として定義され、その境界は「宇宙膜」と呼ばれる。観測者はこの内部に存在し、膜の運動を宇宙膨張として観測する。
宇宙膜の運動は、単一自由度 a(t) による有効ラグランジアン
L(a, \dot{a}) = \frac{1}{2} M \dot{a}^2 - V(a)
によって記述される。ここで M は膜全体の有効慣性パラメータである。
ポテンシャル V(a) は、膜自身の張力と外部セクターとの相互作用を反映し、以下の形を採用する:
V(a) = 4\pi \sigma a^2 - C a^2
第1項 4\pi\sigma a^2 は膜張力に由来するエネルギーであり、膜の面積に比例する収縮的寄与を与える。\sigma > 0 は膜張力係数である。
第2項 -C a^2 は外部セクターに由来する有効斥力ポテンシャルであり、C > 0 とする。この項は膜の外側に存在する構造間の反発的相互作用を、内部から見た有効ポテンシャルとして記述したものである。
このとき、オイラー・ラグランジュ方程式より、膜半径 a(t) の運動方程式は
M \ddot{a} = - \frac{dV}{da}
すなわち
M \ddot{a} = (-8\pi\sigma + 2C) a
となる。
従って、以下の条件
2C > 8\pi\sigma
が満たされる場合、
\ddot{a} > 0
となり、宇宙膜は加速的に膨張する。
内部観測者にとって、この運動はスケール因子 a(t) の加速として観測されるため、本モデルにおける宇宙の加速膨張は、負圧流体の存在によってではなく、境界膜に作用する外部起源の斥力によって説明される。
この結果、標準宇宙論におけるダークエネルギー項は、本モデルでは独立なエネルギー成分ではなく、境界ポテンシャルに由来する有効量として再解釈される。
すなわち、本モデルにおける有効エネルギー密度および圧力は、内部に実在する流体ではなく、外部セクターと宇宙膜の相互作用を内部記述に写像したものである。
したがって、見かけ上の負圧あるいは ρ < 0 に対応する効果は、実在的な負エネルギー物質の導入を必要とせず、境界条件の力学的効果として自然に導出される。
以上により、宇宙の加速膨張は「内部エネルギー」ではなく「外部構造と境界の相互作用」によって決定されるという、新しい解釈が与えられる。




