此処に来て良かった〜リンダ編〜
ホーデン領に来てから楽しくてしょうがない。
それはセリカお嬢様に出会ったからだ。
お嬢様に出会う3年前にこちらに引っ越して来たのは王都での煩わしさがあったからだ。
師匠のところから1年程で独立をして、仕事をしていたが受けた仕事に貴族の横槍等が入ったり、それによってキャンセルにもなった。
それでも私を含めて何人かの魔導具師に気をかけてくれた貴族もいた。それが宰相閣下だった。
私達が動き易いようにしてくれていて、必要以上には干渉して来なかった。
それでも他の貴族がやたらと干渉してくる。特に南の公爵家だ。
私は我慢の限界が来て引っ越しをする事にして、仕事は師匠経由にした。師匠の下請けになってしまったが、まぁしょうがないと言うことか。
引っ越し場所は寒い所は嫌だったので南のホーデン領に行く事にした。海と言う物も見てみたいのもあったからだ。
引っ越しをして3年は師匠経由で仕事をしていたのだが、見本市と言うのが開かれると言うので試しに出店する事にした。
もしかしたら仕事が入ってくるかもないとしれないと思ったからだ。
いざ出店してみたがあまり人が来ず暇だったが、夕方前に2人のお客さんが来た。
1人は子供でもう1人はメイドの格好をしていた。
子供の方が楽しそうに魔導具をいじっていたので思わず声をかけてしまった。
「お嬢ちゃん、魔導具は好きなのかい?」
「はい、出来れば自分で作りたいです」
魔導具を作りたいなんて変わった子だなと思ったが、続けて話しをした。
「へ〜どんな物だい?」
「生活を豊かにする物です」
話しを聞いていると色々と出て来た。そしてお嬢ちゃんが言った魔導具を作ってみたくなったので「話しだけでも面白い、作ってみたくなる」と言ってしまった。
今度はお嬢ちゃんが私の事を聞いて来たのだが、私が王都から来ていた事を知っていたので、何故知っていたのかを聞くと町に有る魔導具屋で聞いたと言っていた。この町に有ったのか知らなかった。
それよりもお嬢ちゃんの言った魔導具を作りたいと言う欲求が強まってくるのでお願いをしてみたら、領主様の3女様だった。
最近町で色々と料理や便利道具を作っていると3女様の噂を聞いている。
作るには領主様の許可が必要な様だ。
一瞬、手を出さない方が良いのでは? と思ったがやっぱり作りたい。
お嬢様は私の連絡先と名前を聞いて来たので、答えると明後日に領主邸に来て欲しいと言われた。
3女様は帰って行き、見本市も終了時間だったので、片付けをしてから商業ギルドに報告をして自宅兼工房に帰ると、大商会のクオン様と町の魔導具屋の店主が来た。
どう言う事だ?
話しを聞くとお嬢様より聞いたと言っており、領主邸には一緒に行くと言われた。
思わず何故だ〜と言ってしまいそうになり、その日は寝れなかった。
領主様との面会の日はクオン様と店主に連れられて領主邸に行き話し合いをした。
結果は作れる事になったのだが、領主様側の方で少し難色を示してポットのみ4台となった。
お嬢様が仕様書を書くので、先ずは見積りもと納期をお願いされた。
それから店主が上手く行ったら製品を扱いたいと言ったが、クオン様が全数引き受けてから各販売店に卸す事になった。私はホッとした。その理由は直接各販売店と契約をすると事務作業が増える事になり大変になるからありがたい。
取り敢えずは話しがまとまった。
話しをした翌日にはお嬢様が仕様書を持って来た。
早すぎるよ。
工房の中に入ってもらい、仕様書を確認させてもらうと、物凄くわかり易い。そして絵を描いてあり簡単にイメージが出来た。
この様な仕様書は初めてだ。今までは口頭のみやメモ書き程度でこちらは頭を捻りながらやっていたが、お嬢様の仕様書はとても丁寧で何をやる為の物かはっきりと判る。何度もやり直すというものから解放されそうだ。
仕様書を預かり、お嬢様は帰って行った。
後日、納期と見積りを返事をした。
実際に仕様書を見て製作をすると後戻りもなくスムーズに出来てしまった。
今まではこんな事はなかった。
仕様書1つでこんなにも変わるのかと驚いてしまった。
製品は無事納品が出来て、暫くするとお嬢様から製品の感想を聞いてホッとしたと思ったらクオン様よりポットの発注が有り結構な数の注文だった。
クオン様と話しをして1ロットの数を決めて発注してもらう事にした。それでも今までよりも多い数だ。
師匠からの仕事も有るからクオン様の希望よりも少ない数だが、まぁこれはしょうがないと言う事で。
クオン様も増産増産と言わないので助かっている。
クオン様は「数が足りない位の方が値崩れしないからこのままやる」と言っていた。
王都や上級貴族の領地の店では入荷即完売になり、今では持っていない貴族は流行遅れと言われるらしい。
暫くすると今度は貴族が直接取引を持ちかけて来たりしたが、お嬢様やクオン様が契約が有るから断れば良いと言って、そっちは気にするなと言われた。
お嬢様からは新規の注文が入ったがポットの合間にやれば良いよと言われている。
仕様書も全て有り、ポットと同じ様にとてもわかり易い。
お嬢様はこの様なのを、どの様に思いつくのか聞いたりしてみたのだが、お嬢様は周りを良く見ておられどの様にすれば楽出来るかと言っていたので、私も今までとは違う見方をしようと思った。
本当にお嬢様の考えは面白い。
お嬢様の考えた魔導具で最も驚き、面白いと思ったのがキックボードだ。
王都にいる時に作った、ただ回るだけの物だったがまさか乗り物になっていると思わなかった。
思わず「直ぐ作りたい」と言ったがルールや機能をつけ足すと言って量産とまでは行かなかったが少数作る事が出来た。
それにキックボードより大きい魔導3輪車迄提案してきた。何処まで先を見ているのだろう。
そしてこの回る魔導具は魔導モーターと言う名前になった。
この魔導モーターがこんなにも進化すると思わなかった。
鉄道や船、洗濯機等色々と使われ始めている。
全てはお嬢様のアイデアだが、作るのが楽しくてしょうがない。
これからもお嬢様の物を作りたいし、自分でも作ってみたい。
王都時代の仲間達もこちらに来て、私の工房も人が増えて来た。
隣国や別の大陸へも作った物が輸出されている。
他にも色々と有るがホーデン領に来て良かった。
お嬢様と知り合えて良かった。
毎日が楽しい。今日もシンディの所へ飲みに行くかな。
ご覧いただきありがとうございます
300回と言う事でリンダ編にしました。




