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聖女無双  作者: 水無月 黒
第四章 魔王

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魔王上五階

 魔王城攻略を始めてから三日目の朝になった。

 「さて、そろそろ魔王の顔を拝めるかな。」

 ふかふかベッドでぐっすりと眠り、朝食もしっかり取って、今日も元気に魔王城を攻略する。

 本日は五階からスタートである。


 「ちょっと思ったんだが、魔族の方が技術力高くないか?」

 大介も魔族について詳しいわけではないが、二階のサーフィンのできるプールや三階の屋内スキー場にスケートリンク、その他快適な宿泊施設など、魔王城に使われている技術は高度なものがあった。

 「魔族には世界の危機や戦争で文明が後退するってことがないからネ。人類が失った技術も残っているらしいのサ。」

 技術の話になると、やはりアッカーマン教授が詳しいようだった。

 「なるほど……ん、と言うことは、昔は魔族と交流があったのか?」

 「今でもあるヨ。魔王城はロストテクノロジーの宝庫だからネ。世界の危機が深刻でないときは、何かしら売買しているのサ。」

 「ああ、エルマギカからの応援が来たって言っていたやつ、魔族との商売に来てたのか。」

 優太は何か心当たりがあったらしい。

 「浮遊島にも昆虫型のモンスターが湧くらしくてネ、モンスター除けの結界がいい値で売れたヨ。」

 人類もなかなかにたくましかった。


 「お、記録更新かな。」

 魔王城五階の最初の部屋に入ると、残念ながら魔王はいなかった。

 これまで魔王と戦った最上階は五階だったということなので、この階に魔王がいなければ記録更新になる。

 「五階の奥の方で待っているかもしれないから、まだ確定じゃないけどね。」

 さて、魔王がいない以上、この部屋で行われるのは魔族との勝負である。

 魔王の代わりにこの部屋で待っていたものは――

 「土俵だな。」

 「土俵だね。」

 「土俵だ。」

 つまり、相撲勝負であった。

 「となれば、ユージン! ここは任せたぞ!」

 「ハッ!」

 アルベルト王子の指名を受けて敬礼を返すユージン騎士団長は、当然のように廻し姿だった。

 「団長さん、やっぱり強いのか?」

 ユージン騎士団長が強いことは優太もよく知っている。たださすがに相撲でも強いのかまでは知らなかった。

 「ああ、王都ソレスで行われる相撲大会で、三年連続で横綱を守り抜いているんだ。」

 「へー、やっぱり凄いんだ。」

 「横綱って……番付まであるのかよ。」

 こんなところにまで日本の文化が入り込んでいた。

 そうこうするうちに、ユージン騎士団長が土俵に上がった。対する魔族も当然の如く廻しを締めている。

 両者とも仕切り線に拳を付き、同時に立ち上がった。見事な立合いである。

 「ハッキョイ、残った、残った、残った。」

 「魔族が行司をやるのはちょっと違和感があるな。」

 「力士の方はいいのか?」

 「最近は外国人力士もいるし、あの二人なら日本の大相撲でやっても違和感ない。」

 「なるほど。」

 ユージン騎士団長と相手の魔族はがっぷりと四つに組んだまま動かない。力が拮抗しているのだ。

 何か拘りでもあるのか、禁止されているわけでもないのに二人とも魔法を使っていなかった。

 地味ながらも白熱した勝負になった。


 「ん、あれは?」

 優太が目にしたのは、土俵から少し離れた客席。そこにはマリエラ王女がいた。

 マリエラ王女は熱心に観戦するだけではなく、しばしば画像クリスタルによる撮影を行っていた。

 「そう言えば、二階でも同じことをしていたような……」

 魔王城二階は幾つものプールが置かれたウォータースポーツのエリア。魔族の技術を少しでも知ろうと設備を撮影しまくるアッカーマン教授の助手に混じって、画像クリスタルを手にしたマリエラ王女の姿もあった。

 その時は、アッカーマン教授の手伝いをしているのかな? 程度に考えていた優太だったが、マリエラ王女が撮影していたのは魔王上の設備ではなく選手の方だった。

 更に見ていると、いつの間にかマリエラ王女の近くには女性の魔族が何人かやって来て一緒に観戦していた。なんだかずいぶんと親しげであった。

 今回、直接勝負を行った選手が相手の魔族と親交を深めるということは何度も起こっているのだが、勝負と関係のないところで人間と魔族が仲良くなるというのは珍しかった。

 「ああ、そういうことか。」

 その様子を見ていた優太は、ふと悟った。

 「大介君とくっついておとなしくなったと思ったんだが、……真正だったか。」

 「ん? どうした?」

 「いや、……何でもない。」

 優太は見なかったことにした。大介にマリエラ王女の趣味を教えるのはばかられた。

 たたし、この時優太が考えたこと――マリエラ王女が魔族の女性に腐教活動をしているというのは間違いだった。

 魔王城には過去何度も勇者と共に聖女が訪れている。その中には日本からやって来た腐の伝道者も含まれていた。

 腐女子の文化は、とっくの昔に魔族にも浸透していたのである。

 魔王城五階は格闘技を集めたらしく、この後もレスリング、柔道、ボクシングなどの競技が続いた。

 マリエラ王女は嬉々として勝負に挑む選手達の撮影を行い、また魔族の女性との親交を深めた。

 後にマリエラ王女は、今回撮影した画像を写真集にまとめ、同好の士に販売することになる。

 男性のイラストを描く際に使用する、人体の構造や各種ポーズを掲載した参考資料、だそうだ。


 その後、ユージン騎士団長と魔族による相撲勝負は、水入りを経る長期戦の末ユージン騎士団長が勝利した。

 決まり手は、上手投げであった。


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