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聖女無双  作者: 水無月 黒
第四章 魔王

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魔王城四階

 魔王城攻略二日目午後、昼休みの小休止を挟み、一同は四階へと上がって来ていた。

 「いったい何階まであるんだ、魔王城?」

 すっかり観戦気分の優太と異なり、大介は自分の出番が気になっていた。

 「過去の記録では五回まで登ったことがあるそうだよ。」

 この辺りの記録はエルソルディア王家に詳しく伝わっていた。

 「まあ、出現する度に増改築されているようだから、多少の増減はあっても不思議はないネ。」

 魔王城は外から見ただけでも分かるように、ちぐはぐなパーツを無節操に増築した構造だ。いつの間にか階数が増えていてもおかしくはない。

 けれども、増えるのならばともかく、階数が減ることがあるのかと思う人もいるかもしれない。

 十分あり得る話なのだ。増築した最上階が気に入らなくて解体することもあるだろう。長い時間の中には一度すべて壊して建て直すこともあるだろう。

 スキージャンプをやった部屋のように何階かぶち抜かなければならない施設を作る場合、上の階を取り壊して天井の高い部屋を作ることもあり得るのだ。

 「それに、最上階で魔王が待っているとは限らないのである。」

 「最短は、一階に魔王がいたこともあるみたいだね。」

 結局、何時まで勝負が続くのかは、魔族次第なのであった。


 次の部屋には、テニスコートがあった。

 「おっ、次はテニスか。普通のスポーツに戻ったって感じだな。」

 スキーやスケートが普通でないとは言わないが、設備が特殊だったウォータースポーツやウインタースポーツに比べると一階の陸上競技に戻ったような安心感があった。

 「ここは、私が参ります。」

 ここで名乗り出たのが、エリザベス嬢だった。例によって謎の早着替えでメイド服の下から現れたのはテニスウェアである。

 コートに立つ姿は実に様になっていた。

 そして、試合が始まった。

 ――スパーン

 「お、いきなりサービスエースか。やるな、うちのメイドさん。」

 エリザベス嬢の強力なサーブが突き刺さり、まずは一ポイント先取した。

 だが、相手の魔族も負けてはいない。激しいラリーが続いた。

 「なあ、なんで魔族は男しか勝負してこないんだ?」

 大介が素朴な疑問を口にする。魔族は普通に男女同じくらいいる。魔王城でも女性の魔族を幾度も見かけていた。しかし、これまで勝負に出て来るのは男の魔族だけだった。

 このため、男性魔族対女性人類の勝負が何度か行われていた。

 「それは、魔王城に乗り込んできた我々の人員が男に偏っているからだと思うよ。」

 これに答えたのもアルベルト王子だった。エルソルディア王家は魔族に対する理解が深い。

 「勝負を男女別にして女性の魔族が出て来るとこちらは少ない女性メンバーから選ばなければならない。そうすると、すぐに勝負に出せるものがいなくなって行き詰まってしまうから、それを避けるためだろうね。」

 「ふーん、そういうものなのか。

 そうこうするうちに、白熱した試合が続いていった。

 魔法が禁止されているわけでもないのに、両者とも魔法を使う気配はなかった。いや、魔法を使う余地がないと言うべきか。

 力任せにボールを打ち合っている訳ではないのだ。緻密にボールをコントロールして行われる高度な技の応酬。下手に補助魔法で力やスピードを上げても意味はなく、場合によっては自滅しかねなかった。

 「凄いな。あれだけ派手に動いているのに、金髪縦ロールが全く崩れていない。」

 「感心するところ、そこか!!」

 ボケる優太に突っ込む大介がすっかり定着してしまった。この二人、他にやることがないので。

 「あの姿、まさにお蝶夫じ――」

 「止めんかー!!」

 その後、試合はエリザベス嬢が勝利した。


 「さて、次の部屋は……卓球?」

 その部屋の中央には卓球台が置かれていた。たぶん、これまでで一番小さな部屋だった。

 「テニスの次は、テーブルテニスか。この階は球技縛りかな?」

 優太と大介が競技を確認していると、後ろから一人の男が進み出てきた。

 「ここは私に任せてもらいます。これは聖王家に伝わる伝統のスポーツなのです。」

 フィリップ王子であった。

 フィリップ王子もまた謎の早着替えで衣装を変える。その姿は――

 「何故に浴衣? ……ハッ、温泉卓球か!」

 何を伝えた、聖王家!

 「その通り! 因みに浮遊島に温泉は無いが、魔王城には温泉っぽい風呂を備えているぞ!」

 そこで現れた対戦相手の魔族も、当然のように浴衣姿だった。

 そして、エルハーベスタの王子 vs 魔族の温泉卓球対決が始まった。

 先ほどのテニスとは逆に、魔法全開の派手な勝負となった。

 補助魔法で強化されたスピードで走り回り、風魔法でピンポン玉を精緻に操り、魔族は翼まで使って空中殺法を繰り出す。

 卓球ってこんなスポーツだったっけ? と思うほど白熱した展開が続いた。


 「凄い試合だったなぁ。まさか温泉卓球であれほど必殺技が出て来るとは思わなかった。」

 「いや、魔法を使っている時点で別物だろ。」

 温泉卓球の勝負が終わったので次の部屋に向かう最中である。

 なお、勝利したフィリップ王子は、「汗を流してきます。」と言って対戦相手の魔族と共に風呂へ行った。まあ、すぐに追いついてくるだろう。

 「しかし、温泉卓球でこれだと、この先色々とヤバいことになりそうだな。」

 「そうか? これまでの勝負も十分にとんでもなかったと思うけど。」

 これまでも、最初の雷光の(ライトニング)オパールを始め、人間離れした試合は幾つもあった。

 「例えば、サッカー勝負があったらどうなると思う?」

 「……」

 「……」

 「少〇サッカー。」

 「〇ャプテン翼。」

 「ヤバいな。」

 「ヤバいだろう。」

 この後、だいたい二人が想像していたような展開が続くことになる。


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