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聖女無双  作者: 水無月 黒
第四章 魔王

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魔王城突入

 魔王からの正式な招待を受けて、勇者一行が浮遊島の魔王城に向かったのはそれから十日後だった。

 十日もあれば準備も捗る。エルソルディア各地から集められた兵士が追加で到着し、戦力をさらに増強した。また、エルマギカから北方山脈を東側から迂回してやってきた一団も到着し、アッカーマン教授に合流した。

 まあ、数だけ多くても仕方がないので、連れて行くメンバーは厳選した。

 今回魔王城に向かうのは、まず魔王と対決する勇者大介と聖女優太。

 この二人を支援するアルベルト王子、エドウィン魔導士長、アラン神殿長、王宮騎士団の面々。

 エルソルディアの国軍からも選りすぐりの精鋭が参加している。

 さらに今回は、非戦闘員であるマリエラ王女、リコリス、エリザベス嬢も同行する。

 以上がエルソルディアの人間である。

 これに加え、エルマギカからアッカーマン教授とその助手達。

 エルフィロソフィアから賢者ラウルとその助手達。

 エルハーベスタからフィリップ王子とセルジオ将軍、魔導船で一緒にやって来た海兵たちも参加している。

 エルマギカ、エルフィロソフィア、エルハーベスタの各国に対してはエルソルディアから要請する形で正式な参戦である。

 一応選りすぐったとはいえ結構な人数で浮遊島へ乗り込んでいく。

 浮遊島には魔族が住んでいるはずだが、魔王から正式に招待された勇者一行は特に妨害されることもなく、むしろ道案内されて魔王城までやって来た。

 「近くで見ると、やっぱり変な城だなぁ。」

 優太がしみじみと言う。バラバラな様式のパーツが無節操にちりばめられた巨大な構造物。建築の知識は無くても無茶苦茶違和感を感じるものだった。

 「それよりも、なんだよあれは。ふざけているのか!?」

 大介の視線の先にあったものは、魔王城正面の壁に貼り付けられた横断幕。そこにはこう書かれていた。

 『風雲!魔王城』

 「勇者様と魔王の戦いは真剣勝負であるが、他の魔族にとってはレクリエーションを兼ねているらしいのである。多少の茶目っ気は出してくるかもしれないのである。」

 賢者ラウルの豆知識は、大介にとって何の慰めにもならなかった。

 「いや、あれ絶対に過去の勇者が絡んでいるだろう!」

 横断幕は、この世界の言葉ではなく、漢字で書かれていた。


 「よく来た、勇者とその仲間達よ!」

 魔王城の門の前には、やたらとガタイのいい魔族が立っていた。

 「我は魔王城の門番なり。魔王城に入りたくば、我を倒して行くがいい。この――」

 そこで魔族は背後から何やら取り出して、眼前に置いた。

 「――アームレスリングでな!」

 「腕相撲かよ!」

 思わず突っ込む大介を横に、賢者ラウルが前に出た。

 「面白いのである。ここは、儂が相手をするのである。」

 唐突に勝負が始まった。賢者ラウルは進み出ると先ほど魔族が置いた台の上に肘を乗せる。そして、同じく台上に肘を乗せた魔族の手をしっかりと握った。

 「ム、これは!」

 「ほお、なかなかであるな!」

 それだけで相手の実力を感じ取ったのか、感嘆の声を上げる両者。

 ――Ready, Go!

 合図とともに、両名渾身の力を込めた。

 自分よりも一回り体の大きな魔族に対して、賢者ラウルは一歩も引けを取らない。力は拮抗し、二本の腕は全く動かない。

 いや、賢者ラウルの腕力が僅かに上回った。魔族の腕をじりじりと押し込み始める。

 だが、それでも魔族は余裕を崩さない。

 「なかなかやるな、人間。だが、我はまだ余力を残している。『剛力(ストロング)』!」

 魔族が自身に補助魔法をかける。すると、賢者ラウルに押されていた魔族の腕が、逆に押し返し始めた。

 「魔法もありかよ?」

 「魔族との勝負は、特に禁止されていなければ魔法も武器も何でもありらしい。」

 思わず突っ込む大介に、魔族との協議の内容をある程度聞いているアルベルト王子が答える。今回の場合、禁止されていないので魔法はOKだった。

 「なかなかやるであるな。しかし、その程度儂にもできるのである。『身体強化(フィジカルブースト)』十倍!」

 ――ダン!

 「のわぁ~」

 一瞬にして魔族の腕が台に叩きつけられ、勢い余って魔族がひっくり返った。

 「どれほど余力が残っていようとも、一瞬で片を付ければそれで終わりである。」

 賢者ラウルもまた、優太のやった短時間だけ高出力を出す身体強化(フィジカルブースト)をものにしていた。


 「今のうちに少し説明しておくよ。」

 門番を突破し、魔王城に突入したところでアルベルト王子が今回の戦いについての説明を始めた。

 「魔王城では順路に従って進み、各部屋にいる魔族と勝負することになる。」

 今進んでいる廊下にも順路を示す矢印や、通路の一部を塞いだ場所が見受けられた。おそらく魔王の玉座までの一本道が作られているのだろう。

 「勝負の内容はその部屋に行くまで分からない。基本的に誰が勝負を受けてもいいので、内容を聞いて得意な人が勝負を受けると良い。」

 先ほどの門番との勝負のように、内容を聞いてから人選すればよいらしい。

 「魔族との勝負に負けても何の問題もないけれど、勝負を受けた者は勝つか相手の魔族が飽きるまでその部屋で勝負を続けることになる。」

 世界の危機として重要なことはあくまで魔王との戦いであり、魔族との勝負はそこに影響しない。ただし、勝負に負けるとそこで足止めされることになる。

 一度負けた勝負に再戦して勝てるとは限らないし、相手が飽きるまでというのも何時になるか分からない。勝負に負けた者は実質的にリタイアすると考えた方が良さそうであった。

 「勝負に負けるとそこで足止めされるから、ユウタとダイスケ殿は絶対に勝負を受けないで欲しい。魔族との勝負は全て我々が引き受ける。」

 今回、兵士達の役割は大介と優太を魔王の下まで送り届けることである。たとえ、大介や優太ならば勝てる勝負であっても、この二人に勝負を受けさせることはできなかった。

 「各部屋は、勝敗に関わらず一勝負終えれば先に進めるそうだ。負けた者はそのまま置いていくので、そのつもりでいるように。」

 最後のは兵士達に向けた言葉だ。魔族との勝負に負けると、「ここは俺任せて先へ行け!」をやることになる。それで死ぬわけでもないので、遠慮なく置いていかれるのだ。

 大勢の兵士を連れて来たのは、勝負に負けて置き去りにされる者が出ても先に進むためであった。


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