表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
聖女無双  作者: 水無月 黒
第三章 飛蝗

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

74/96

飛蝗防衛戦1

 「飛蝗の第三波、完全に沈黙しました!」

 飛蝗の襲来も既に三度目。全て低威力・広範囲の魔法で効率よく焼き払って行った。

 魔導士の魔力も十分に残っており、余裕たっぷりであった。しかし、……

 「この作戦も、今回で終わりだな。」

 エドウィン魔導士長が断じる理由は、目の前にあった。

 「防風林、もうじき燃え尽きますね。」

 エルハーベスタの魔導士が言う。この辺りの者だったのか、心なし寂しそうだった。

 今回の作戦は、三方が海で囲まれたペリアーノ岬の大陸側を、防風林を燃やした炎で封じることで飛蝗を閉じ込めていた。

 飛蝗の餌にならないように、時々魔法も追加して最後まで燃やしているが、もうじき完全に燃え尽きて火が消える。

 そうなると、威力の弱い魔法だけでは殲滅しきれず、一部の飛蝗は防風林のあった場所を越えてこちら側へやって来るだろう。

 実は、防風林を燃やした炎の代わりに優太のモンスター除けの結界を利用すれば飛蝗の足止めは可能だ。最初から結界を使用すれば、防風林を燃やす必要もなかった。しかし、その案は採用されなかった。

 「マイグラトリアは女王とその子の間に魔力的な繋がりがあるらしいのである。あまり完璧に封殺すると、突破は不可能とみて、どうにかして別な場所に上陸する恐れがあるのである。」

 船で出発する前に残した賢者ラウルの言葉である。

 ペリアーノ岬は、飛蝗がやって来れるギリギリの場所だと考えられていたが、それだけに別の場所から上陸するとなると何処に向かうか予想が付かなかった。

 なるべく長くペリアーノ岬に飛蝗を引き付けるために、次第に勢いが低下する防風林の炎を利用することにしたのだ。

 もちろん、防風林の炎が消えた後の作戦も考えられている。


 「飛蝗の第四波、来ました!」

 次にやって来た飛蝗もペリアーノ岬に上陸した。

 「『火絨毯(ファイアーカーペット)』!」

 これに対して、魔導士達は広範囲の火魔法で迎撃する。ここまでは今までと同じだ。少しでも飛蝗を減らし、その死骸を再利用されないために燃やす。

 しかし、既にほとんど燃え尽きて下火になっている防風林の炎では、もはや飛蝗の侵攻を止めることができない。

 炎を飛び越えて、飛蝗が一斉に押し寄せてきた。その場に留まれは焼け死ぬだけとあって、飛蝗も必死だった。

 いまだ燻る防風林の焼け跡を飛び越え、低く飛び、あるいは地面を跳ね、飛蝗の大群が押し寄せてくる。大軍ではあるが、これでもかなり数は絞られている。ペリアーノ岬の先の方では、今も飛来した飛蝗の多くを焼き続けている。

 大地を焼く炎を逃れ、餌を求めて大陸の奥へと向かう飛蝗の大群が、突然その動きを変えた。横に広がって向かってきていた飛蝗の群れが、一ヵ所に集まるようにしてこちらへ向かってくる。

 これは、飛蝗の意図した動きではない。予め優太が張っておいたモンスター除けの結界の効果である。海を越えて飛び続けて疲弊した飛蝗が、餌を食べることも休む暇さえも与えられずに更なる移動を強いられているのである。小さめの結界でも飛び越えられず、結界の無い方へと誘導されていく。

 飛蝗の大群も、一ヵ所に集めてしまえば後は――

 「『火球(ファイアーボール)』!」

 まとめて焼き払うことができる。ただし、この戦法にも欠点はある。

 まず、一ヵ所に集めるといっても完全に閉じ込めているわけではないので、どうしても効率は悪くなる。長期戦になれば魔力切れを起こす恐れがあった。

 それに、一匹も逃さず焼き尽くそうと魔法を連打すれば、それこそすぐに魔力が尽きてしまう。攻撃の合間に討ち洩らした飛蝗が突破してくるのは想定内のことだった。

 「よし、お前ら出番だぞ! 一匹たりともここを通すな!」

 ここまで見ているだけだった兵士達に、セルジオ将軍が発破をかける。

 ようやく出番のやってきた兵士達が、インセクトキラーを手に前に出た。


 インセクトキラーというマジックアイテムの形状を一言で説明するならば、『捕虫網』である。

 エルソルディアとエルハーベスタの精鋭たちが、夏休みの小学生よろしく、捕虫網を手に整然と並んでいるのである。

 絵面的にはアレだが、笑ってはいけない。非常にまじめで重要な場面なのである。優太だって必死になって笑いを堪えたのだ。

 それに、インセクトキラーは単なる捕虫網ではない。マジックアイテムなのである。網に近付いた虫を自動で吸い込む機能と、網に捕らえた虫を焼き殺す機能が備わっている。また、うっかり人の頭に網をかぶせてしまっても、モンスター以外には攻撃しない安全設計である。

 この手のマジックアイテムは使用者の魔力を使用して動作する。インセクトキラーが精鋭に優先的に回されたのは、数に限りがあるということもあるが、体力魔力に優れた精鋭の兵士に使用させた方がその威力を発揮できるからという理由もあった。

 「来たぞ、総員かかれ!!」

 「「「ウオー!!」」」

 精鋭の兵士達は、やって来た飛蝗に向けて鬼気迫る勢いで捕虫網(インセクトキラー)を振り回し始めた。


 この日、飛蝗の襲来は第七派まで続き、全てを凌ぎ切って日が暮れた。

 「この辺りは夜になると風向きが変わる。今日はもう飛蝗は来ないだろう。最低限の見張りを残して、魔力の消耗の激しい魔導士から休むように。」

 陸から海側に風向きが変わったことを確認し、セルジオ将軍は指示を出した。

 飛蝗が海を渡るために風を利用していることは判明していた。逆風になる夜間に海を渡ってくる可能性は低かった。

 陸上と洋上で最低限の見張りは残すが、翌日に備えてさっさと休むことになった。特に魔導士は魔力を回復する必要がある。

 こうして、飛蝗との戦いの初日は過ぎて行った。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ