検証中
会議が終わった後、優太達は外へと出てきていた。魔物除けの結界を試す為である。
エルハーベスタから提供されたのは、郊外にある広い空き地。普段は軍が演習に使用している場所だそうだ。
「魔法の発動体にはこれを使うと良いサ。ある程度魔力を貯める効果があるヨ。」
優太はアッカーマン教授から短剣のような形をした発動体を受け取ると、そのまま地面に突き立てた。
「『対魔物結界』!」
優太はそのまま気合を込めて魔法を発動した。
簡易封屍結界と異なり、魔法の発動体を中心に球形に展開する結界であった。相手が空を飛ぶ昆虫型のモンスターであることを考えればこの方が都合が良いだろう。
「おおっ!!」
ギャラリーが湧きたつ。優太の張った結界は、半径一キロメートルを超えていた。『死者の谷』の大結界よりも小さいが、あちらは地脈の魔力を利用したものである。聖女とは言え、一人の人間の手による結界としては最大級のものだろう。
「さすがは聖女様だネ。これほどの結界を張れるとは思わなかったヨ。」
「でも、これだと一時間くらいしか持たないぞ。」
感心するアッカーマン教授に、優太は魔法を使ってみた所感を述べる。
「まあ、そこも含めて検証だネ。大きさを変えて幾つか結界を張ってみてくれないかイ。」
アッカーマン教授の要望に従って、さらにいくつかの結界を張って見せる優太。聖女の魔力は底が知れなかった。
一通り結界を張り終えると、優太達は暇になった。
結界の傍では、アッカーマン教授とその助手達が何やら色々と調べていた。ついでに、賢者ラウルの一行もそこに加わっていた。
まだ何か追加で頼まれるかもしれないので、優太は近くで待機していた。
「そういえば、今回は人手がいるんだったな。久しぶりにあいつも呼ぶか。」
優太がそう呟くと、優太のすぐ前の地面に光り輝く魔法陣が現れた。
――聖獣召喚陣
それは魔法ではない。聖女と魂の契約で結ばれた聖獣が顕現する、その前兆現象である。
「何やってるんだ……、おおっ、ユニコーン!?」
優太が何やら始めたことに気付き、様子を見に来た大介が突如現れた聖獣に驚く。
「そういえば、聖獣と契約したって言ってたっけ、こいつがそうなのか?」
大介も、優太が聖獣と契約したことは聞いていたが、実物を見るのは初めてであった。
「そうだ、これが俺の相棒の聖獣ユニコーン。名前はオパール。」
「……『リボンの騎士』かよ! 色々と間違っているぞ!!」
「おっ、よく知ってるね、古い作品なのに。しかもあれ、少女漫画だぞ。」
「手塚治虫全集はオレの愛読書だ!」
まあ、優太のネーミングセンスが酷いことは脇に置くとして、聖獣ユニコーンは有能だ。
その背に聖女を乗せれは、そこいらの名馬よりも速く長く走ることができる。
戦闘力もそれなりに高く、雑魚モンスターなど軽く蹴散らす聖女の護衛となる。
聖女の魔法の補助を行うことができ、魔法の効果を高めたり、難しい魔法の制御を一部肩代わりしたりもできる。
ユニコーン単体でもいくつかの魔法を使用することができ、簡単な回復魔法ならば聖女の代わりに行うことができる。
「で、そんなに優秀な相棒なのに、今まで呼ばなかったのはどうしてだ?」
「いや、こいつに乗るより自分で走った方が速いし、護衛も必要ないし、手伝ってもらうほど大変な魔法を使う機会もなかったし……」
優太が優秀過ぎたのが理由であった。決して作者が忘れていたとか、そういうことではない。
「扱い酷いな、おい。」
思わずユニコーンに同情する大介。
「今回は人手は多ければ多いほどいいらしいんで呼んでみた。」
実際、今回は強力な助っ人になるだろう。優太と手分けして飛蝗の撃退から怪我人の治療までこなし、高い機動力も持つのだ。
「それに、修行して新たな力を手に入れたらしいからな。」
このユニコーン、あまりに優太からのお呼びがかからないため、必死になって修行していたらしい。相方が優秀過ぎるというのも考え物である。
「それじゃあ、新たな力とやらのお披露目といこうか。修行の成果、見せてくれ!」
「ヒヒーン!」
優太の言葉に、ユニコーンは一声高く嘶くと、魔法を発動した。
「これは、帯電しているのか?」
ユニコーンは全身に雷のような光を纏っていた。そして――
「うわっ、速い!」
ユニコーンは、瞬きするほどの一瞬で百メートルほど一気に進んで見せた。一筋の光となって進むその姿は、まるで稲妻である。
「雷光のユニコーンといったところか。たいしたものだ。これなら雷撃で飛蝗を焼くこともできるだろうし、かなりの戦力になるな。」
「でも、あれに乗ったら感電するんじゃないのか?」
「俺は乗らないから大丈夫。」
優太よりも速くなったのに、やはり騎乗には利用されないユニコーンであった。
ユニコーンの名前ネタは、序章でユニコーンを出した時から考えていました。
ただ、突っ込めるのが大介だけなので、伏たままになっていました。
本当はインターミッションに入れておきたかったのですが、この小ネタだけで一話作れませんでした。
今回、どうにか本編にユニコーンの活躍の余地ができたので、ついでなので名前ネタも混ぜておきました。




