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聖女無双  作者: 水無月 黒
第三章 飛蝗

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美食の国

 「いやー、正直異世界舐めてたわ。」

 目の前の光景を見て、優太が呟く。

 勇者一行は特に問題もなくエルハーベスタへと到着していた。そして現在、エルハーベスタから歓待を受けている所である。とはいえ、国を挙げての歓迎などしている場合ではないので、豪華な食事によるおもてなしを受けている所だった。

 「全くだ。まさか、カレーライスを食べられるとは思はなかった。」

 大介も優太に同意する。

 食の大国だけあって、エルハーベスタの料理は豪華だった。というか、日本で見かけるような料理が並んでいた。

 「海が近いせいか刺身はあるし、天ぷらも唐揚げもカツ丼もあったな。どんだけ日本の食文化が入っているんだ?」

 「そういえば、エルソルディアでもマヨネーズは普通にあったし、あっちはパン食だけど頼めばご飯も普通に出てきた。オレ達、この世界で食事に困ったことなかったよな。」

 「そうだな。王都にはラーメン屋もあったぞ。」

 「その話、詳しく!」

 「帰ったら案内しよう。」

 王城から城下に出ることの少なかった大介と異なり、優太の方は結構町に出歩いていた。その分、城下町の店等に詳しかった。

 そうこうするうちに、ケーキバイキングにスイーツを取りに行っていた女性陣が戻って来た。

 「……アイスもプリンもチョコもパフェもあるな。」

 「ここにある料理やスイーツは、聖王家伝統のレシピだそうですわ。」

 マリエラ王女も王族なので、他国の王族の事情にもある程度通じていた。

 「この日本でもおなじみの料理の数々、初代聖王の執念を感じるなぁ。この世界で日本の知識を利用した知識チートは無理な気がする。」

 正確に言えば、初代聖王だけでなく、神代五聖全員の執念の賜物である。誰だって美味いものを食いたいし、故郷の味は忘れられない。

 特に五聖には知識チートの権化である大賢者と、ものづくりの達人である大魔導士がいた。この二人が頑張りまくったのだ。

 大賢者はこの世界と元の世界の知識を総動員して、元の世界と同じまたは代用になる動植物を見つけ出し、入手できる食材で可能な料理のレシピを次々に開発して行った。

 大魔導士は一切の自重を捨てて、農耕器具から料理道具まで、普通の道具もマジックアイテムも関係なく便利なものを作成してして行った。

 そして、初代聖王は大賢者のレシピに必要な食材を、大魔導士の作った道具で栽培し、あるいは家畜を飼育し、時には海に出て漁をして、確保して行った。それは、国民を巻き込んだ一大事業となった。

 美食の国、エルハーベスタの原点はここにあった。

 なお食べ物関係だけでなく、日常生活のちょっとした快適さに関しても大賢者と大魔導士は自重を捨てていた。その結果、五聖国の主要都市では上下水道完備で水洗トイレもあるし、首都近辺では夜には街灯が灯る。便利な日用品やボードゲームなどの娯楽品も普及していた。

 五聖亡き後は世界の危機や戦争などで文化や技術のレベルが後退している面もあるが、簡単に作れるものはちゃんと残っているし、資料をもとに失われた技術を再現する試みも行われている。単なる一般人が、現代日本の日常的な知識を活用して知識チートで成り上がる、というのはこの世界ではまず無理な話である。

 「食材が高価になるため一般の食堂では扱っていませんが、言って下さればだいたいのメニューはエルソルディアの王城でもお出しできますよ。」

 聖王家伝統のレシピとは言っても、秘匿されているわけではない。ただ、エルハーベスタでないと簡単に手に入らない食材や調味料もあるため割高な料理になってしまうのである。

 「日本の大衆料理が高級料理になるわけか。まあ、特別な時にでもお願いするか。」

 勇太や大介、特にこの世界に残留するつもりの大介にとっては、多少高価でも日本と同じようなものが食べられるというだけで幸いであった。


 「お待たせしたネ、勇者様、聖女様。」

 「おお、さすがはエルハーベスタ。豪華な食事であるな。」

 アッカーマン教授と賢者ラウルもやって来て、さっそく食事を取りに行った。ここの食事はビュッフェ形式になっていた。

 「通信機の設置はもう終わったのか?」

 早速食べ始めたアッカーマン教授に優太が聞く。アッカーマン教授は通信具の親機を設置するために別行動していたのだった。

 「重要な部分は終わったから、あとは助手達に任せてきたヨ。」

 残りの作業を助手達に押し付けて、先に食べ始めたわけである。どこの世界でも割を食うのは下っ端である。

 「儂は遠距離用の通信具で大図書館と通信できることを確認しただけである。うむ、やはり本場の唐揚げはうまいであるな。」

 賢者ラウルは、エルフィロソフィアの大図書館と直接連絡を取り合うための特殊な通信用のマジックアイテムを用意していた。これもアッカーマン教授の作品で、通常の通信具では不可能な、エルハーベスタからエルフィロソフィアまでの長距離通信を可能とするものだった。

 通信具の親機には。エルマギカで使用したものより更に改良が加えられており、携帯用の通信具からの通信内容を自動的に別の通信具へと転送する機能が追加されていた。これを利用して、携帯用の通信具からエルフィロソフィアの大図書館と通信できるシステムを構築しているのだが、その最終的な確認は通信具の親機が動いてからになる。

 そこで、賢者ラウルも後を助手達に任せて食べに来たのであった。こちらでも下っ端の助手達が割を食っているわけだが、食事会が終われば世界の危機への対策会議が始まり、アッカーマン教授と賢者ラウルは出席しないわけにはいかないので仕方のないことだった。


 やがてアルベルト王子もあらわれた。アルベルト王子はエルソルディアの代表として、エルハーベスタの王族に挨拶に出向いていた。

 そして、アルベルト王子の後ろから更に二人。

 「勇者様、聖女様、はじめまして。エルハーベスタの皇太子、フィリップ=パント=エルハーベスタと申します。こちらは我が国の将軍のセルジオ=フラゴメーニです。ああっ、そのままお食事を続けてください。話は食べ終わってからにしましょう。」

 会議が始まったのは、その三十分後であった。


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