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聖女無双  作者: 水無月 黒
第三章 飛蝗

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出立

 優太達は、エルハーベスタへ向かうことになった。

 今回エルハーベスタへと赴くのは、まずはエルソルディア王国軍から五百名。これは、エルハーベスタからの正式な要請に基づいた派兵である。

 前回、エルマギカのドラゴンゾンビの時には、北方山脈を越えて大人数を送り込むことは難しいという事情があった。また、ドラゴンゾンビの毒のこともあり、大軍で攻めることは難しかった。そういう理由があって他国からの援軍は見送られたのである。

 しかし、今回の第三の危機はエルハーベスタの広大な農地を守る必要があり、相手も飛蝗――小さな昆虫型のモンスターの大群である。人手はいくらあっても足りなかった。

 そして、この派兵には政治的な意味合いもあった。

 エルハーベスタで発生する第三の危機に対しては、エルソルディア以外にも多くの国が協力を打診していた。それは単なる善意ではない。世界の危機を乗り越えたとしても、エルハーベスタが被害を受け、食糧の生産量が減少する危険があった。食糧をエルハーベスタに依存している国は、世界の危機への対処に貢献したことを盾に、自国が輸入する分の食糧を優先的に供給させようと目論んでいるのだ。

 エルハーベスタとしても、後々ごねられると面倒なので、大国エルソルディアの軍を受け入れることでバランスを取っているのである。

 軍事大国であり、世界の危機に対す主導国であるエルソルディアを超えるほどの貢献をすることは、小国の軍ではまず無理だ。そして、平素から食糧の備蓄を怠らないエルソルディアが、食糧の輸出減や値上がりを容認すれば、他国としてもごね続けることは難しくなる。

 エルソルディアとしても、その分発言力が増し、世界の危機への対処がやりやすくなるため文句はないのだ。


 さて、エルソルディアの国軍の他は、だいたいいつものメンバーである。

 勇者大介と聖女優太。この二人は外せない。

 勇者の随員として、マリエラ王女とその侍女のリコリス。

 聖女の随員としてアルベルト王子。優太専属メイドのエリザベス。

 勇者召喚の儀式を終えた、アラン神殿長とエドウィン魔導士長。

 王宮騎士団から二個小隊二十名とそれを率いるユージン騎士団長及びハンス副団長。

 王宮騎士団は国軍とは別口で、前回と同様に要人警護が主要な任務である。

 そして――

 「ばっちり、飛蝗対策のマジックアイテムを開発してきたヨ。」

 「今回は儂もエルフィロソフィアの大図書館と直接連絡を付けられるようにしてきたのである。現地での調査は任せるのである。」

 エルマギカからはアッカーマン教授が、エルフィロソフィアからは賢者ラウルが、それぞれの助手を引き連れて参加していた。

 北方山脈を越えて軍を派遣することが難しいエルマギカとエルフィロソフィアは、代わりにこの二人を派遣したのだった。

 エルマギカやエルフィロソフィアから北方山脈を越えてエルハーベスタへ行く場合、エルソルディアはその通り道となる。なので、そのまま勇者と聖女の一行に合流して一緒に行くことにしたのだ。


 「出立式は中止にした。創造神教のネットワークを利用していることも判明したから、一時的に止めてもらった。これでこちらの動きが破滅的カルトに洩れる危険はだいぶ減ったはずだ。」

 破滅的カルト対策を行っていたロベルト王子がアルベルト王子に状況を説明していた。

 ロベルト王子の暗躍もあって、王都で活動していた破滅的カルトの実行部隊はほぼ一掃できた。だが、直接表には出ず、情報だけ流して指示をする黒幕的な人物はまだ残っていると考えられた。

 次の懸念は、エルハーベスタまでの道中に勇者や聖女が襲撃されることである。もしも王都内に潜む破滅的カルトのメンバーが、一行の出発日時やエルハーベスタまでのルートの情報を入手して国外の勢力に情報を流したら、襲撃の危険性が増大してしまう。

 出立式を中止したのは、正確な出発の日時を公表しないためであった。国内に破滅的カルトの実行部隊が残っていた場合に襲撃される危険を減らす意味もある。

 また、創造神教系の破滅的カルトは、創造神教内の正規のネットワークを使用し、暗号や特殊なインクを使用した文書をやり取りすることで連絡を取り合っていることが判明していた。そこで、創造神教に依頼して、文書をやり取りするネットワークを一時的に停止してもらっていた。

 王城の中にまで情報源を持っていた創造神教系の破滅的カルトでも、ここまですれば簡単には情報を流すことはできないだろう。

 「往きはどこの国でも必死になって破滅的カルトを抑え込むだろう。だが油断するなよ。連中の目的からして、()()()()()()()()()()()第四の危機に賭けるより、第三の危機の前に勇者様や聖女様を始末したいはずだ。」

 破滅的カルトと呼ばれる集団の思想や目的はそれぞれだが、その手段はだいたい同じである。つまり、勇者や聖女を殺害して世界の危機への対応を失敗させること。だから、世界の危機を終わらせた後の帰路よりも、これから世界の危機へと向かう往路で仕掛けたいはずだった。

 「分かっています、ロブ兄さん。軍をいくつかに分けて別のルートでエルハーベスタへ向かわせます。それぞれに勇者様と聖女様がいるように偽装すれば、狙いを絞り切れないでしょう。」

 「それでも偶然鉢合わせして襲われる可能性はあるから油断はできないが……まあ、事前に取れる対策はそのくらいか。それから、帰りはこちらの情報封鎖の効果も薄れる。諦めの悪い連中が襲ってくるぞ。」

 「帰りはエルハーベスタの者と相談ですね。場合によってはエルソルディアからも偽装情報を流してもらいますから、その時はお願いします。」

 「そこは任せておけ。だが、忘れるなよ。帰りは破滅的カルトだけではなく、反エルソルディアの過激派も狙ってくるはずだ。アルやマリーも狙われるからな。」

 実のところ、ロベルト王子の最大の心配事は、弟と妹の身の安全だったりする。


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