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聖女無双  作者: 水無月 黒
断章 創造神教

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認定式

 世界に危機に際して遣わされる勇者や聖女、それがこの世界の者の中から選ばれ力を与えられた場合は、全世界に対して勇者や聖女の募集を行う。そして、集まった数多の候補者の中から、真の勇者、真の聖女を見つけ出す。

 エルソルディア王国によって間違いなく勇者あるいは聖女であることの確認が取れたことを内外に示し、また新しく誕生した勇者や聖女を一般にお披露目するための行事が、認定式と呼ばれる式典である。

 なお、勇者や聖女の使命を与えることができるのは女神イシスのみであり、国王だろうが教皇だろうが人の手で勝手に任ずることはできない。だから任命式ではなく認定式と呼ばれている。

 今回のように別の世界から召喚された場合は、候補者の中から選定する作業は無いのだが、勇者や聖女がちゃんと召喚されたことを公式に周知するための式典として認定式が行われる。

 式典の内容は、国王が勇者と聖女を認める宣言を行い、国としての全面的な支援を約束したうえで世界の危機への対処を依頼するというもの。式典自体は手早く終わった。世界の危機が始まっている中、無駄に大げさで時間のかかる儀式を行うことはしない。

 式典には各国の代表も参列しているが、エルソルディアに駐在している外交官が多かった。遠方の国から要人がやって来るのを待っていては時間がかかりすぎるので、そのあたりはどの国も割り切っていた。世界的な非常事態の最中なので重要な式典であっても予定がころころ変わるのだ。気にしてはいられない。

 最初の予定では、勇者と聖女が揃ったところで、『死者の谷』へと向かう出立式とまとめて行うことになっていた。しかし、勇者の召喚前に第一の危機が始まってしまったことと、優太を聖女として発表して大丈夫かという問題があったために見送られた。

 第二の危機では、アルベルト王子の発案で出発が早まったことと、北方山脈を越える道程で襲撃を受けると危険なため防犯上の理由からも出立式ごと見送られた。

 そして第三の危機に向けての出立式に合わせて計画されていた認定式が、ロベルト王子の提案で前倒しになった。

 はたから見ればずいぶんとバタバタしていた。これでは遠方の国の要人がスケジュールを合わせることは難しい。

 時代によっては、この手の式典を全て世界の危機が終わった後に回したこともあったらしい。ただ、世界の危機が終わったからと言って落ち着いてイベントをこなせるかと言うとそうとも限らない。状況によっては各国に大きな傷跡を残し、復興で手いっぱいと言うこともあるのだ。


 「ふう、堅苦しい式典もやっと終わったな。」

 伸びをしながらそう言う優太。優太には堅苦しくて窮屈だったようだ。

 「でも、これからパレードだろ。オレはそっちの方が気が重いよ。」

 大介は、特訓の成果が試される時が来た。


 勇者と聖女を国民にお披露目するパレードは、認定式を行った王城から出発する。そして、王都ソレスをぐるっと一周して再び王都に戻って来て終了する。

 六頭の白馬に牽かれた特製の馬車には本日の主役が乗り込んでいた。

 先頭に勇者大介とマリエラ王女。その後ろに聖女優太とアルベルト王子。その後ろにはドレス姿のエリザベス嬢も控えている。

 エリザベス嬢の立場はちょっと微妙だ。優太の恋人に納まっていれば、アルベルト王子の代わりに優太の隣に立っていたのだが、そのような事実はない。

 だが、優太の虫よけである以上は側にいる必要がある。エリザベス嬢はそこに立っているだけで、優太にちょっかいを出せば宰相に睨まれる、というメッセージになっているのである。


 馬車が城門を出て、大通りに入ると歓声に包まれた。

 「きゃぁ~、勇者様、可愛い~~!」

 いきなりこれであった。事情を知らない一般大衆は全く悪気の無いまま大介の精神を抉る言葉をかけて来る。しかし大介は表情を変えないまま周囲の大衆に手を振った。特訓の成果か、やや引き攣った笑顔ながらも、切れることなく対応して見せた。

 大介の心情は別として、大衆の反応はおおむね好意的だった。マリエラ王女と恋仲になっていることも既に知れ渡っており、二人纏めて微笑ましい目で見られていた。

 「聖女様~!」

 勇太にも声がかかる。庶民への露出が皆無だった大介と異なり、優太を知るものは多い。優太が知らなくても相手が知っている。神殿では訓練も兼ねて病人怪我人の治療を行っていたのだ。優太に助けられたものも多い。

 優太は庶民に愛される聖女になっていた。


 華やかなパレードの裏で、人知れず攻防が繰り返されていた。

 「D地点、狙撃手を発見、拘束しました。」

 「A地点、現在のところ異常なし。引き続き監視を行います。」

 「E地点、不審人物を発見。尾行を付けました。」

 ロベルト王子の元に次々と報告が入って来る。

 ロベルト王子はこのパレードを、そして優太と大介の二人を囮にして、破滅的カルトのメンバーを引きずり出そうとしていた。

 パレードのコースは予め周知してあった。また、警備状況についても優太と大介に伝えるという形で二人の周辺の人間にも知らせてあった。城内に情報源を持つ創造神教内の過激派には伝わっているだろう。

 そして、このパレードのコースと警備体制は一見万全に見えるけれども、いくつか意図的に隙が作られていた。例えば腕が良ければギリギリ弓か魔法で狙うことの出来値狙撃ポイントがノーマークだったり、数名程度ならば警備の兵に見つからずにかなり接近できる抜け道とかだ。

 そのような故意に作った隙には、パレードの警備とは別に諜報活動に長けた兵士に監視させていた。そこに現れる不審者が行動を起こす前に捕まえてしまおうという作戦である。

 創造神教の過激派は、破滅的カルトとしては人数が多い方だが、それでも実際に襲撃を行える実働部隊は限られているだろう。それらを片端から逮捕拘束して行けば当分派手な活動はできなくなるだろう。

 しかし、この作戦も完全無欠とは言えなかった。相手が警備の隙を突こうとせず、警備の兵ごと攻撃してきたら、裏方で動いているロベルト王子の手勢では対処できないことになる。

 もちろん正面から戦えば警備の兵士が遅れを取ることはないだろう。だが、破滅的カルトの恐ろしさは自滅覚悟の自爆テロを仕掛けて来ることにある。もしも相打ち覚悟で特攻を仕掛けて来たならば――

 「アル、マリー、その時はうまくやれよ。」


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