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聖女無双  作者: 水無月 黒
第二章 ドラゴンゾンビ

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ドラゴンゾンビ対策会議5

 アッカーマン教授からのドラゴンゾンビ撃退の知らせにより、一度退避した人々やドラゴンゾンビ出現地点から帰還したアルベルト王子達もアルムの村に戻ってきていた。途中で方向転換したドラゴンゾンビを見失う形になった優太と大介もそのままアルムの村へ戻ってきていた。

 アルムの村は守られたが、ドラゴンゾンビは野放しのままだった。早急に次の対策が必要だった。

 「今回、ドラゴンゾンビの猛毒は強力すぎて、アタシの作った避毒アミュレットでは防ぎきれなかった。すまなかった。」

 いきなり素直に謝罪して見せるアッカーマン教授だったが、言葉ほど悪いとは思っていなかった。自分が手を抜いたわけではなく、相手が悪すぎただけだ。ただ単に一言謝罪しておかないと、「反省の色が無い」などと無駄な言いがかりをつける輩が出て来るのでその対策である。普段傲慢なアッカーマン教授が素直に謝ると大概の人は驚いて絶句するので、その隙に話を進めてしまうのである。

 「改めて毒対策を考える上で、実際に治療に当たった聖女様の所感を聞かせてもらえないかナ。」

 「そうだな、毒自体は強いのから弱いのまで数十種類混ざったものという感じだった。そこに強酸、病原体、呪い、各種状態異常を引き起こす魔法毒が混ざって、さらに瘴気で強化されているといった感じだったな。」

 優太の言葉に驚愕する面々。毒と聞いて想像する範疇を超えていた。一方、アッカーマン教授は納得したように頷いていた。通常の毒対策で防げるようなものではなかったのだ。

 「それって、毒と言っていいのか?」

 思わず炸裂する勇者の突込み。神託、つまり神に突っ込む形になっているのだが、本人は気付いていない。

 「まあ、広い意味では毒だネ。神託では細かいところまで伝えきれなかったんだろうサ。」

 神託は受けた側の神官の知識を超える内容はなかなか伝わらない。そのため、神託を授かる能力のある神官は、なるべく広い範囲の知識を得るようにしている。だから、あまり専門的な深い知識までは求めることはせず、今回の場合はとにかく強力な毒としか伝わらなかったのだろう。

 「今回、簡易封屍結界のロープが切れたのは強酸の影響だろうネ。呪いと瘴気はマジックアイテムにも干渉するから、結界具にも不具合が出るかもしれないネ。アタシのゴーレムも動作不良を起こしていたヨ。」

 「それで、防ぐことはできるのでしょうか?」

 アルベルト王子も毒を防げない可能性を考えていなかったのは同じなので、アッカーマン教授を責める気はない。ただこれからの問題として、如何にして猛毒を防ぐかが重要であった。

 「一つや二つならともかく、全部をまとめて防ぐの難しいネ。できたとしても身動きも取れないほどでかくて重いものになるだろうネ。」

 全てまとめて防ぎ切った勇者の鎧や聖女の衣の方がとんでもない代物なのだ。アーティファクトというのは伊達ではない。

 「簡易封屍結界だけならば、ロープと結界具を聖女様に祝福してもらえばある程度持つだろうヨ。」

 「聖女様の結界術ならば結界の内側に毒を封じ込めることができるかもしれません。ただ結界の中には毒が残りますが。」

 アラン神殿長が補足する。聖女の使う神聖魔法に関しては、アラン神殿長は優太よりも詳しい。

 「すると、簡易封屍結界でドラゴンゾンビの移動を封じた後ユウタの結界で毒を閉じ込め、結界の外から魔法や弓矢で総攻撃をかける。弱ったところでダイスケ殿とユウタが入って止めを刺す。という作戦が妥当でしょうか。」

 ドラゴンゾンビに接近できるのが優太と大介のみとなると、立てられる作戦の幅が狭まってしまう。アルベルト王子も苦い顔だった。

 「いや、遠距離攻撃も気を付けた方がいい。ドラゴンゾンビに魔法を当てた時に、カウンターで呪いが返ってきた。」

 エドウィン魔導士長からさらに悪い情報が出てきた。今回ドラゴンゾンビに攻撃を当てた人間は、優太と大介とエドウィン魔導士長だけだった。

 「マジックアイテムで攻撃したゴーレムもダメージを受けていたネ。飛び道具でも同じだと思うヨ。」

 「その手の呪いの場合、結界でも防げない可能性が高いですね。」

 アッカーマン教授とアラン神殿長からも補足が入る。カウンター型の呪いの場合、「攻撃を当てた」という因果関係を介して作用するため、結界や物理的な遮蔽では防げないことが多いのだ。

 「呪いを受ける覚悟で遠距離攻撃するにしても、攻撃回数が制限されてしまうのか……。呪いを防ぐマジックアイテムは作れますか?」

 「今から作るよりも、聖女様に祝福してもらった方が早いネ。呪いの防御を優先に祝福すれば、それなりに効果はあるだろうサ。」

 前回の優太の行った祝福は毒対策を中心にしていた。だから、呪いに関しては効果が低かったのだ。


 「さて、最悪俺と大介君の二人だけでドラゴンゾンビを斃すとしても、問題はどうやって簡易封屍結界の中に封じ込めるかだな。」

 優太と大介のコンビならば、本当に二人だけでドラゴンゾンビを斃してしまいそうであったが、それはそれとしてドラゴンゾンビの移動を封じることは重要であった。

 これまでの行動を見る限り、ドラゴンゾンビは攻撃を受けると結構簡単に逃げ出すのである。接近戦が可能なのが優太と大介の二人だけでは、逃げないように足止めすることも難しい。

 簡易封屍結界の中に閉じ込めてしまえればよいのだが、動き回るドラゴンゾンビの周囲に簡易封屍結界を張るというのは困難であった。

 「ゴーレムと移動型の簡易封屍結界を使ってドラゴンゾンビを閉じ込めることはできませんか?」

 アルベルト王子は、アッカーマン教授がドラゴンゾンビを撃退した時の方法が使えないかと問う。優太がちょっと嫌な顔をしているがそれはこの際無視だ。

 「ちょっと無理だネ。アタシのゴーレムは前回のでほとんど使えなくなっちまったヨ。それに可動部の多いゴーレムは祝福をかけても毒にやられるだろうサ。ドラゴンゾンビを包囲するのは難しいネ。」

 前回の戦いでは風で押し返すことで毒を防いだが、ドラゴンゾンビを包囲しようとすると、その手は使えなかった。

 「せめてどこに行こうとしているのかが分かれば、罠として仕掛けることもできるのだが……」

 アルベルト王子が地図を睨みながら唸る。地図上にはドラゴンゾンビの移動経路が書き込まれていた。

 優太と大介以外は近寄れないため、ドラゴンゾンビの監視もままならなかった。しかし、移動経路を追跡するのは簡単だった。撒き散らされた毒が痕跡として残っていたからである。幸い、地面に残された毒程度ならば、避毒アミュレットと祝福された鎧で防ぐことができていた。

 そうして割と正確に判明したドラゴンゾンビの移動経路は、迷走していた。あちらこちらへ行ったり来たり、まるで方向性が無かった。おかげでいまだに住民が避難済みの地域に留まっているのだが、予測不能のドラゴンゾンビに遭遇して毒に中てられる兵士が何人も出ていた。

 「これでは、ドラゴンゾンビの行き先など予測のしようがないであるな。」

 人為的に方向転換させたのは、アッカーマン教授が撃退した一回のみ。他はどうしてそんな場所で方向転換するのか見当もつかなかった。

 「うーん、何を考えているんだろうネ。うーん、ン? ンン? ンンン!?」

 何かに気が付いたアッカーマン教授が、突然地図に線を書き込み始めた。ドラゴンゾンビの移動経路の中で長めに真直ぐな個所を延長する直線を引いていく。

 「これは!!」

 書き終わった地図を見てアルベルト王子が驚く。

 「結構はっきりと出たネ。」

 地図上には、アッカーマン教授が書き込んだ線が集中する場所が二ヵ所(・・・)、現れていた。

 「どちらに行こうか、迷っている? でも、どうして?」

 アルベルト王子がドラゴンゾンビの行動の原因を推測する。二つの目的地の間でフラフラしている状態のようだった。

 「ここは、竜峰であるな。」

 一方の地点は竜峰、ドラゴンゾンビが現れた場所の近辺に戻ろうとしていた。

 「こっちは、……確か、千年前にキメラを作った研究所があったあたりだネ。」

 もう一方は竜峰よりも東側、こちらも北方山脈の麓辺りだった。

 「そうか! ドラゴンゾンビの正体は聖竜を食ったキメラだったんだヨ! 生まれた場所へ帰ろうとしているのサ。」

 アッカーマン教授は得心が行ったという顔で言った。

 「帰巣本能ってやつか。でも、竜峰へ向かおうとするのはなぜだ?」

 だが、アッカーマン教授の言葉では半分しか説明できていなかった。皆を代表して優太が質問した。

 「そっちはキメラが再現した聖竜の目的地だヨ。格上の相手を再現したんだ、意識がそちらへ引っ張られてもおかしくないサ。」

 「つまり、ドラゴンゾンビの中では聖竜とキメラがいまだにせめぎ合っていると? それぞれの目的地は詳しく分かりますか?」

 とにかく、ドラゴンゾンビの目的地が二ヵ所まで絞り込めたと判断したアルベルト王子は、次の作戦を考え始めていた。

 「竜峰の中腹には、『竜の寝床』と呼ばれる場所があるのである。聖竜はよくその場所に座していたと言われているのである。」

 「千年前の研究所は更地になっているヨ。記録を調べてキメラに縁のありそうな物でもでも置いておけば、誘い込むことはできるだろうサ。」

 「よし、その二ヵ所に罠を張ろう!」

 賢者ラウルとアッカーマン教授の言葉に光明を見出したアルベルト王子が明るい顔で言う。

 その後、軍の参謀も交えて詳細な計画が詰められて行った。


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