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聖女無双  作者: 水無月 黒
第二章 ドラゴンゾンビ

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アルムの村防衛戦

 アルベルト王子からの連絡を受けて、アルムの村は一気に慌しくなった。

 最新鋭の対毒装備である避毒アミュレットでもドラゴンゾンビの猛毒に対抗できなかったという事実に、関係者は戦慄した。

 一般の兵ではドラゴンゾンビを足止めすることすらできない。優太がいない状態でドラゴンゾンビの毒を受けたら、命にかかわりかねなかった。

 竜峰の周囲に展開していた兵士にもドラゴンゾンビに近付かないように指示が出され、アルムの村は放棄して退避することが決まった。

 「じゃあ、そっちは任せたヨ。」

 「任せるのである。しかし、本当に残るのであるか?」

 賢者ラウルをまとめ役に、皆でアルムの村を脱出する中、アッカーマン教授とその助手はアルムの村に残っていた。

 「この村に集めた設備は、この先の戦いを考えると放棄するにはちょっと惜しいからネ。なに、危なくなったらとっとと逃げるサ。」

 最新の通信具の親機など、大き過ぎたりがっちりと固定していたりして持ち出せない機器や設備が幾つかある。簡易封屍結界すら破壊したドラゴンゾンビが暴れれば、それらは破壊される可能性は高かった。特に通信具が使えなくなるのは痛いだろう。

 しかし、基本的に非戦闘員であるアッカーマン教授が残ったところで何ができると言うのだろうか?

 賢者ラウルと別れたアッカーマン教授は、アッカーマン研究室アルム分室へと入って行った。そこには既に助手達がスタンバイしていた。

 「それじゃあ、おっぱじめるとしますカ。せっかく色々作って来たんだ、まとめて試させてもらうヨ。」

 アッカーマン教授は、とても楽しそうだった。


 アッカーマン研究室の横に併設された倉庫のシャッターが音を立てて開いていく。

 その中から出てきたのはゴーレム、身長二メートルほどのごつごつとしたロックゴーレムだった。

 そのゴーレムが十体、真直ぐ一直線にに整列した。

 アッカーマン教授と助手達は、十体のゴーレムの周りにロープを渡し、ロープに結界具を取り付けた。

 「簡易封屍結界起動! よし、ゴーレムを前進させナ!」

 アッカーマン教授が助手に指示を出すと、十体のゴーレムが簡易封屍結界ごと前進を始めた。

 「よし、うまく行ったネ。全く、聖女様は面白いことを考えるものだネ。」

 そう、これは『死者の谷』で優太がやって見せた移動型の簡易封屍結界をゴーレムと結界具で再現したものだった。

 もちろん、普通の結界具で簡易封屍結界を張ってもこのような真似はできない。このために、アッカーマン教授は新規に改良した結界具を開発していた。

 優太によって創造意欲を掻き立てられたのは、マリエラ王女のお仲間の腐女子だけではなかったのだ。……って、アッカーマン教授もマリエラ王女のお仲間の腐女子でした。

 アッカーマン教授はさらに二組のゴーレムの隊列に移動型簡易封屍結界を施していった。

 三組三十体の簡易封屍結界に覆われたゴーレムの他に、さらに十数体のゴーレムが出てきた。これらのゴーレムは簡易封屍結界で覆う代わりに、マジックアイテムを持たせた。

 準備が整ったところで、アッカーマン教授が号令をかける。

 「ゴーレム部隊、出撃!」

 アッカーマン教授が持ち込んだほぼ全てのゴーレムがアルムの村を出て、ドラゴンゾンビに向かって進んで行った。


 アッカーマン教授と助手達は全員アッカーマン研究室に戻ってきていた。村を出て行ったゴーレム達は、竜峰の周囲に設置した観測装置と同様に、通信用のマジックアイテムを内蔵してリモートで操作できるようになっていた。アルベルト王子達に渡した最新式の通信具は、観測機器やゴーレムの副産物である。

 「映像、出ます!」

 機材を操作していた助手の言葉と共に、研究室に設置された大きなスクリーンに映像が表示された。そこには村を出たゴーレムの後ろ姿が映っていた。

 この映像は、出撃したゴーレムの一体に持たせたマジックアイテムにより撮影されたものである。画像クリスタルの技術を応用し、記録はできない代わりに撮影した映像を通信具経由で遠距離に届けるように改造したものだった。

 アッカーマン研究室は、ずいぶんと未来に生きていた。

 「ドラゴンゾンビは真直ぐ北上して来る。ゴーレム隊はそのまま南下しナ!」

 竜峰の周囲に配備した五百名の兵士には、ドラゴンゾンビには近付かないように命令が下っている。同時に、ドラゴンゾンビを発見した場合は、距離を置いて観測し、その位置や様子を報告するようにと言われていた。

 情報の中継地点であるアルムの村には、ドラゴンゾンビの最新情報が集まっていた。アッカーマン教授はその最新情報を元にゴーレム部隊の進路を微調整しながら進めて行った。

 そしてついに、ドラゴンゾンビの姿を視界にとらえた。

 「見つけたヨ! 観測班、しっかり記録を取りナ!」

 画像を映し出すスクリーンが三枚に増えた。撮影用のマジックアイテムを装備したゴーレムは三体いた。このマジックアイテムでは記録は残せないため、スクリーンに映った映像を画像クリスタルで撮影するという方法を取っている。

 そして、ドラゴンゾンビとの距離がさらに近付いたところで作戦が開始された。

 「結界班、第一班は正面、第二班は右翼、第三班は左翼に展開! 急ぎナ!」

 アッカーマン教授の号令と共に、戦闘を進んでいたゴーレムの動きが変わった。まず簡易封屍結界に包まれたゴーレムの一組が、縦並びに進んでいたものを横並びに変更し、ドラゴンゾンビの前に立ちはだかる。残る二組もその左右に展開し、ドラゴンゾンビをここから先に進ませない構えである。

 ドラゴンゾンビは全く気にせずにゴーレムの壁へ向かって突き進み、そして止まった。どれほど大きくて力強くてもドラゴンゾンビはアンデッド、簡易封屍結界を超えることはできなかった。

 だが、ドラゴンゾンビ本体は止められても、周囲の毒までは止められない。このままでは、出現時と同じように簡易封屍結界を壊されてしまうだろう。当然そのことはアッカーマン教授も分かっている。

 「シルフ隊、毒を押し返しナ!」

 結界の背後化から、ゴーレムの構えたマジックアイテムが動作し、強い風を発生させてドラゴンゾンビの毒を押し返した。

 「ウンディーネ隊、洗浄開始!」

 続いて、別のゴーレムの持つマジックアイテムから水が放出され、結界を発生させているゴーレムとロープ、結界具に付着した毒を水洗いして落としていく。因みに、結界具は雨の日も安心の防水仕様である。

 「よし! サラマンダー隊、攻撃開始! 結界具を燃やすなヨ!」

 さらに別のゴーレムの持つマジックアイテムが、文字通り火を噴いた。簡易封屍結界越しにドラゴンゾンビに火を浴びせかける。

 ドラゴンゾンビは、先ほどのエドウィン魔導士長の強力な魔法を思い出したのか、炎を嫌がり右へ左へと避けようとする。しかし、避けるドラゴンゾンビを追いかけて執拗に火を浴びせて行った。

 ドラゴンゾンビが大きく回り込もうとしても、簡易封屍結界ごとゴーレムが移動してブロックし、火に包まれたままのドラゴンゾンビが接近してきても、簡易封屍結界のロープや結界具には水をかけて洗浄しているので火が燃え移ることもない。

 そうした、嫌がらせに近い攻防を繰り返すうちに、ついにドラゴンゾンビが根負けして、方向転換して逃げて行った。

 「ここまでだネ。他の町のある方には逃げなかったから良しとするカ。」

 どうにかドラゴンゾンビを撃退できたが、使用したマジックアイテムは魔力切れ寸前。簡易封屍結界を支えていたゴーレムには不具合が出始めていた。かなりぎりぎりの攻防であった。

 「観測班のゴーレムのみ回収、残りは破棄する。遠隔でとれるデータだけ全部回収しナ。毒のサンプルも回収したいところだけど、それは後だネ。」

 映像を送ってきたゴーレムには画像クリスタルも搭載していた。間近で撮影した鮮明な画像には多くの有用な情報が含まれているだろう。一方他のゴーレムはドラゴンゾンビに近いところで戦っていたため、毒に汚染されている可能性が高かった。せっかく守り抜いたアルムの村に不用意にドラゴンゾンビの猛毒を持ち込むのは危険だった。

 「さて、どうやって汚名を返上しようかネ。」

 たくさんのゴーレムとマジックアイテムを使い捨てて、どうにかドラゴンゾンビを追い払うことはできた。しかし、ドラゴンゾンビを斃す手段も、その猛毒を防ぐ手立てもなかった。

 アッカーマン教授はドラゴンゾンビを追い払ったことを各所に連絡すると、次の一手を考え始めた。


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