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聖女無双  作者: 水無月 黒
第二章 ドラゴンゾンビ

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フィールドワーク

 「ここが候補地の一つかい? 確かに瘴気が濃いネ。」

 「そうである。地形的にも聖竜の落ちた地下洞窟と繋がっている可能性が高く、近年瘴気の濃度も高まってきている。有力な候補地の一つである。」

 アッカーマン教授と賢者ラウルは、それぞれの助手と護衛の兵士を連れて、神託によりドラゴンゾンビが出現すると言われている地域に来ていた。エルマギカ、エルフィロソフィア共同の調査チームである。

 調査チームの主要な目的は、ドラゴンゾンビの詳細な出現位置を特定することである。神託で示された場所だけでは範囲が広すぎて、出現したドラゴンゾンビを見つけ出すだけで一苦労となってしまうのだ。

 ドラゴンゾンビの出現場所をピンポイントで特定することができれば、ドラゴンゾンビの出現を監視していち早く察知することができるし、予め罠等を仕掛けて戦いを有利に進めることもできるだろう。簡易封屍結界を張ってドラゴンゾンビをその場に封じ込めるためにも正確な位置を割り出しておきたかった。

 対策会議でも話題になったように、まき散らすと言われている毒対策が万全でない以上、被害を減らすためにはドラゴンゾンビの行動範囲を制限することは非常に重要であった。

 賢者ラウル率いるエルフィロソフィアのメンバーは、過去の資料からドラゴンゾンビの元となった聖竜の存在を見つけ出した。次に聖竜が死亡した地点を調べ、地下に埋もれたと分かると、周囲の地形などからドラゴンの死骸が埋もれた場所と繋がりそうな地点を絞り込んで行った。さらに瘴気の濃度や動植物、モンスターの分布の変化などの調査記録から、ドラゴンゾンビ出現の前兆となりそうな現象をピックアップして行った。

 そうして絞り込んで行った可能性の高い場所の中から、実際にドラゴンゾンビが出現する場所を特定するために実地調査に来たのであった。

 「ここであるな。」

 賢者ラウルが示したのは崖の一角であった。

 「洞窟の入り口が塞がった跡なのである。中の洞窟は、奥で聖竜の落ちた地下大空洞に繋がっていると思われるのである。」

 アッカーマン教授も助手達と共に設置した観測機器を操作していた。

 「確かにその辺りから瘴気が出ているネ。しかし、この程度の瘴気の濃度では生き物が死滅するほどではないネ。毒の方も漏れ出ているのかな?」

 賢者ラウルが指し示す洞窟跡周辺では草は枯れ、よく見ると虫や小動物の死骸が散在していた。

 「気分が悪くなったら、すぐに申し出るんだヨ!」

 アッカーマン教授は、その場の空気のサンプルを採取した後、注意事項を念押しする。今回の調査チームのメンバーは全員避毒アミュレットを身に付けていた。避毒アミュレットの実地テストも兼ねている。

 また、全員の装備に優太による祝福がかけられていた。兵士達は鎧に、アッカーマン教授は白衣に、助手達はローブや作業着にそれぞれ祝福がかかっていた。

 武器に祝福を施した場合はアンデッド特効で攻撃力が増加するが、防具に祝福を施した場合は瘴気や毒への耐性が向上するのである。避毒アミュレットと合わせれば、相当強力な瘴気や毒の中でも活動できると見込まれていた。

 今回は、祝福した装備を渡して着用したのではなく、着用した状態の装備に優太がまとめて祝福を施した。実はこの時、勢い余って下着までまとめて祝福してしまっていた。優太、やりすぎである。

 なお、賢者ラウルは祝福された鎧を装着していた。似合っているし、違和感無いので誰も突っ込まないが、何故賢者が鎧姿なのか? どうやら後で聖女の祝福した武具を調べてみるるつもりらしい。賢者ラウルは、優太が自ら祝福を行うと聞いて自前で鎧を用意したのだった。

 「それじゃあ、次の場所へ行ってみますカ。」

 一通り調査やら測定やらを終えた後、一部継続して観測するための観測装置を残して、調査チームは次の候補地へと移動した。


 「ここも、同じような感じだネ。」

 次の候補地も、洞窟が崩れて埋まったと思しき壁面から瘴気が滲み出ている場所であった。

 「もともと洞窟の多い場所であるからな。その上ドラゴンが暴れたのなら、崩れて埋まった洞窟も多いであろう。」

 そんなことを言い合いながらもてきぱきと調査は進められていった。

 「こっちは毒は出ていないようだネ。何が違うんだろうネ?」

 「完全に塞がっているか、空気の通る穴が開いているかという違いがありそうであるな。瘴気は薄い岩盤くらいなら通り抜けるのである。」

 「確かめるには掘り返すしかないけど、今無理だネ。いきなりドラゴンゾンビと御対面、はないだろうけど、悪影響を与える可能性は否定できないネ。」

 「しかし、厄介であるな。地中であちこちに繋がっているのであれば、この周囲を結界で覆っても穴を通じて別の場所へ逃げかねないである。」

 「そこは軍に任せるわサ。アタシらの役割は、作戦立てるための正しい情報を提供することだネ。」


 「ここは……他とはちょっと違うネ。本命かい?」

 いくつかの候補地を回って、最後にやった来たのは何もないまっ平らな場所だった。

 「本命と言えば本命であるな。千年前、聖竜が地の底に落ちた場所、あるいはその近傍の縦穴である。」

 「なるほど、瘴気が下から出ているネ。まあ、やることは一緒……だけどちょっと厄介だネ。周辺から地下の調査をやるゾ! 間違っても縦穴の上に乗るんじゃないヨ!」

 助手達に指示を出すアッカーマン教授。他の場所と異なり、縦穴の上の部分が土砂あるいは薄い岩盤で塞がっていると予想される。下手に刺激すると地面が陥没してそのまま地下深くに落ちかねなかった。調査員の命の危険だけでなく、世界の危機へにも影響を与えかねない。調査は慎重に行われた。

 「これでだいたいデータは揃ったネ。あとは持ち帰って分析するサ。」


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