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聖女無双  作者: 水無月 黒
第二章 ドラゴンゾンビ

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魔導列車2

 「空が暗いのです。もう夜ですか?」

 失神していたリコリスが目を覚ました。

 「……朝まで起こさないでください。三徹で原稿を仕上げていたので眠いのです……ムニャ……」

 マリエラ王女は寝ぼけていた。

 「まさか、異世界に来て無重力体験するとは思わなかった。」

 優太はシートの上をふわふわと漂っていた。

 そう、列車は宇宙にまで飛び出していた。

 この日、人類は有人宇宙飛行に成功した。列車で。

 と言っても高度は百キロ程度、ギリギリ宇宙と呼べる範囲だ。地球で言えば熱圏の辺りで薄いながらも大気は存在する。無重力なのも惑星の重力を振り切ったわけではなく、自由落下中だからである。

 「俺達ファンタジーの世界に来たんだよな。なんでいきなりSFになっているんだよ!」

 勇者の突込みが虚しく響く。いや、宇宙には出たけど、使っている技術は魔法関係だからまだファンタジーの範疇だよ、たぶん。

 「そもそも山を越えるだけなのに、どうして宇宙にまで出なきゃならないんだ!」

 「いや、研究中の飛空艇は北方山脈を超えるだけの高度が出せなくてネ、代わりに弾道飛行に挑戦したのサ。」

 大介の突込みに律儀に答えるアッカーマン教授。作成者としては話したくて仕方ないのだろう。

 エルマギカで研究されている『飛空艇』と言うのは、魔法を併用した飛行船のようなものだ。最高峰で八千メートルを超える北方山脈の上空まで上がる能力はない。むろん、高い山ばかりが壁のように立ちはだかっているわけではないが、山の近くは強く複雑な気流があり、風に弱い飛空艇で通り抜けるのは危険が大きかった。

 「それに、あまり低ところを飛ぶと風の影響を受けて軌道がブレるからかえって危ないのサ。ここまで高く上がれば、風を気にしなくていいから都合がいいのだヨ。なにしろ空気もほとんどないからネ。」

 意外とまともそうな理由があった。後付けかもしれないけど。

 「さて、くつろいでいるところ悪いけど、もうすぐ減速するからネ、しっかりとシートベルトを締めるんだヨ。」

 優太は慌ててシートに座ると、シートベルトを締めた。シートを離れて無重力を楽しんでいたのは優太だけだったので、これで準備完了だ。

 「魔力推進装置(エーテルスラスター)起動、列車を再突入体制に移行。軌道誤差修正。耐熱耐圧防御異常なし。魔法盾(マジックシールド)展開、減速を開始する。」

 減速が開始され、再び強いGが車内に戻り、全員シートに押し付けられた。列車は姿勢を制御して、先頭車両を上、後部の車両を下にして地上に向かって落下している。この状態で減速しているため、シートに押し付けられる方向にGが発生しているのだ。

 上昇する際に使用した補助推進装置は全て使い切って投棄しており、減速は空気抵抗を利用している。現在下を向いている後部車両のさらに下に魔法盾(マジックシールド)を展開して空気を受けていた。魔法盾(マジックシールド)の近辺では断熱圧縮で凄い高温になっているが、魔法盾(マジックシールド)は列車と直接接していないのでほとんど熱は伝わっていなかった。このあたり、魔法は便利である。地上からは、一筋の流星が見えているだろう。

 「ちゃんと着地できるんだろうな、これ?」

 大介がちょっぴり不安そうに呟く。空を飛ぶ乗り物は、だいたいが飛び上がる時よりも着地する時の方が危険が大きいものだ。

 「大丈夫、大丈夫。着地地点の半径百メートル以内に入れば、地上側の設備が受けてめてくれるから問題ないサ。任せておいて。」

 弾道飛行をやっておいて着地地点の誤差百メートルと言うのはかなり厳しそうに思える。だが、アッカーマン教授は現在位置値を細かく測定しながら、軌道のずれを巧みに修正して行った。全員の命はアッカーマン教授の手にゆだねられていた。エドウィン魔導士長がなんか嫌そうな顔をしている。

 「地上からの誘導波(ビーコン)を捕らえました。現時点で、誤差は許容範囲内です!」

 「地上施設との接続(リンク)確認しました。斥力場の展開を確認。何時でも行けます!」

 助手達からの報告に頷くと、アッカーマン教授は宣言する。

 「これより、最終減速に入る。総員、衝撃に備えるように。」

 アッカーマン教授の今までで一番真剣な声に、車内に緊張が走る。

 「魔法盾(マジックシールド)解除、軽量化(ライトウエイト)出力最大。最終減速装置、起動!」

 ガクンと一度強い衝撃が来た。窓の外を見ると、先頭車両の先端部分が開き、そこから射出されたパラシュートが大きく開いていた。

 実は、最初に使用していた魔法盾(マジックシールド)の方が空気を受ける面積自体は広いのだが、もともと攻撃を受け流す盾として開発された魔法なので、減速能力はパラシュートに劣るのだった。そこで、大気圏再突入時の高熱から車体を守る盾として魔法盾(マジックシールド)を使用し、ある程度速度が落ちてからパラシュートによる減速に切り替えるという二段構えになっていた。

 しかし、パラシュートで減速してもまだ速すぎた。いくら魔法で軽量化しても、二両分の列車をパラシュートで減速するには限度があった。さらに体勢も悪い。パラシュートにぶら下がる形で列車が縦になっていた。海上に着水するのならばともかく、このまま地面に突っ込めば列車はぺしゃんこに潰れてしまうだろう。

 そこで、最後の着地の問題を解決するために登場するのが地上の施設である。列車に搭載できなかった大型のマジックアイテムを駆使して力業で落ちて来る列車を受け止めるのだ。

 再び車内に衝撃が走る。地上施設発するの斥力場が列車を捕らえたのだ。

 「最終減速装置(パラシュート)投棄(パージ)。あとは任せたわよ。」

 ここまでくると、車内からできることは何もなかった。

 列車は落下速度を緩めていき、地上から十メートルくらいの高さで一旦停止、そこで垂直に立っていた車体をゆっくりと水平に倒していった。

 そして最後は地上施設からわらわらと人が出てきて誘導を行い、ゆっくりと、そっと、列車をレールの上に乗せた。

 「ふう、着地成功。」

 アッカーマン教授は着地を確認すると、シートから立ち上がり、ふり返った。

 「ようこそ、エルマギカへ! そして学園都市エルアカデミアへ!」


「どこにおちたい?」


最初は優太を凹ます為に魔導列車を出し、

ついでだからジェットコースター化しようかと考え、

そもそも山脈越えの路線なんて簡単には作れないよねと合理性を求めてみた結果、

気が付いたらこうなっていました。


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