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聖女無双  作者: 水無月 黒
第二章 ドラゴンゾンビ

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エルマギカへの道

第二章がだいたいめどが付いたので、掲載再開します。

 北方山脈のさらに北側、エルマギカ共和国やエルフィロソフィア共和国へ行こうと思ったら、その道筋は三本考えられる。

 一つは教国の西部から北方山脈の西側を回って行くコース。もう一つは、エルソルディア王国の東部から北方山脈の東側を回って行くコース。

 どちらも北方山脈を迂回する平坦で無難な道程であり、出発地点と目的地の位置関係によっては実際に利用されるルートである。海路も北方山脈を迂回するという意味でこれらのコースに含まれ、大量の荷物を運ぶ商隊などもこれらのコースを利用する。しかし、場合によっては大陸を横断する以上の距離を進む必要があり、非常に時間のかかる方法でもある。

 そして最後の一つが、北方山脈を突っ切る危険で困難なコース。危険で困難だが、多くの場合距離と時間を短縮できる魅力的なルートであった。それゆえ、北方山脈を安全かつ容易に通り抜けるルートの開発は昔から盛んにおこなわれていた。

 単に安全で平坦なコースを見つけるだけではない。時に山を削って道を作り、谷に橋を架け、あるいは埋め立ててショートカットし、場所によってはトンネルも掘った。そのためにはエルフィロソフィアの知識とエルマギカの技術力が惜しげもなく使われた。

 長年の努力の結果、今では北方山脈を越えて南北を往来する街道が幾つかできていた。だが、そのような街道を利用しても、エルソルディア王国の王都からエルマギカ共和国の、次の世界の危機に対応するための最寄りの都市まで移動するだけで半月近くかかった。

 最初の神託では、第一の危機から第二の危機までの間隔は約二ヶ月だった。だから第一の危機、『死者の谷』を半月で終わらせ、次の一ヶ月で召喚された勇者の訓練を行い、残り半月でエルマギカまで移動する、という予定が立てられていた。

 しかし、『死者の谷』の経験から、想定外の事態にも対応できるように余裕をもって行動する必要を実感したアルベルト王子は予定の前倒しを決めた。

 幸い、発生時期の早まった第一の危機は優太の活躍により予定よりの大幅に早く終息した。勇者の訓練も順調に進んでいる。今から移動すれば、第二の危機の発生する一月以上前に現地入りすることができる。

 そういうわけで、勇者及び聖女の一行はエルマギカ共和国へ向かうことになった。

 今回エルマギカに向かうメンバーは、まず主役の勇者大介と聖女優太。

 勇者の随員として、マリエラ王女とその侍女のリコリス。

 聖女の随員としてアルベルト王子。

 勇者召喚の儀式を終えた、アラン神殿長とエドウィン魔導士長。

 王宮騎士団から二個小隊二十名とそれを率いるユージン騎士団長及びハンス副団長。

 王宮騎士団は要人警護が目的である。勇者に聖女、王族二人と要人が揃っているのだ。

 世界の危機と戦う兵士は基本的に現地の国から出す。今回はエルマギカ及びエルフィロソフィアの兵士がそれに当たる。現地の国の兵力では足りない場合に、その国の要請を受けて初めてエルソルディアからの派兵が可能となる。要請無しに兵力を送ると侵略行為とみなされてしまう場合があるのだ。国際政治は色々と複雑だった。

 「ところで、重くないのか?」

 優太が問いかけた相手はリコリスだ。彼女はやたらとでかい荷物を背負っていた。

 「めっちゃ重いです。ですが姫様の大切な荷物、他の人には任せられないです。これも、姫様への愛なのです!」

 愛がめっちゃ重かった。

 「お、おう。とりあえず、『軽量化(ライトウェイト)』。」

 ちょっぴり引き気味になりながらも、荷物を軽くする魔法をかけてやる優太。

 「うわぁ、凄く軽くなったです。やっぱり聖女様、便利です……」

 普通の神官が同じ魔法をかけてもここまでは軽くならない。しかし、リコリスは聖女様への敬意と言うより、便利な道具を見る目で優太を見ていた。


 王都を出発してから馬車で二日、一行は北方山脈の麓に到着していた。ここまでは『死者の谷』のあったレガリア地方よりは近いが、山脈越えをするためこの先が長い、はずだった。

 「お久しぶりです、アッカーマン教授。」

 「ああ、直接会うのは一年ぶりかネ、エリー先生――いや、マリエラ王女様。」

 そこで待ち構えていたのは、何故か白衣を着た女性だった。

 「マリーの伝手と言うのが、まさかアッカーマン教授だったとは思わなかったよ。」

 アルベルト王子が驚いていた。

 「そんなに凄い人なのか?」

 既にこの世界に召喚されてから一月以上たつ優太だったが、さすがに他国の有名人までは知らなかった。

 「ああ、エルマギカでも五本の指に入るマジックアイテムの開発者だ。いったいどこで知り合ったのやら。」

 リーザ=アッカーマン。まだ二十代の若さで教授職に就き、また数多くのマジックアイテムを開発してきた技術者でもある。一応魔導士ではあるが魔法を使うことはめったにない。だが、マジックアイテム開発の実績のみで『大魔導士』の候補にも名前が挙がっているという大物である。

 エルソルディア王国の王女であるマリエラ王女とエルマギカ共和国の技術者であるアッカーマン教授。一見接点のない二人にどのような繋がりがあると言うのか?

 ヒントその一。アッカーマン教授は女性である。

 ヒントその二。『エリー』はマリエラ王女のペンネームである。

 ヒントから真実にたどりつけそうなのはこの場では優太くらいなものだが、あんまり関わりたくない優太は沈黙を保った。

 「それで、そちらが勇者様と聖女様かい。へー、本当に男性の聖女様なんだネ。」

 珍しそうに優太を見るアッカーマン教授。優太の情報はマリエラ王女から伝わっていたのでたいして驚いていなかった。

 「久しぶりだな、リーザ先輩。暴走創造者(スタンピードクリエイター)と呼ばれた先輩が教授とは、相変わらず出鱈目な国だな。」

 エドウィン魔導士長が会話に加わった。魔導士としてエルマギカへの留学経験のあるエドウィン魔導士長であるが、アッカーマン教授とは先輩後輩の関係だったようだ。

 「おや、灰燼のエド君じゃないカ。お久しぶりだネ。エルソルディアで魔導士長やってるんだって? 王都で不審火事件とか多発していないかい?」

 「ハハハハハ」

 「フフフフフ」

 旧交を温め合う先輩と後輩。なんか因縁がありそうだが、言葉ほど険悪な態度ではないので、そこまで仲が悪いわけではないのだろう。たぶん。

 「それでアッカーマン教授、移動用のマジックアイテムができたと伺いましたが?」

 エルマギカの技術者がエルソルディア側で待っていた理由がここにあった。マリエラ王女に対して、アッカーマン教授より協力の申し出があったのだ。エルソルディアからエルマギカまでの移動日数を短縮できるマジックアイテムが完成したと。

 「ああ、ばっちりできているヨ。みんな、ついてきナ!」

 一行は、アッカーマン教授に連れられて、建物の中へと入って行った。


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