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聖女無双  作者: 水無月 黒
インターミッション

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王女の悩み事

 その日、優太はマリエラ王女に呼び出されていた。

 「マリエラ王女が俺に相談と言うのも珍しいな。いったいどうしたんだ?」

 優太は、マリエラ王女が用意した紅茶を飲みながら尋ねた。

 マリエラ王女は、何時になく真剣な表情で答えた。

 「聖女様、……胸が大きくなる方法をご存じないでしょうか?」

 「ブハァッ」

 優太は盛大に噴き出した。

 マリエラ王女は全く表情を変えないのまま、サラッと躱しきった。マリエラ王女、被害ゼロ。

 代わりに、傍に控えていた侍女のリコリスに、優太の噴き出した紅茶が直撃した。

 「うわっぶ、バッチィです。」

 「おっと、悪い。『洗浄(クリーン)』!」

 優太の魔法がリコリスを包み、汚れを奇麗に落としていく。浄化魔法の一種だが、『聖女の衣』が汚れ知らずなのはこの魔法が組み込まれているからである。

 「洗い立てより奇麗になったです。聖女様、便利です……」

 ブツブツ言ってるリコリスは放置して、優太はマリエラ王女に向き直った。

 「どうしてそれを男の俺に聞く? 言っておくが、聖女の力では不可能だぞ。」

 聖女の使う神聖魔法は、本来の姿に戻す回復浄化系統か、本来の力を引き出し増幅する強化系統が得意分野となる。病気や呪いで胸が縮んだというのならば可能性はあるが、元々小さい胸を大きくするというのは無理だった。強化系統にしても、例えば腕力を魔法で強化しても腕の筋肉が増えるわけではない。『母乳の出が良くなる魔法』とかを開発したとしても、それで胸が大きくなることはないのだ。

 「いえ、聖女様達のいた世界は技術が進んでいると聞きました、何か良い方法をご存じないかとおもいまして。」

 「ああ、そういうことか。」

 マリエラ王女は異世界の知識や技術に頼ろうとしたのだった。優太は、ちょっと遠い目をして日本でのことを思い出していた。雑誌やらWeb上に溢れる怪しげな広告。その中には「胸が大きくなる」と謳ったものもたくさんあった。

 「世界が変わっても女性の悩みは変わらないか。俺達の世界でも、胸が大きくなるという食品、下着、運動、装置等、色々な商品が毎年のように現れていた。」

 「それでは!」

 期待に目を輝かすマリエラ王女であったが、優太は残酷な現実を突きつけなければならなかった。

 「つまり、決定打はないということだ!」

 「くっ、別の世界の技術でもダメなのですか……」

 上げて落とす優太。全く無理と言うことはないいのだが、シリコンを注入する豊胸手術など紹介しても、こちらの世界で再現することはできない。

 「俺の知る範囲で、効果がありそうで、こちらの世界で可能なものというと、……大胸筋を鍛えて胸を下から持ち上げるってやつぐらいだな。」

 TVでボディビルダーの女性が紹介していた方法だった。

 「……それは何か違う気がします。」

 アンダーを底上げしても、カップは変わらない。

 「そもそも、どうして胸を大きくしたいんだ?」

 マリエラ王女は決して巨乳ではない。しかし、悩むほど小さいとは思えなかった。これで小さいと悩むのならば、隣にいるリコリスなどどうすればよいだろうか?

 「ム、何か失礼なことを考えている気配がするです!」

 「ソンナコトナイデスヨ。キノセイデス。」

 勘の良すぎるリコリスに、思わず片言になる優太。

 「大きな胸は母性の象徴だと思うのです。(わたくし)は勇者様を大きな愛で包み込んで差し上げたいのです。」

 侍女(リコリス)聖女(優太)のやり取りを無視して、マリエラ王女は慈愛に満ちた表情でそう告げた。

 「でもそれは逆効果なんじゃないか? 大介君、子ども扱いされるの嫌がるから。」

 何度もブチ切れている大介を見ていれば、優太にだってそれくらいは理解できる。因みに、勇者大介を何度もブチ切れさせているのは主にマリエラ王女である。

 「(わたくし)は勇者様を甘やかしたいのです!」

 マリエラ王女はとことん自分本位だった。

 「姫様はちっちゃな男の子が大好きなんです。」

 あっさりと主人の性癖をばらす侍女であった。大丈夫か、この主従。

 「おまえ、腐女子の上にショタコンかよ!」

 これには驚愕する優太。

 「ああ、ショウタロウ様、幼くも凛々しいその姿、素敵ですわ。いつか勇者様にも半ズボンを履いていただきたいですわ。」

 ウットリと語るマリエラ王女。自らの性癖を恥じる気持ちは欠片もない。

 「ゲッ、語源までちゃんと伝わってやがる。それにビジュアルもかよ。」

 因みに、『ショタコン』という日本語がそのまま定着していた。腐女子限定のようではあったが。

 「あと、半ズボンは勘弁してやれよ。大介君、泣くぞ。それから、小さく見えても大介君の方が年上だからな。」

 マリエラ王女17歳、勇者大介18歳である。

 「年齢なんて関係ありません。可愛いは正義です。(わたくし)は勇者様を可愛がりたいのです!」

 マリエラ王女の決意は固かった。

 「姫様、いいかげんその変態趣味を隠さないと、勇者様に逃げられますよ。」

 「誰が変態ですか! (わたくし)貴方(リコリス)とは違うのです。」

 「リコリスは変態さんじゃありません! ただ純粋に姫様のことが好きなだけです。純愛(プラトニック)です。姫様の初めてをいただければ満足です。」

 「うわぁ、こっちも変態だ。純愛(プラトニック)の意味を調べてから出直して来い!」

 「聖女様だって女装趣味じゃないですか!」

 「俺のは好き好んでやっているわけじゃない!」

 こうして、どんどんカオスになって行った。


 この日、優太の脳内ではマリエラ王女に対して、『ショタコン王女』の称号が贈られた。


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