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聖女無双  作者: 水無月 黒
第一章 死者の谷

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聖女暴走

 切り札を失ったバンパイアは窮地に陥った。

 優太の非常識は別にしても、操った人間にかけた術を聖女に解除される可能性を考えていなかったという点で、この計画自体穴があったのだ。

 だが、それを指摘するのは酷というものだろう。五百年前の戦いは壮絶だった。強大な力を持った上位のアンデッドが大勢の配下を引き連れて聖女に挑んだのだ。小細工は一切なし。それを正面から撃破したのが、当時の聖女である。

 その戦いを直接見てきたバンパイアが、聖女の対アンデッド殲滅力にのみ注目するのは致し方ないことだった。

 「くっ、こうなったら、お前たち、あの男を殺しなさい!」

 追い詰められたバンパイアは、背後のゾンビ達に命令を下した。ゾンビが百体いても聖女相手にはたいした役には立たない。だが、少しでも時間が稼げればよかった。バンパイアは既に逃走することを決めていた。

 だが、優太の行動は、バンパイアの予想を軽く飛び越える。

 「聖女流星キィーック!」

 派手な名前を付けたが、単なる飛び蹴りである。しかし、これを聖女の衣の身体強化全開で優太が行うと、跳び上がった高さは五メートルに達し、飛距離は十五メートルを超えた。ほとんど助走無しでこの跳躍である。

 優太は一跳びで向かって来たゾンビの集団を跳び越えてしまった。思考力の無いゾンビ達は、優太を見失ってそのまま進み続けている。さらに優太の蹴りは、蝙蝠に姿を変えて逃げようとしていたバンパイアを掠め、危なげなく着地した。

 ――ポテッ。

 バンパイア(蝙蝠)が地面に落ちた。

 優太の蹴りは掠めただけだったが、今の優太はアンデッド除けの聖属性の魔力をその身に纏っていた。濃厚な魔力に翻弄され、バンパイアは地に落ちた。

 バンパイアは蝙蝠の姿から男の姿に戻ると、よろよろと立ち上がった。優太の魔力に当てられてダメージを受けていた。

 すかさず優太は追撃を加える。相手に余計なことをする暇は与えない。

 「聖女パァーンチ」

 「ぐえっ!」

 ただ力任せに殴ったように見えるが、実はもう少し芸が細かい。


 『聖女パンチ』

 基本は身体能力を強化した上で振るわれるパンチに複数の魔法を上乗せしたもの。

 打撃の衝撃から拳を守るための防御魔法。

 相手に直接触れることを避けるための物理障壁魔法。

 その上に、アンデッドを浄化するための浄化魔法を内包した魔力の塊を乗せて打ち込む。

 打撃の衝撃により、浄化魔法を相手の体内に打ち込むため、効率よくアンデッドを浄化することができる。

 有名な対アンデッド魔法の『ターンアンデッド』に比べて、約十分の一の魔力で同じ効果がある。


 消費魔力の少ないこの技は、優太の保有する魔力量と魔力回復速度からすれば、実質的にノーコストで使いたい放題なのだ。地味にとんでもない技だった。もちろん、物理的な破壊力もかなりとんでもない。

 ゾンビくらいならば一発で昇天するだけの威力があるのだが、そこは上位のアンデッド、バンパイアはどうにか持ちこたえた。

 しかし、ダメージは深く、うつぶせに倒れたまま起き上がれない。そのまま、霧と化して逃げようとするも、

 「聖女エルボー!」

 「カハッ!」

 優太は更に畳みかける。バンパイアの背中に肘を叩き込んだ。霧化した手足の先が、ダメージを受けたことで元に戻った。

 正確に言えば、『聖女エルボードロップ』。体重をかけて肘を打ち落とすこと以外、『聖女パンチ』とほぼ同じ技である。

 優太は間髪入れずに次の攻撃へ移る。『死者の谷』では魔法陣から供給される魔力により、アンデッドは時間が経つと回復してしまう。倒したければ速攻で倒すのが正解だ。

 優太はバンパイアの両足を掴むと、そのまま振り回した。

 「聖女ジャイアントスイング!」

 超高速で振り回すこの技は、生身の人間が食らえば頭に血が上ってすぐに失神してしまうだろう。だがもちろんそれだけではない。


 『聖女ジャイアントスイング』

 相手の両足を抱え上げ、そのまま回転して相手を振り回す大技。強化された身体能力による高速回転は、遠心力により相手にダメージを与えると共に身動きを封じる。

 同時に、抱えた両足から聖属性の魔力を流し込み、相手の体内で循環させることにより、継続的にアンデッドを体内から浄化することができる。


 外から見れば、優太を中心にバンパイアがグルグル回り、そのバンパイアの体内では浄化の魔法がグルグル回っているのである。

 アンデッド相手には見た目以上にえぐい技であった。ゾンビ相手なら一回転する前に塵と化すだろう。

 バンパイアは耐えていたが、数回転したところで突然吹っ飛んで行った。

 優太が手を放したわけではない。掴んでいた足が崩れ落ちたのだ。

 優太の手を離れたバンパイアは、凄い勢いで地面に激突、そのまま地面を削って数メートル進み、止まった。

 足だけでなく手の先も崩壊して無くなっており、それどころかどんどん体の中心に向かって崩壊が進んでいた。

 「……せめて、まともな聖女に斃されたかった。」

 そう言い残し、バンパイアは消滅した。

 結界の中で五百年間耐えたバンパイアの、これがその最期であった。


 一方、そのバンパイアを斃した雄太はというと、

 「うー、目が回るのが、この技の欠点だな。」

 自分の仕掛けた技で目を回し、座り込んでいた。


・『聖女パンチラ』

 聖女の衣をミニスカート系のデザインに変更してハイキックを繰り出す禁断の技。

 蹴られた本人だけでなく、周囲で見ている男性及び優太自身の精神にダメージを与える。

 なお、聖女の衣の鉄壁の防御により、見えそうで絶対に見えない。


禁断の技につき、本編に登場する予定はありません。

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