表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
勇者が十二人ならクソスキルはバレない〜そして、オレは追放された〜  作者: 綿木絹
第二章 追放された異邦人

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

40/77

第40話 サムライ・ディメンション

 全員が話し終わり、栞のディスプレイが展開する。

 それぞれの前に移動して、各自が確認する。


「覚えらんないー!」

「メモをとってはいかがかしら?」

「メモきらーい」

「ならば、拙者が」

「お!流石、雄くん!」


 雄大が必死に書き込む中、各々が思っていたのは


 ——強すぎる、だった。


 付け足すぞ、と始めた玲の言葉に、全員が更に戦慄する。


「あくまでスキルだ。ステータス値は残念ながら見えない仕様になっている。俺たちは既に人間を辞めているということだ」

「逆を言うと、レベル1の初期値は普通の人間よ。パーセント表記を過信しないこと」


 どちらの言葉も一応受け止める。

 でも、やはりゲームみたい。そしてゲームみたいに


「最近、魔物がどんどん強くなるし、数も増えるし」

「それにレベル4からこっち、上がる気がしない。限界が近いのかもしれない」


 だからこそのチーム変更だった。

 玲と剛が順番にジョブの名前を挙げ、役割の被りを潰していく。

 そこに感情はなく、ただの戦術的な計算だった。


 そして、やはり。


 この状況下で、村田が動いた。


「……僕の魔術師のジョブの、完全な上位互換が栞さんです」


 村田がハッキリと言った。

 顔色は艶やかになっていた。

 そして声には、一切の迷いどころか確信が乗っていた。


「僕は左手が疼くとは言え、ウィザードです。遥か深淵に届くまで詠唱が必要です。でも、栞さんはソーサラー。ソースとは血族。僕よりもすごい、と。ということで──例えば、僕と舞さんをセットにしてみてはどうでしょう」


 沈黙があった。

 栞は村田を見た。

 村田は栞を見なかった。

 ニヤニヤしていた。

 誰の目にも、それはバランスではなく、私情ではと映っている。

 だが、栞が村田の上位互換なのも事実だった。


「それで舞さん、どう?」


 奏は滑らかに視線を送った。

 すると、舞はあっけらかんと


「いいんじゃない?」


 一秒も迷わずにあっさりと言った。

 それで、村田と舞がセットになった。


 次に自分の意見を言ったのは蹴鞠。

 彼女が口を開いたのは、栞の名前が出た時だった。


「ゲーマー男二人には、そろそろ飽きましたの」


 蹴鞠は、豪奢なフリルの裾を優雅に払った。

 さも当然のことを言うような、誇り高い顔だった。


「わたくしは、栞様と組ませて頂くわ」


 栞の萌え袖に腕を絡めて、蹴鞠は強引に引き寄せた。

 栞は抵抗することなく、ぐいっとドレスの中に押し込まれた。


 すると玲が、壁から完全に体を離した。


「飽きただと……勝手にしろ。なら、俺は舞のチームだ」


 村田がガン見する中で、舞の横に並ぶ。

 戦力計算としてビーム剣士がそちらに必要だと判断したのか、蹴鞠への意趣返しなのか、どちららともとれる。


「アタッカーがそっち……」

「凜さん。わたくしと一緒に参りましょう」


 玲が舞チームに入った、この瞬間、凛のポジションが動いた。

 動いた、というより──動かなかった。

 行き先は自動的に決まった。


「はい」


 この時の日向は、何も言わなかった。

 栞は、その奇妙な沈黙を眺めていた。

 すると剛が、低い声で口を開いた。


「どうチーム分けしても、栞が要には違いない」


 静かな声だった。

 でも、揺るぎない確信があった。


「だから俺は栞の盾になる」


 玲が、ちらりと剛を見た。

 その瞳が少しだけ不満げに動いた。

 そして、剛は僅かに微笑んだ。


「蹴鞠。そいつもゲーマーだが?」

「細かい男ですわね。 わたくしは栞様がいいのです」


 ということで、剛が栞チームに入った。

 メインタンカーが栞を守る。


「盾使いがそっちか。でも、俺は」

「そこ。私情を挟むな」


 ヤケになってきた玲の言葉だ。

 誠司は面倒くさそうに、頷いた。

 サブタンク職に近い誠司は、バランスを取るために自動的に舞たちのチームになった。


「よろしくね。誠ちゃん!」

「せい……、誠司でいい」


 二人の間に、一瞬だけ鋭い視線が交わった。


「別に良くない? まいっか。ってか、ズルくない? ヒーラー欲しいし、日向ちゃん、こっちね」


 舞が、明るく言った。


「あ……。その……」

「回復、欲しいしー。肌とか傷つけたくないし」


 単純な理由。

 肌のケアに必要だから来て、というストレートな声だった。

 日向が、顔を伏せたまま小さく頷いた。


「なら、美咲だな。ヒーラーを兼ねるよな?」

「え……うん」

「そこ。私情を挟むな!」

「玲……落ち着いて」

「落ち着いているからこそだ」


 清く叩く、回復魔法が使える美咲が栞チームに入った。


 凛は、まだ何も言えない。

 日向も、まだ何も言えない。


 栞は二人を交互に見た。見て、肩をすくめた。


 というのも、最後に残ったのが、奏だから。


「ふぅん。今が五と五。 一人足りないと、面倒だね。 案外、十二人ってよく考えられていたのかも」


 道化のようにおどける。


 一人を追放した。その罪状は異邦人でなかったから。

 であれば、彼の言葉はおかしいが、誰も何も言わない。


「前にもボクはどっちでもいいって言ってたけど……」


 奏が、少しだけ考えるような間を置いた。


「男女比的に、ボクは栞ちゃんのチームにしておくよ」


 沈黙があった。


 栞は奏を見た。

 奏は、いつものようににこにこしていた。

 彼の発言はなんとなく、当然のように聞こえた。


 だから栞は、小さく肩をすくめた。

 栞自身気づかなかったが、久しぶりに、肩から少しだけこわばった力が抜けていた。

 クラス替えのような、新鮮さがそこにあった気がした。


「色々あるみたいだけど……」


 小さなガッツポーズの凜

 悲しそうな日向


 二人を視界の端に捉えつつも、ディスプレイを弄る。


「——チームは決まったわね」


 空中に飛ぶディスプレイに名前を映し出した。

 こう見ると悪くない。

 四人は少なかったかもしれない、なんて思う。


【栞チーム】

 栞・蹴鞠・剛・凛・美咲・奏


【舞チーム】

 舞・村田・玲・誠司・日向


 そして何故か、玲ではなく舞のチーム。

 栞は無意識にそうしていた。

 実際、彼女の存在は大きいと思ったからだ。

 村田はさておき、舞は心の根っこから明るく、誰とでも対等に話をする。

 加えて、感情が分かりやすい分、行動も読みやすい。


 そういう意味では貴重な存在だ。

 栞には、そう思えた。


「次に決めるべきは、進行ルートね」

「帝国に向かって、真っ直ぐ進むんじゃないの?」


 舞が、不思議そうに首を傾げた。


「北のルートは遠回りで、しかも大きな川越えがある。中央は険しいアルプス越えで、現実的にあり得ない。南のルートが一番堅実だけど──北の方に、影響力の大きな都市部が密集している」


 剛が、持っていた地図を広げた。

 冷たい石のテーブルの上に、広大な大陸の羊皮紙が広がった。


「都市部が多いということは」


 蹴鞠が、優雅に口を開いた。

 窓の外の青空を見ながら、静かに言った。


「それだけ、大衆の注目を浴びる機会も多い、ということですわ」


 それから、蹴鞠は真っ直ぐに栞を見た。


「でしたら、北ルートですわね」


 豪奢なフリルの裾が、かすかに揺れた。


「世間の注目を浴びることこそ、我ら貴族の絶対の使命ですわ」


 誰も首を振らないし、笑わない。

 フィニス王国でのパン騒動は、彼らの一つの基準になっていた。

 勿論、それだけではない。


「装備の修復。高級宿屋がある。当然だろうな」

「ウチ、シャワー浴びたいし」


 部屋の中に、静かで軽い空気が広がった。


「うむ。街を解放するのが、拙者たち勇者の役目に御座るからな、舞殿」

「シャワーか。あんなに面倒だった風呂が恋しいとはな」

「誠ちゃんも、人のこと言えないじゃん」

「カ……。あぁ、そうだな」

「ホームの生活環境は必須だ」

「ゲームってそんな感じ?」

「拠点を移しながらレベルを上げる。装備もそうだが、エルタがそうだったように、大都市ならサブミッションがあるはずだ」

「やっぱりレベル上げの拠点は必要よね」


 北ルート。都市部。人目が多い場所。


「川沿いの街セレーヌ。そしてヴァルシア王国王都リュデアの解放を優先。……決まりね」


 栞が宣言する。


 すると奏がそれとなく、テーブルの上の地図を見た。

 エルタの壁の外の、名もなき街道──


 女王の名でお触れが出ている男が、朝方見えた場所。


「奏くん、そこに何かあるの?」


 日向が聞いた。

 奏は着流した和装を少し正して、軽く息を吐いた。


「特に意味はないよ。 さ、新しいメンバーで作戦を考えよう」

「あ……えっと」

「日向ちゃん。チームは変わったけど、十一勇者はみんな仲間だよ」

「う……うん。そうだよね」


 そして、一人大満足の男がいた。


「舞殿、思いついたでござるよ」

「雄くん。今は詠唱の話はぁ」

「違うで御座る。拙者は空気を読める、聡明なウィザードに御座る」

「それは分かったけど。じゃあ、何?」


 ふんふんと鼻息を鳴らして、彼は言う。


「十一勇者と来て、ピーンと来たで御座る。十一といえば、サムライでござる」

「え…………ぇと。なんで?」


 すると、鼻息の向こうで奏が言う。


「月の覚え方であったよね」


 そこにすかさず、凜が入り込む。


「西向くサムライね。二月、四月、六月、九月。そして十一月——」

「あー、あったね。で、どした?」

「知らないわよ。 サムライ勇者とか言うつもりじゃない?」


 雄大の両肩が跳ねる。

 嬉しそうにというよりは、目を泳がせる感じ。


「ダサい……かも。雄くん」


 やり過ぎた。ピンと来すぎた。余計な事を閃いた。


 だが雄大の焦りは杞憂に終わる。

 栞は少し、柔らかく微笑んだ。


「アタシたちだけの記号は必要かもね」

「俺も賛成だ。ずっと異邦人、異邦人と差別主義者の言葉だ」

「中世とはそんな時代かと存じますが……」


 何人も参加する。

 チーム編成よりも、十一人が本気で話し合った。


 その結果。


「サムライ・ディメンション。カッコよいで御座る。真の意味は11の次元。 超ひも理論にござるな?」

「悪くないな」

「なんか、アニメとか漫画とか、ゲームの名前みたい」

「こっちの人間には分からない意味を入れるのは悪くないわね」


 神宮寺玲は高らかに宣言する。


「これより。我らはこう名乗る。 サムライ・ディメンション。世界を攻略する者なり」


 国中に轟く異邦人勇者部隊。


 その名は、——サムライ・ディメンション

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ