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    5-7 学園祭1日目。ダメ男は闘技会本選を戦う①

「おらああああ!」

 ガギイイン‼

 対戦相手の男子生徒が振り下ろした剣を、俺は自分の剣で受けとめる。そのまま膠着状態になった。数秒の間続いていたその状態を、俺は剣にかける力の向きを変えることで崩す。相手がバランスを崩したところで、距離を取った。相手は追いかけてこようとするが、動けない。なぜなら、足が凍っていたから。膠着状態の時に、足元を氷魔法で凍らせていたのだ。相手が戸惑った隙に、一気にたたみかける。そのまま押し切って、勝利をつかむことができた。

 学園祭1日目。闘技会の1回戦だ。今日は朝に学園長先生からの挨拶があった後は、自由行動だった。他の所だと出し物の準備をやっている所もあるのかもしれないが、騎士科にはないからな。代わりに、闘技会があるのだけど。今日と明日の2日間に渡って行われる本選は、トーナメント方式だ。本選に出場しているのは32人。つまり5回勝てば優勝だ。今日はベスト8……準決勝までで、明日は決勝まで行うというスケジュールだ。

 対戦相手を決める抽選もしたが、ラシンとシャーロットとはずいぶんと離れたところになり、もし戦うとしても決勝戦になりそうだった。

 今戦ったのは普通科の生徒だった。今回の闘技会は、騎士科から11人、魔術科から12人、それ以外の科からは9人が出場している。

 試合が終わったので、一旦休憩に入る。次の試合までは、まだかなり時間があるだろうし。

 試合会場となっているのは、学園内にあるコロッセオのような建物だ。こういう時に使う闘技場らしい。舞台を囲むように観客席があって、今はその半分くらいが生徒で埋まっていた。……俺が勝った時に、聞き覚えのある歓声が聞こえた気がするけど、無視しておく。

 水分補給などをした後は、観客席から他の試合を見ることにした。控室からでも見えるけど、一部しか見えないからな。全体を俯瞰(ふかん)できるところから見たい。

出場者用の出入り口から出たところで、魔法を発動する。

 発動したのは前から練習していた気配や姿を消す魔法。風を周囲に纏うことで光の屈折を変えて姿を見えなくする……というのを目指していたのだけど、今はまだやや見えにくくすることしかできない。だけど、こういう場合には使える。人目があるから“カラオケルーム”は使えないしね。

 ちなみに効果は、世で言うところの影が薄い人レベルなれるといったところだ。ただ、注意して見てたり探したりされてると気づかれる。……うん、すっごく微妙! 

 気を取り直して、空いている場所に座って試合を観戦する。今やっているのは、魔術科の生徒同士の試合のようだ。片方は杖を持ち、もう片方は何も持っていない。どちらも魔法を使った打ち合いをしている。片方が水でできた槍を撃ったかと思えば、もう片方は土でできた壁を作って防ぐ。防いだ後は、すぐさま土でできた弾丸のようなものを発射していた。

 やがて試合は土魔法を使う生徒の勝利で終わった。その後も試合は続く。騎士科の生徒と魔術科の生徒の試合。普通科の生徒もいた。

 やがてラシンが会場に姿を現した。相手は芸術科の生徒とのこと。

 試合が始まると、ラシンは相手に向かって走りだした。相手もまた距離を取るように動く。にらみ合いが続いて数十秒経ったころ、ラシンは一気に距離を詰めるように動いた。さっきよりも動きが速い! 身体強化したのか。

 しかし、相手はすぐさま水でできたバレーボールほどの球をいくつか作り出し、ラシンに向けて放つ。ラシンは避けるように動いたが、次の瞬間、水球が一斉に破裂した! 

 破裂した水がまき散らされたことで、ふたりの間に一時、壁ができる。進路がふさがれたことで、一瞬ラシンの動きが止まるが、それを避けるように動いて相手と距離を詰めようとした。その時、いきなり水柱がラシンのいる場所で上がった。見てみると、相手の生徒が地面に手をついている。……あれで任意の場所に水柱を立てているのか?

 ラシンは近づこうとするが、進む先に次々と水柱を立てられて中々進めないようだ。それでも動き回りながら少しずつ近づいている。相手の方は、止まりながらでないと水柱を出せないのか動いていない。

 しかし、ラシンが近づいてきているのを見ると、相手は地面から手を放して移動し始めた。まるで地面を滑るように動いている。足に水を纏っているから、あれが水属性の支援魔法か? 動きが滑らかで、けっこう速い。

 相手は移動しながら水の弾丸をラシンに向けて放つ。ラシンはそれを避けたり、剣ではじいている。やがて、相手は再びバレーボール大の水球を出すと、放った。

 それを見たラシンは、真っ直ぐに水球に突っ込んでいく。さっきと同じ様に水の球は破裂して、水をまき散らした。それと同時に、ラシンは炎でできた槍を数本出し、水の壁を超えるように山なりに放った!

 放たれたそれらは、壁の向こう側で水柱を放つ準備をしていた相手に襲い掛かる。とんできた炎の槍に驚いたのか、相手はとっさにそれらを水柱で防ぐ。

 そしてできた間をラシンは逃さず、すぐさま距離を詰めて肉薄し、勝利をおさめた。

 すごいな。素直にそう思う。攻撃の準備をさせないように、わざと突っ込んで水の壁に隠れ、こちらの動きを見えないようにしたのか。

 次の試合は、騎士科の生徒と魔術科の生徒の試合だった。騎士科の方は見覚えがないから後輩だろう。試合結果は、後輩の圧勝だった。彼は強力な風魔法で相手を圧倒したのである。相手の攻撃を自分の周りに展開した風の防壁で防ぎ、ウィンドアローを初めとした魔法を放っていた。……名前は、マルバス……か。

 試合は続き、1回戦最後の試合はシャーロットの出番だった。相手は普通科の女子生徒だった。

 結果としてはシャーロットが勝ち進み、これで1回戦は全て終わりになった。ここで昼食の時間も兼ねた小休止が入ったので、動き出した生徒に紛れて選手の控室に戻る。

 昼食を食べ終わってからほどなくして、2回戦が始まった。俺は3試合目なので、控室で待つことにした。控室には窓があって、試合を覗き見ることもできる。そこから見える試合の様子を確認しながらストレッチなどをする。

 最初の試合は普通科の生徒が、次の試合は魔術科の生徒が勝った。……俺の番だな。

 試合会場に出る。とたんに再び歓声が聞こえた。……この声はアメリアだな。さっきも聞こえてたし。ふと観客席を見てみると、フィオナとエレオノーラ嬢、ユーリ嬢が連れだって座っているのが見えた。見に行くとは聞いてなかったけど、来てくれたんだな。

 試合前に、名前を呼ばれた際、見に来てくれたことへの感謝も込めて、グッとこぶしを突き上げた。とたんに後ろの方から俺を呼ぶ声が……。そっちにやったんじゃないぞ。

 選手の紹介がされる。……相手は騎士科の後輩らしい。

「試合開始!」

 その合図と同時に、対戦相手の男子生徒が剣を手に動き出した。俺もまた距離を取るように動き出す。牽制のために魔法を少し放つが、ひとつがかすっただけに終わる。

 ここで相手が何か強化の魔法を使ったのか、素早く距離を詰めてきた。そのまま剣を振り下ろして来る。俺はそれを剣で受け流す。何度も剣を打ちあい、そのたびにキン、キイン、と金属同士がぶつかる音が響いた。

 相手からの猛攻を防ぎながら、反撃の機会を窺う。すると、相手が攻撃した後に、数歩後ろに下がった。攻撃のチャンスかと思って一歩踏み出すと、相手はすぐさま距離を詰め、大上段から剣を振り下ろしてきた。こちらも強化されているのか、速い……!

 剣を構えて受けとめる。

 ガイイイインン‼

 振り下ろされた攻撃は、ずしりと重く、かなりの衝撃だったが、耐える。剣の柄と、腹の部分のふたつで押し負けないようにこらえる。相手も、俺を押し切るとばかりに剣を押し当ててくる。あまりの圧に、数歩分くらい押されて後退した。

 そのまま数秒が経過した。今は膠着状態だ。どちらも動けない。だけど、このままにはしない。押し返す!

 俺は“纏”を発動し、力を蓄える。そして相手の力が少しだけ弱まった所で、一気に力を込めて、押し返した!

 相手は押し返されたことに驚きながらも、体勢を立て直し、剣を構えなおした。俺は押し返した勢いそのままに、素早く距離を詰め、剣を振るう。素早く、何度も攻撃を加えた。

 最初は防いでいた相手だったけど、段々と防戦一方になっていく。けど、少しでも攻撃を弱めたり、隙を見せれば反撃が飛んでくる。……さすが本選まで来るだけある。強いなあ。

 さらに数度の打ちあいの末、俺の攻撃が相手の剣を跳ね飛ばしたことで、決着がついた。

「ありがとうございました」

 礼をした後、握手をしあって控室に戻る。汗をぬぐった後、俺はまた観客席に行くことにした。この後はまたラシンたちの試合が控えているからだ。

さあ行くかと腰を浮かせたその時、“気配察知”に反応が……。

ガチャッ! 「レオン様~~! おめでとうございます~~」

 選手以外立ち入り禁止であるはずの扉を開けて入って来たのは、アメリアだった。

 …………はあ。

 いつもこの作品を読んでくださってありがとうございます!

 始まりました。学園祭。そして闘技会。主人公の活躍はいかに!?

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