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    5-8 学園祭1~2日目。ダメ男は闘技会本選を戦う②

「なんでフォルティアさんがこんなところに?」

「やっぱりかわいいなあ」

 控室に遠慮のかけらもなく入ってきたアメリアに、周囲の男子生徒がざわつき、いっきに浮ついた雰囲気になる。そういえば結構人気があるんだったよな……。

 俺の前までやってきたアメリアは、まず俺の勝利をたたえる言葉を口にした後、「息抜きに私と学園祭を回りませんかあ?」と言ってきた。その瞬間、すごい数の視線が俺に刺さってきた。おいおい。

「すまないが、断る。試合が見たいんでな」

 そういうと、アメリアはさらに言い募ってきた。

「じゃあ、一緒に見ましょうよお」

「ひとりでじっくり見たいんだ」アメリアと一緒だと、絶対に集中できないだろうし。

 あれこれと言って断ろうとするが、全然諦める様子がないアメリア。おまけに、周りの視線がどんどんと険悪なものになっていってる気がする。……「なんでアメリアさんの誘いを断ろうとしてんだよ!」って感じだ。そんなに行きたきゃ代わってや……それだ!

「……よしわかった」

 そういうと、アメリアの顔がキラキラした感じになった。

「それじゃあ」

「ああ。あいにく俺は行けないが、ここには君とお近づきになりたい人がたくさんいる。彼らを案内してあげてくれ」

 俺はすぐさま控室にいる男子たちに呼びかけた。

「聞いてくれ! アメリア嬢が一緒に学園祭を回ってくれるそうだぞ! こんな機会はそうそうないんじゃないのか? 行きたい奴は名乗り出ろ! 早いもの勝ちだぞ!」

 そういった瞬間、その場にいた男子のうち約半分がアメリアに殺到した。そして口々に『ぜひとも自分と!』とアピールし始める。……すげえな。

「え⁉ まっ……私はレオン様と屋台に……」

「え? 屋台に行きたいんですか。なら行きましょう!」

 その言葉を最後に、男子たちに押し流されるようにして、アメリアはいなくなった。……ふう。

 ここにいた人のうち、7割くらいは試合に負けてしまって帰ろうとしていた人たちだから、多分大丈夫だろう。

 まだ油断はできないが、これで時間稼ぎはできるはず。さて、観客席に行きますか。

 しかし、控室を出たところで今度はマーカスに見つかった。

「ああ。やっぱりここにいたんですね。探しましたよ」

「何か用か?」

「ええ。シリル先生があなたを呼んでいましてね」

「本当か?」

「はい。私たちの展示がある教室に来てほしいと」

「わかった。ありがとう」

 マーカスと別れた俺は、注意しながら移動して、展示をしている教室に向かった。

 そこで待っていた先生は、開口一番「もう少しこのあたりを詳しく教えてくれ」と展示のある部分を指し示す。そこは俺が書いた無属性魔法の部分だった。

「なかなか興味深いことが書かれている。アルバートが書いたと聞いたのでな」

 そういう先生の顔は、いつもの気だるげな感じとは縁遠いものだった。


 それから約1時間もの間先生の質問や話に付き合うことになった。(途中からは研究室に移動して話した)かなり時間を取られてしまったが、自分が書いたものが評価されたのはうれしかったし、先生の話も面白かった。

 もう終わっているかもと思いつつ、観客席に向かおうとしていた時、前方から先生が数人で担架らしきものを運んでいるのが目に入った。そのまま俺とすれ違う。

 なんの気なしに運んでいるものを見た俺は驚愕で固まった。

 運ばれていたのはシャーロットだったのだ! 一瞬しか見えなかったが、ぐったりとしていて、頭から血を流していた。……何があったんだ!?

 事態を飲み込めずに、しばしその場に立ち止まっていた俺に、声がかけられた。

「……レオン……」

 バッと振り返って声の主を見る。それはやはり……ラシンだった。その顔には、悲しみや怒りがごちゃ混ぜになったような表情を浮かべている。

「今運ばれて行ったの、シャーロットだよな? ……何が……あったんだ?」

 ラシンはそれに答えることなく、俺に近づいて頭を下げた。え⁉

「頼む! これから俺の特訓に付き合ってくれ! 倒したい、いや、倒さなきゃいけないやつがいるんだ!」

 突然のことに俺は戸惑ったが、さっきのシャーロトの様子を見る限り、何かあったのは間違いない。

「……詳しく聞かせてくれないか? 何があったか」


 それから場所を変えてラシンの話を聞いた。周囲はサクヤたちに警戒してもらう。

 俺がアメリアに連れまわされている間に、ふたりの試合が行われた。ラシンは勝ち抜き、今日最後の試合にシャーロットが出ていた。相手は、騎士科の後輩で、昨日見たマルバスという男子生徒だった。

 初めは結構いい勝負をしていたらしいが、途中からシャーロットが押され始め、劣勢になった。

 それでも粘り強く戦っていたのだが、負けてしまったのだという。

「あのヤロウ、試合中にわざと魔法でシャルの服を切りさきやがったんだ! それを気にするシャルに甚振るように攻撃しやがって……。しかも最後に明らかに必要のない攻撃をしてあいつをふっ飛ばしたんだ! それであのヤロウなんて言ったかわかるか? 『女のくせにでしゃばるからこうなるんだ。いい気味だ』って嘲笑いやがったんだ!」

 その時のことを思い出したのかラシンはギリッと奥歯を噛みしめ、こぶしを握り締めた。

「あいつは……シャルは、昔から一緒だった幼なじみで、大事な戦友だ。あいつがどれだけ真剣に騎士を目指して頑張ってるか、俺はよく知ってる。……それを馬鹿にされたまま、黙ってるわけにはいかないんだ……!」

 怒りを抑えるように俯くラシン。その背中からは強い覚悟を灯して燃える炎すら見えそうだった。

「わかった。俺とてシャーロットとは一緒に戦った仲だ。……許せないのは俺も同じ。付き合うぞ」

「……恩にきる」

「いいよ別に。俺も怒ってるんだ。それじゃあ移動して早速やるか」

「おう」

 運動場に移動する途中、カヅキにこっそりマルバスについて調べるように頼む。サクヤには引き続き周囲を警戒するように頼んだ。

 その後は、ラシンの特訓に付き合った。模擬戦を初め、俺が風魔法をラシンに向けて放ったり、マルバスの試合を見て思ったことを伝えたり、使えそうな魔法を試してみたりした。

それは夜の10時ごろまで続いたのだった。


  ~文化祭2日目~


 文化祭2日目、今日で闘技会は終わる。俺は最初の方に、ラシンはあのマルバスという生徒と一番最後に戦う。

 試合会場に入ると、観客席はほとんど埋まっていた。今日と明日は一般公開されてるから、保護者の人とかだろう。聞こえる歓声も昨日よりずっと大きかった。

「試合開始!」

 審判を務める先生の合図と同時に、相手が攻撃を仕掛けてきた。雷でできた槍がかなりの速さで俺に迫る。俺は風壁でそれを弾いた。弾かれた魔法が観客席に方に飛んでいくが、観客席手前で霧散する。確か先生がそういう魔法を使ってるんだっけ?

 続いて、雷を放って攻撃してくる相手の生徒。俺はそれをよけて、ウィンドアローを放った。速いけど、兄程じゃない! 俺でもなんとか避けられる!

 相手も俺の攻撃を魔法でそらした。と思ったら、相手の周りを雷の塊が3つほどフワフワと漂い始めた。何だ?

 相手が手をかざすと、それらは俺の方へと向かってきた。そこまでスピードは速くない。俺はそれを難なく避ける。が、そこで気が付いた。塊たちが進路を変えて、俺を追ってきていることを。追尾機能付きか!

 すぐさまウィンドアローをその塊に向けて放つ。それは塊のひとつに当たって消える。だけど、残りのふたつには当たらず、ふわりと俺に近づいてきた。どちらも避けて、距離を取ろうと動きだしたとき、“気配察知”に反応が!

 ビリリッ!?

「……っ⁉」

 塊のひとつが体に当たり、強力な静電気を受けたような衝撃が走る! 見ると、対戦相手の生徒の周りに、あの塊がふたつ漂っているのが見えた。……どうやらいくつも出せるみたいだ。

 幸いにして、そこまでのダメージはない。これもスキルの魔法耐性が働いているからだろうな。

 その後も、俺は雷の塊に追い回されることになった。しかも、さっきよりもややスピードが速くなっているように感じる。ふと体を見ると、さっき攻撃を受けたあたりに魔力反応が……。もしかして、これを狙ってきてるのか?

 よく見てみると、服の上にペンキのしみみたいに相手の魔力がくっついているのがわかった。……。

 魔法で塊を撃ち落とすが、すぐに相手が補充するからあまり意味がない。でも、このままじゃこっちの体力が切れてやられるのは目に見えている……。どうすれば……。

 ひとつの塊が、俺に迫る。とっさに風で払うような形になった。すると、塊は風に流されるように遠ざかった。……砕くには弱かったか。ウィンドアローだと砕けるんだけど……。

 ……ていうか、もう被弾覚悟で突っ込んでもいいかも。あんまりダメージないし。

 一瞬そう思ったが、視界の端にハラハラした感じでこちらを見ているフィオナの姿が映った。……やめとこう。うん。よし、プランBだ!

 俺は迫りくる塊を風で防御する。塊は砕け散り、数が減った。すぐさま俺は自分の身を隠すように氷の壁を展開する。相手も何かしてくると考えたのか、魔法で壁を砕きにかかった。

 俺は壁が砕けるのと同時に、大きめの竜巻を作り出して、相手に向けて放った。俺自身は竜巻の進路とはややずれた方向に走り出す。しかし、相手の方が早く雷の塊を放っている。ぐんぐんと俺に迫る塊。だけどそれは俺に当たることなく、俺が放った竜巻に向かっていき、全て竜巻で破壊された。

 予想していなかった事態に驚く相手の生徒は、迫る竜巻をよけるために動くこともできず、そのまま吹き飛ばされて場外に落ちた。これで俺の勝ちだ!

 なぜ雷の塊が俺に当たらなかったのか? それは魔力反応がついている上着を脱いで、竜巻の方に放り込んでいたからだ。あの塊は服の魔力反応を追尾しているようだったので、服をおとりにしたわけである。

 審判の先生から勝利の宣言がなされ、俺は控室に戻る。……これで準決勝に進出か。

 この後はラシンとあのマルバスの試合がある。結果を見届けないと……。

 ラシン曰く、シャーロットは回復こそしたものの、未だ目を覚まさないらしい。

闘技会で選手が着る服には、防御力をあげる魔術がかけられていて、生半可な攻撃では破れたり切れたりしないようになっていると先生は言っていたが……どれだけダメージを与えたんだよ、いったい……。

 今日の朝にカヅキから受け取った報告書の内容を思いだす。

 マルバス。本名はマルバス=ミ=アルグランテ。アルグランテ侯爵家の嫡男で、近衛騎士団副団長の息子。魔法を得意としていて、10歳の時に自らの風魔法をその上位魔法である暴風魔法に昇華させている。

 騎士科の2年生で、性格は残忍かつ横暴。特に自分より爵位が下の相手や、女性に対しては侮蔑的に振る舞う。婚約者に対してもそんな感じらしく、相手は泣き寝入りしている。

 また、今回の闘技会においては予選で勝ち上がって代表になった女子生徒に対して暴行を加えて闘技会に出場できなくした……と。

 短い時間でこれだけ調べてきたカヅキには頭が下がるな……。手持ちはあんまりないけど、今度ボーナスをあげようかな……。

 というか、こいつ、昔のレオンよりもクズなのでは?

 だけど、強いのは確か……か。

 そこだけは昔のレオンとは違う。レオンはそこまで強くなかったし。……しかし、上位の魔法か。俺はまだ兄の雷撃魔法しか知らない。でもそれならあの威力も納得か。

 少し複雑な思いを抱えながらも、俺は観客席に移動した。見てみると、ちょうど次の試合が終わるところだった。……いよいよか。

 先に戦っていた選手が退き、舞台の準備が終わる。そして、ラシンが入場してくるのが見えた。

 私の拙作を読んでくださってありがとうございます!

 いよいよ今年もあとわずか。追い込みの時期に入ってきましたね。皆さんはどうお過ごしでしょうか?

 突然で申し訳ありませんが、1か月ほど更新をお休みしようと思います。理由はこちらも年末の追い込みが忙しくて、時間がとれなそうだからと、ストックがなくなってきたからです。

 ですから一度少し休んで、作品と向き合う時間を取ろうと思います。


 更新ですが、年末までは今まで通り。それから休んで2月の初めごろにまた更新を再開したいと考えています。

 勝手ではありますが、これからもお付き合いいただければ幸いです。


   三條政孝

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― 新着の感想 ―
[良い点] フィオナちゃんの為に自身を大切にする選択肢を取る主人公、いいですね、好きですね 追尾弾の誘導が上手い 現時点でヒロイン力とヒーロー力が高まっているシャーロットとラシン ラシンには是非勝って…
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