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    5-6 ダメ男は学園祭の準備をする

「ほう! これをアメリアが纏めたのか! 分かりやすくて素晴らしいな!」

「これは学者も唸りそうな出来栄えですね。さすがです」

「ええ⁉ そんな~~。先生方の教え方が上手なんですよう。私なんてまだまだですう」

「とても謙虚なところもアメリアの魅力だなあ」

「全く、素晴らしいですね。レオンもそう思うでしょう?」

「……謙虚なのはいいことだな。ウン」

「えへへ。照れますよ~~」

 今は放課後の時間。俺がアメリアたちに声をかけられて引っ張っていかれた先で待っていたのは、カルロスたちが学園祭で発表するという掲示物だった。なんでも、魔法について纏めるつもりで、資料を探すのと同時に、実際に魔法を使える人に話を聞いているそうだ。でも風魔法はカルロスが使えるし、氷魔法はマーカスが使える。俺いらなくね?と思ったが、「大人数でやった方が楽しい」というアメリアの謎理論により呼ばれたようだ。

 見つかった時、俺はちょうど素振りをしていた。近くには“カラオケルーム”を展開していて、中でフィオナが練習していたので、逃げ込むのをためらっていたら見つかったのだ。それで連れてこられた。

 しかし、俺から離れてもあの部屋は存在し続けられるのだろうか……。もし勝手に閉じてしまって中の人が閉じ込められたりしたら、と心配になった。

 だけど、どうやらいくらか離れても俺が展開し続けたいと考えていれば“カラオケルーム”は展開したままの状態で保たれるみたいだ。ただその代わり、魔力がどんどんと減っている。……距離が開くと魔力消費が激しくなるみたいだ。カヅキにフィオナとサクヤが“カラオケルーム”を出たら知らせるように言っておき、俺は作業に没頭した。

 俺がやっているのは、本などの資料からカルロスたちが作った原稿を、大きな紙に書き写す作業だ。今は無属性魔法の部分なんだが……、ここだけ適当すぎないか?

 他の部分だって資料の言葉を書き写したようなものが多かったけど、この部分はそれに輪をかけて書き方が、なんというか……やる気がない。無属性魔法なんておまけでしょ?と言わんばかりだ。

「なあ。この原稿少し手を加えてもいいか?」

「ん? ああいいぞ」

 よし言質とった。無属性魔法の所書き直そう。乗り気でないにしろやるのであるなら真面目にやる。そしてさっさと帰ろう。

 結局この日を合わせて3日の間作業に付き合わせられたわけだが、俺は資料やカー先生の話、自分の経験などを踏まえて原稿に手を加え、仕事を終わらせた。

 しかしあいつら、作業してる時間よりも、ベタベタしてる時間の方が長かったんじゃないか?

 作業時間が伸びたのもそれのせいだろう。あれがなければ昨日には終わってただろうに。話しかけられて作業中断したし、無駄な部分も多かった。

 アメリアは毎回手作りのお菓子を持ってきていて、それをカルロスたちに配っていた。もちろん、俺にも渡してきた。……普通に美味かった。ま、まあカヅキたちも普通のお菓子だと言ってたし、お菓子に罪はない。うん。

 結局それは、半分を作業していた教室で食べ、残りはサクヤたちにあげた。

 水を向けられた話に対し適当にあわせつつ、なんとか作業を終わらせた俺は、明後日に備えたいと言ってその場を後にした。アメリアたちは俺が本選に出ることを知っているのでそれぞれ激励の言葉をかけてきたが、引き止めてはこなかった。……3日前はものすごくしつこかったのに、今度はあっさりだな。

 俺がその足で向かったのは、グラウンド。隅の方に行ったところで周囲に人がいないことを確認してからサクヤとカヅキを呼ぶ。ふたりはすぐに来てくれた。俺は“カラオケルーム”を展開し、二人を連れて中に入る。

「じゃあ、今日の報告を聞こうか。まずはサクヤから」

 そう促すとサクヤが「はい!」と元気よく返事をしてから話し出した。

「今日、フィーお姉ちゃんは第4音楽室で歌の練習をしてました! 一緒にいたのは4人です」

 サクヤにはこっそりフィオナの様子を見てもらっていた。ここ数日、カルロスたちの作業に駆り出されていたことでフィオナと会う機会が減っていたので、何か困ったことが起きてないか、何か抱え込んでる様子がないかといったことを探ってもらっていたのだ。必要ないとは思うが護衛も兼ねている。

 サクヤの報告を聞き終わったので、今度はカヅキの報告を聞く。

「は。アメリア=フォルティアですが、主に行動を共にしているのはカルロス=ド=ハルモニア。マーカ=ミ=アールスハイド。そしてレオン様の3人です。ですがそれ以外にも主に下級貴族を中心に何名もの令息と仲がよいようです。それもあって上級貴族の令嬢を始め、あまりよく思われていないです。今のところいじめや嫌がらせはありません。アスレイル公爵令嬢が矢面に立つことで押さえているようです」

「そうか……」

「また、最近は魔術学の教師であるシリル=レ=ハイネスの下に何度も通っています」

「……」

 カヅキに調べてもらっていたのはアメリアのことだ。よく考えてみたら俺は彼女のこともあまり知らない。関わりたくないが、知らないのも怖いので、調べてもらった。なんせレオンの記憶は全然あてにならなそうだったしな。

 調べたことについてまとめた書類も渡されたので、受け取って収納にしまう。証拠、というか形に残しておけばもし使うことになった時に便利だろうと思ったのだ。前にサクヤに調べてもらっていた侯爵家のことも資料に纏めてある。

 報告が終った後は、“カラオケルーム”を最大限まで広げてふたりを相手に模擬戦をする。カラオケセットなどをなくせば、かなり広いスペースになる。最近はこうしてふたりかどちらかと模擬戦を繰り返していた。

 この部屋の中だと、魔法はほとんど使えない。使えるのは無属性魔法ぐらいだった。だからこそ、俺はここで魔法を使わない剣と体術のみの戦いや無属性魔法だけの戦いなどをカヅキたち相手にやっていた。魔法を使えるとはいえ、基本は剣と体術だ。それを鍛える。この中なら他の人には見られない。それに、カヅキたちを他の人に見られることもない。

 そんなわけでもう何度もふたりと戦っているわけだけど、未だまともに勝てたためしがない。とにかく素早いし体の使い方が上手い。おまけにサクヤはすぐにどこにいるか分からなくなった……と思ったら、奇襲をしかけて来るし、カヅキは体術がえぐい。するっと懐に入り込まれて何度転ばされたか。逆に投げ飛ばしてやったこともあったが、すぐに体勢を立て直されると自信なくすわ。

 でも、着実に力がついているのを感じるから、よしとしている。ふたりが言うには、魔法無しでここまで戦えるのはすごいらしいし。

 次の日。今日の午後は学園祭の準備だった。騎士科は出し物等がないので、有志で何かやる生徒以外は看板を立てたり荷物を運んだりといった雑用に駆り出される。

 俺は精力的に動いていろんな仕事をやった。その途中でフィオナたちも見かけた。フィオナはエレオノーラ嬢たちと授業中などに作った刺繍や小物を展示するらしい。……時間ができたら見に行きたいな。

 そう言えば、家族から学園祭を見に行くって伝言をもらってたっけ。母は行くというし、都合がつけば父と兄の一家総出で来るみたいだ。……母の目的は多分俺じゃなくてフィオナだろうけど……。

 闘技会で無様な姿は見せられないな。気合いが入ると同時にプレッシャーも感じる俺だった。

 次回、いよいよ学園祭が始まります!

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