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    5-4 ダメ男は相談を受ける

 いつも読んでくださってありがとうございます!


 度々話題に上ってきた学園祭が、ついに近づいてきました。これから学園祭編に入ります。メインはやはり話題に上っているイベントです。楽しんでいただけたら嬉しいです!

 授業が始まってから早くも1ヶ月が経とうとしていた。学園祭まで後2週間をきり、学園内も少しそわそわしているように感じる。

 この1か月の間、俺は授業を受けて、普通に学園生活を過ごしていた。カルロスたちとは適度な付き合いを心掛けた。……時々アメリアに連れまわされることもあったが。

 逆にフィオナを見かけることもあった。友人と話していたり、花壇の花に水をあげていたり……。『生活魔術学』の授業では、毎回しっかりとノートを取り、実践もこなしていた。フィオナは自分で色々とやってみたと言っていただけあって、とてもスムーズに魔法を使っている。

 「音楽」の授業では、声の出し方などを練習しているからか、声をさらに出しやすくなったと思うし、「器楽」では今ピアノをやっていて、指の動かし方が前よりもスムーズになってきていた。

 そんなある日、たまたまシリル先生の研究室の近くを通りかかった時、“気配察知”にアメリアの反応が現れた。場所は……シリル先生の研究室の中? なんでそんなところに? カルロスたちもいないみたいだし。

 と、アメリアの反応がこちらに向かってくる。しかしどこかに逃げるには時間がない。ええい、“カラオケルーム”!

 俺は前のように“カラオケルーム”を最小サイズで展開した。次の瞬間、ドアが開いて、アメリアが顔を出した。

「失礼しました~」

 ドアを閉めると、そのまま俺がいるのとは反対方向に歩き出す。……俺に気づいた様子はない。姿が見えなくなったあたりで、ほうっと息を吐いた。“カラオケルーム”も解除する。

 こそこそと逃げているみたいで我ながら情けないが、関わると疲れるのもあって今はこれが精いっぱいだ。

 ……そう言えば、最初に話していた時にはなんかゾワッてなったり、なんかボーっとするようなことがあったけど、最近はないな。多分、「魔力制御」を手に入れたあたりからか? その辺から少なくなっていった気がする。ただそのかわり、兄が言っていた“嫌な感じ”ってのを感じ取れるようになった気がする。うまく言葉にはできないけどなんか感じるんだよな……。

 とにかく、なるべく関わらない方向でいこう。そう決めた俺は、その場を後にしたのだった。


 次の日、俺は『生活魔術学』の授業を終えて荷物を纏めていた。しかし、今日学んだ“床磨き”の魔法は中々いいな。今までに学んだやつも使って部屋をさらに綺麗にしてもいいかもしれない。

「あ……あの、レオン様」

 呼ばれてみると、そこにはフィオナの姿が……。珍しくひとりだ。授業中はエレオノーラ嬢もいた気がするけど……。

「何かな?」

「あの……お時間をもらっても……よろしいでしょうか」

 なんだか困っている感じだ。何かあったのか?

「構わないよ。……なにか問題でもあったのかい?」

 そう問いかけると、フィオナは周囲を見ながら、「その……ここでは」と言いづらそうにしていたので、人がいなくなるまで待つことにした。幸いこれが今日最後の授業だったのもあって、ほどなくふたりだけになる。

「……カヅキ、ここへ」

「………はい」 

 呼ぶとすぐに、カヅキが現れた。……やっぱりすげえな。

「周囲の警戒をしてほしい。誰か来たら教えてくれ」

 カヅキは頷くとすぐにいなくなってしまった。俺にはもったいない部下なのでは? と思ったけど本人たちが俺を主に選んだわけだし……大切にしよう。うん。

 フィオナを見ると、驚いたのかやや目を見開いている。多分カヅキが仕事をしているのを見るのは初めてなんだろうな。

「カヅキに見張ってもらってるし、今この場所にいるのは俺たちだけだ。それで、……フィオナの話は何かな?」

 名前呼びが慣れていないからかややぎこちない。そして呼ばれたフィオナは、少し頬を染めているような……。やめて。こっちまで恥ずかしくなるだろ。

 気を取り直してフィオナの話を聞く。それによると、フィオナは学園祭で“歌い手の集い”に出ることになったのだという。しかも、予選はもう済んでいて、本選への出場が決まったそうだ。

「それは……すごいな。フィオナは歌が上手かったんだな」

「……もともと嫌いではありませんでしたから……。でも、授業以外で歌うことはありませんでしたし、その……以前のレオン様は歌がお嫌いだったので」

「今の俺は好きだから気にしなくてもいい。……それで、相談と言うのは?」

 するとフィオナは、少しの間躊躇(ちゅうちょ)するように視線をさまよわせていたが、やがて口を開いた。

「レオン様。私の誕生日に歌っていただいたあの歌の……歌い方を教えて下さいませんか?」

「あの歌を?」

「はい。……本選は好きなものを歌っていいとのことなので……。私は、レオン様に聞かせていただいたあの歌が一番心に響きましたから……。できたら、歌ってみたいと思って……」

 そんなに気に入ってくれたのは嬉しいな。……だけど教えるのはなあ。俺音楽の先生じゃないし……。あ。“カラオケルーム”があるじゃん! あれなら歌い放題の練習し放題! 原曲を聞くこともできる! 少し不安なところはあるけど、あの曲に英語とかは入ってないし、多分平気だろう。よし、そうと決まれば。

「……俺はあまり教えられないけど、練習するための場所だったら用意できる。それでもいいかな?」

 そう言うと、フィオナはぱっと顔を輝かせて、お礼を言ってきた。時間と場所をその場で決めて、彼女と別れる。……最初と比べると、笑顔の比率が増えてきた気がする。よかったよかった。

 放課後、俺は寮の庭の片隅に来ていた。ほどなくしてフィオナもやってくる。

「レオン様。先ほどは、ありがとうございました」

「いいんだ。婚約者なんだし、遠慮はいらない」

「は、はい……」

 さてと……。“気配察知”に反応はないな。

「フィオナ。これから俺がやることと見たこと、聞いたことは他言無用で頼む」

「……分かりました」

 フィオナが返事をしたところで、もう一度目視もいれて確認してから、カラオケルームを召喚する。すぐに俺とフィオナの前にドアが現れた。

「れ、レオン様! これは……?」

「大丈夫だ」

 俺はドアノブに触れてドアを開き、中に身体を滑り込ませる。そしてフィオナを招き入れた。

 中はいつもと変わらず、ソファにテーブル、液晶の画面がある。広さは8畳ほどになっていた。ちょうどいい感じかな?

「レオン様。ここはいったい……」

 フィオナはそわそわと落ち着かない様子で目を白黒させていた。確かに、見慣れないものしかないもんな。ひとまず照明を明るくして、ソファにいざなう。部屋が急に明るくなったことにびくついているフィオナを見て、先に説明を入れた方がよかったかも、と今更ながら思った。

「ここは、俺が持っているスキルの力で創られた空間だよ。……って言ってもまだ混乱してるよな。ここで何ができるのかをまず見せるよ」

 そう言うと、俺は立ち上がってカラオケマシーンに近づいて操作をする。……BGMは小さめにしよう。曲はこれで……と。

「音が出るから、驚かないでね」

「え?」

 と、液晶パネルに曲名と映像が映し出され、演奏が流れ始める。備え付けのマイクを持って俺は準備万端。一方フィオナは何が起きているのかわかっていない様子。……だけど、流れる演奏に乗せて歌い始めると理解し始めたみたいで、ソファに座って俺を見ていた。

 そのまま一曲を歌い終えたところで説明をした。これは俺が持つスキルの力のひとつであること。ここでなら歌う練習ができることなどを説明した。フィオナは何とか理解しようとしているみたいだ。ゆっくりでいいよ。ゆっくりで。

「スキルの力とは、すごいのですね……。こんな空間が作れるなんて……。これも前世に関係があるのでしょうか……」

「そうだろうね。どうも転生者であることが手に入れる条件のひとつみたいだし……あと、こういう自由に歌える場所は、前世の世界だといたるところにあったんだ」

「……それだけ、人々に音楽が親しまれていたのですね」

「確かに、歌うのが職業の人もたくさんいたよ」

 ひとしきり話した後は、スマホの“楽曲再生”で、原曲を聞かせたんだけど……フィオナは小さな薄い板から音楽と人の声が聞こえるということがかなり衝撃的だったみたいで、目を回して気絶してしまった。……本当にごめん。

 さっそく役立つ時が来ました。でも浮かれすぎてますね。タイムスリップしてきた過去の人だったりが、テレビやラジオなどを見て驚くのって結構定番だと思うのですが……。

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