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    5-3 ダメ男は授業を受ける

 いつも読んでくださってありがとうございます!

 今回は学校生活の詰め合わせです。

「お! じゃあ今年は本気のレオンとやり合えるのか! そりゃあ楽しみだ」

 剣術の授業中、ラシンはそんなことを言ってきた。今は剣を素振りしている最中。ちょうど先生は離れたところにいる。

 ラシンとシャーロットもやはり学年の代表になり、本選を目指すらしい。本選に出るというのは結構な名誉らしく、活躍すれば視察に来ている騎士団の人からスカウトされたり、学園からの推薦状をもらいやすくなったりするんだとか。特に騎士科には、下級貴族の次男や三男など、将来が不安定な人もかなりいるようで、皆この行事に真剣に取り組むそうだ。

 ちなみに、ふたりは夏休みの討伐で活躍したこともあって報奨をもらい、叔父上から「将来騎士団にくるなら歓迎する」とまで言われたそうだ。前世で言うならば、ほぼ内定をもらったようなものである。

 だけどふたりはそれに甘んじることなく、さらに上を目指す覚悟で今回の闘技会に臨むという。……それでこそ、このふたりだよなあと思った。

「じゃあ、この前は共闘したけど、今度はライバルだな」

「そうだな。魔法も全部使って、どこまでやれるのか。今から楽しみだ」

 正直、魔法も使ったらどうなるのかわかんないな。剣の腕だと、シャーロットが一番強くて、俺とラシンが同じくらいだ。でも、魔法も合わさったらどうなるんだろう? ラシンは、あまり魔法が得意じゃないみたいだが、シャーロットは魔法巧者みたいだし。領地での討伐の際には魔法を使った攻撃もしていた。ラシンは主に身体強化系の魔法を使っていたような……。でも魔法で創った槍みたいなのを投げていた気もする。……実際にやってみないと分からなそうだな。

 予選が行われるのはもう少し先だけど、楽しみだな。俺はどこまで行けるのか。その時に備えて、しっかり鍛錬しないと……。


「これで今日の授業を終わります」

「ありがとうございました」

 教室の前にいた先生が、教室から出ていった。ふう、けっこうおもしろい話だったな。

 今終わったのは「薬学基礎」の授業だ。俺が選んだ自由選択科目のひとつである。初回の今日は、ポーションなどの材料になる薬草のもつ可能性についての話だった。今なお新しい使い方が見つかる薬草たち、それらを知ることは必ず武器になるということを先生は力説していた。

 お昼を挟んだ後にあったのは「音楽」の授業だった。これも自由選択科目だな。これは「歌唱者」のスキルが発現したからというのもあるし、前世では独学だったので、どうせならしっかりと声の出し方などを学んでみたいと思ったからだ。なお、「憑依演奏」のこともあったので、「器楽」も受けるつもりだ。「音楽」の授業の場所は音楽室だ。ただ、学園には音楽室が複数あって、迷いかけた。何とかたどり着いた教室内には、女子生徒がたくさん。……歌い手の聖女様の影響が強いからか、歌うのは女子、楽器を弾くのは男子、みたいな空気がある気がする。多少の視線を浴びつつ、教室の隅の方に腰を下ろした。

 今日はガイダンスの形で、授業の計画の説明があった後は、デモンストレーションとして、先生が、かつて聖女様が歌ったという歌を披露してくれた。伴奏をしたのは、音楽専攻の生徒だという男子だった。こげ茶色の髪に眼鏡をしている。

 曲はやはりオペラに近いものだったが、確かに心を揺さぶられるものだった。

 その後は軽く発声練習をして終わりになった。

 また別の日。今日も選択の授業があるので、指定の教室へと向かう。とここで、“気配察知”に反応が。この先の角から、アメリアたちが来るみたいだ。

 “気配察知”は何度も使い続けたからか、さらに強化されていた。範囲こそ自分を中心に70メートル程だが、範囲内に入った存在の名前が表示されるようになったのだ。嬉しい成長だ。

 さて……と。今いるのは1階にある外とつながる廊下だ。俺は廊下から外の方に出ると、すぐさま“カラオケルーム”を、自分を中心に展開する。こうすると最初から中に入った状態にできる。大きさは最小サイズだ。

 それからすぐに、角からアメリアとカルロス、マーカスが現れた。3人は外にいる俺に気づくことなくおしゃべりをしながら通り過ぎていった。“気配察知“の範囲から外れ、目視もできなくなったところで能力を解除する。……うまくいったな。

 マジックルームの機能を利用した気配の隠蔽。思った通り躱すことができた。もともと風魔法などの力で成し遂げようとしていたけれど、まだまだ未完成だったからな。……まさかこんな形でできるようになるとは思っていなかった。

 てか、なんで俺は隠れてるんだろう? ……アメリアと関わりたくないからか。ついでにカルロスたちのアメリア信仰みたいなのにうんざりしているからってのもあるか……。悪い奴らじゃないんだけど、微妙に話が合わなくてストレスになるんだよね。最近は、ラシンたちとか、フィオナと居る方がずっと気が楽だし、居心地もいい。

 このままつかず離れずくらいの距離感にしたいもんだ。 

 そんなことを思いながら、俺は廊下に戻って先を急いだ。

 指定の教室に着いたので、早速中に入る。教室内の人はまばらだった。50人は入りそうな教室だけど、20人いるかどうかといったところだ。これからもっと来るのか?

 空いている席に座って待つこと少々。少しずつ人が増えてきた。それでも30人もいないな。……あ。また誰か来た。——あれ?

「あら。こんなところにいらっしゃるなんて、どんな風の吹き回しですの? 教室を間違っているのではありませんこと?」

「エ、エレン……! ご、ごきげんよう。レオン様」

 教室に連れだって入って来たのはフィオナとエレオノーラ嬢だった。すごい偶然だな。相変わらずの辛辣お嬢様口調である。でも、ここにいるのは俺だけなんだがなあ……。アメリアたちとセットだと思われてるのかも。

「確かにこの教室で合っていますよ。あと、今は俺しかいませんよ」

 そう反論すると、エレオノーラ嬢はあたりを軽く見回した後、「そうですの」と一言だけ言ってから、空いている席に座った。俺とはいくらか離れている。フィオナは、ちらちらと俺を気にするそぶりを見せながら彼女の隣に座っていた。

 それ以降は話すこともなく、数分後、授業開始のチャイムが鳴って、担当の先生が教室に入って来た。若い女の先生だった。

「皆さん、『生活魔術学』の講義にようこそ! 私はこの講義を担当するカーリン=シュラットです。気軽に“カー先生”と呼んでください。これからよろしくお願いしますね」

 自己紹介の後、先生はこの授業の内容について説明してくれた。

 この授業は『生活魔術学Ⅰ』と『Ⅱ』、『Ⅲ』を同時にしていること。授業は座学と実践を繰り返すこと。成績は魔法の出来や授業中の態度を元にする事、など。

「それでは今日は、いくつかの魔法を使ってみます」

 一通りの説明が終わった後、先生はそう言うと、教室の一点に足を進めた。そこには、何かのシミみたいなものがあった。

「これはおそらく、別の講義で付いたものでしょうね。ではこれを……“クリーン”」

そう唱えてその部分に手をかざすと、ぽうっと一瞬だけ光って、光が収まるころにはシミはきれいさっぱりと消えていた。おお……‼ すごいな。

「これはクリーンの魔法です。効果は指定した範囲の汚れを綺麗にする、です」

 さっそく先生が説明を始める。

「……そうですね。まだ汚れている場所がありますし、誰かに実際にやってもらいましょうか」

 説明の後に、先生はそう言いながら教室を見回した。

 確かによく見てみると、教室の所々にシミや、何かが焦げたような跡があった。……何をしたんだろ?

 ひとまずそれは置いておいて、俺はさっそく立候補する。できるようになったら便利そうだし。そもそもこの授業を受けようと思ったのは“面白そうだったから“だしな。

 数人呼ばれた後で、俺もまた先生に呼ばれて向かう。その場所にはなんか焦げたみたいな跡が。

 先生に言われたとおりに、焦げた跡のある壁に意識を集中させながら魔力を放つ。……“クリーン”

 すると、魔力が少し抜ける感覚がして、パッと光る。そして光が収まると、そこには綺麗になった壁が。

 やっぱりすごい。

「今日使った“クリーン”ですが、もっと広範囲を綺麗にすることもできます。やろうと思えば、この教室の全てを一度に綺麗にすることもできるんですよ。それもあってか、かなり使われる頻度は高いですね。……ただ、範囲が広がれば広がるほど、効果が薄くなってしまうという欠点もありますが」

 そんな説明の後、今日の授業は終わりになった。

 他の生徒たちが教室を出ていく中、エレオノーラ嬢は、俺の方を無言で見ていた。けど、すぐに荷物を持つと教室を出ていった。フィオナは俺に会釈してから後を追いかけていった。……敵意は向けられなくなったけど、今度は観察でもされている感じだな。……なんなんだろ?

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