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転生したら、ダメ男でした⁉  作者: 三條政孝


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    4-10 ダメ男は領地を巡回をする①

 ブックマーク・評価・感想・誤字報告など、いつもありがとうございます!

 今日で魔物討伐を始めてから6日目になる。でも、今日は森には入らず、領内を回って治安維持活動をするようにと指示が出た。昨日までいた森には、別の騎士たちが行くという。多分、怪我人を休ませるための措置なんだろうな。昨日の騒ぎで離脱者が多かったところは班を編成しなおして任務にあたっていると聞くし。自分たちはカイルの怪我も運よくポーションですぐに治るくらいのものだったこともあり、同じ班での行動になった。

 そして現在、俺たちは馬に乗って移動していた。ひとつめの村では特にもめ事などはなく、次の町へと向かっている途中である。今は班の6人と、並走する馬車、そしてその護衛の騎士を含めたやや大人数になっていた。

 この馬車は途中で合流したのだが、俺たちが向かう町に物資を運ぶ馬車で、騎士はその護衛だった。今は領内のあちこちで騎士やハンターが活動しているため、その支援物資、主に食料を運んでいたのだ。護衛の騎士と情報交換しつつ馬を走らせること1時間ほどで目的地の町に着いた。町は魔物の襲来に備えているのか柵に囲まれていた。でも、一部が無残にも壊されて、そのままになっている。聞いたところによれば、この町は先日魔物の集団に襲われて被害が出たのだという。

 町に入り、物資を降ろす作業まで手伝ったあと、俺たちは町の様子を見て回ることにした。町の中は、綺麗に片付いてはいたが、ところどころに魔物に壊されたらしい跡が見受けられた。道行く人たちの手伝いをしながら進み、やってきたのはこの街の自警団の本部である。ハンターのギルドも隣接していた。ここに来たのは、町の状況を聞くためだ。

 建物の中に入り、所属を名乗ってさっそく責任者に合わせてもらう。余談だが、昨日のことがあったからか、今は俺が班のリーダー的存在になっていた。

 責任者の方が来るまでの間に、建物内を軽く見まわしてみる。壁の一部に十枚を超える紙が貼ってあった。何かと思ってみてみると、いわゆる捜索願いだった。今回の騒動で行方の分からない人も出ているみたいだ。

 もう少し詳しく見ようかと思ったところで、責任者の方がやってきて、奥に案内された。

 責任者の男性はまず、支援物資のお礼と、救援に来てくれたことへの感謝を述べた。町の復興や治安に関しては先に来ていた騎士たちの力もあって順調に進んでいるらしい。

 だいたいの話を聞いた後、先日の魔物の襲撃について聞いてみた。それによれば、普段このあたりで魔物が大挙して町を襲うことがあまりないのだそうだ。だから普段は柵だけで魔物を防ぐことができた。だが、今回はいつもの数倍の魔物がやってきたことで、柵だけではもたなかったという。襲ってきた魔物は、動物系の魔物がほとんどで、少しホブゴブリンなどの人型の魔物が混じっていたらしい。調べた結果、動物系魔物にも人型魔物にも、それらをまとめる上位種はいなかったらしい。上位種と言うのは魔物を統率する個体のことで、だいたい下に“キング“といった名称がつく。

 また、今回の襲撃によって自警団の面々を含め、結構な被害が出ており、中には亡骸さえ確認できない人もいるという。そのことで住民たちはおびえているのだと責任者の男性は話した。

「できることなら、すぐにでも柵を直し、再度の魔物襲来に備えたいのです。でも、作業が追い付かず、柵を作っても壊されて役にたたないのではないかという不安もささやかれていまして……。しかし、領都のように街を防壁で囲うほどの資金もないもので、どうすれば住民を安心させられるか頭を悩ませているのですよ」

 責任者の男性はそう話した。その顔には連日町のために働いているからか、疲労がにじんでいる。

 ……確かに、あの柵は思いっきり破壊されてたもんなあ。あれじゃあ心配になるのも無理はない。今は騎士たちがたくさんいるからいいが、きっと復興が済めばいなくなるだろうし。

 つまりは見て分かる安心感みたいなのがあればいいのかな?

 そう考えた俺は、町を見たときから思っていたことを口に出した。

「なら、環濠を作ったらどうでしょうか?」

「かんごう?」

「はい。簡単に言えば堀と柵ですね。町の周りを堀で囲み、内側に土塁を築いて柵を立てる。そうしたら防御力はグッと上がると思いますよ」

 俺は紙とペンを持ってきてもらい、図を描きながら説明した。

 俺がこの町を見て最初に思ったのが、町の周りに柵(・)し(・)か(・)な(・)い(・)ということだった。町の規模はそれなりに大きいのにかかわらず、防備が低い気がしたのだ。……まあ話を聞く限り、このあたりはどちらかと言うと平和な方だったようで、物々しい防御設備を作る必要性がなかったのだろう。騎士の巡回もあるわけだしな。前に行った村も似たような感じだったし。

 でも今回の魔物の襲撃でそれが裏目に出てしまい、住民たちは不安に思ってしまった。

 そこで提案したのが先の環濠である。発想はもちろん前世の環濠集落からだ。これなら土を掘って堀を作り、出た土を盛って土塁を作ればいいので、城壁程お金はかからないだろうと考えたのだ。

 男性はこの考えに感銘を受けたのか、何度もお礼を言うと町の責任者に話すと言って出ていった。俺も部屋を出てカイルたちと合流し、町の復興を手伝うことにした。


 その日は、町で夜を明かすことになった。夕方、この付近で魔物討伐をしていた騎士たちが狩った獲物を持って町に帰還した。手に入った肉は町の人たちに振る舞うことになったので、俺たちは調理の補助をしたり食事を振る舞うための広場の準備をしたりと、忙しく動き回ることになった。

 広場にはいくつもの簡易かまどが設置され、そのうえで串に刺された肉がジュウジュウと焼けて、その暴力的な香りをあたりにまき散らしていた。その香りに誘われて、町の人たちは広場にやってくると、かまどに集まっていく。

「はーい。一列に並んでくださいね! 慌てなくてもたくさんありますからね!」

 そう声を張り上げてやってきた人たちを誘導しているうちに、肉はなくなっていった。

 広場には結構な人が残って、食事をしている。どの人も、美味しそうに食べていた。日中に見たときは、沈んだような表情を見せている人が多かったように思うが、全体的に表情が少し上向いたように感じた。

 誘導も一段落着いたので広場を巡ってみることにした。その中で広場の隅にひとり、ぽつんと立っている子供を見つける。近づいてみると、10歳くらいの男の子だった。……マルの顔が浮かぶ。元気にしてるかな……?

 その子はぼんやりと、広場の中心の方を見つめていた。近くに親らしき人はいない。迷子かな、と思ったので、声をかけてみる。

「君。ひとりでいるようだけど、お父さんやお母さんはいないのかい?」

 すると男の子は、初めて気が付いたように、俺の方を見た。

「お兄さん……誰?」

「お兄さんは騎士の見習いみたいなものかな?」

「騎士……なの?」

 男の子はじっと俺を見ると、口を開いた。

「ねえ、騎士様は悪い人を捕まえるんだよね?」

「んん? 確かにそうだね」

 すると、男の子は、まるで懇願するように、驚くべきことを言ってきた。

「だったら、僕を捕まえてよ」と。

 男の子が放ったその言葉に、俺は心底驚くことになった。冗談かとも思ったが、それで片づけることができないくらい、男の子の目には真剣な光が宿っていたのだ。

 俺は男の子に目線を合わせると、静かに聞いた。

「君が何をしたか分からないと、捕まえられないんだ。だから、教えてくれる?」

 俺が真剣に聞こうとしているのを察したのか、男の子は話してくれた。

 この街を魔物の大群が襲った日。彼は家族と喧嘩をしてしまい、その時に、『みんないなくなっちゃえばいいんだ‼』と言って家を飛び出した。それからすぐに襲撃があり、彼はすぐに家に帰れず、町の片隅で隠れていたのだという。そして襲撃が収まり家に帰ってみると……家は魔物に襲われたのかひどい状態になっていた。そして、家族は誰もいなかった。父親は街を守ろうと魔物と戦い亡くなっていて、姉と母は魔物に襲われたのだろうと言われた。彼はたった一日にして、全てを失ってしまったのだ。

「僕が……あんなこと言わなければ……お母さんたちは死なずに済んだんだ‼ 僕のせいで……お母さんたちは……」

 しゃくりあげ、涙を流しながらそう語る男の子。その顔には深い後悔が刻まれていた。

 俺は彼の懺悔(ざんげ)のような叫びを、黙って聞いていた。この子はずっとその思いに囚われているんだろう。……無理もないか。不幸な偶然が重なった結果とはいえ、こんなことになってしまえば自分を責める気持ちもわかる。そのきっかけが些細な喧嘩がもとであればなおさらだ。

 とはいえ、この子の言い分が正しいかと問われれば、答えは否だ。悪いのは襲撃して来た魔物たち——その言葉に尽きる。

 でも、それはきっとこの町の人たちだって話したことだろうし、それで納得していないからこそ、こうなっているのだろうしな。

「お兄さん。お願い。……僕は悪い子なんだ……」

 啜り泣きながら俺にそう訴える男の子。その気持ちが痛いほどに伝わってくる。……でも、俺はこの日、結局この子にかける言葉を見つけることはできなかった。


 次の日、俺はもやもやとした気持ちを抱えたまま、町を出ることとなった。全ての人を救うことなんてできない。当たり前のことだけど、悔しかった。そして、この大規模な魔物討伐をする意味を、改めて理解したのだった。そして、それとは別に、俺の中にはある違和感が生まれていたのだった。


 騎士団は日本で言うところの自衛隊と警察の役割をしています。騎士団の中でも主に貴人の警護をする団、有事の際に戦う団など、役割によって分かれています。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 直ぐに何でも解決出来る主人公では無いところ。
[良い点] 騎士として仕事をするってこういう事ですよね 嫌でも直面する機会が多い 男の子が魔物襲撃は己の罪にならないと理解しても、喧嘩別れが最期の会話、本人にとって生涯の傷 男の子に主人公の歌を聞かせ…
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