アルカナ 改
これから8月中旬まで小説の投稿速度が落ちるかもしれないです。
と言うのも、今まで書いてきた小説の見直しや修正に、悪い点や良い点を見つけ、どうこれからに生かしていくかなどを学ぶためです。
より良い小説を書き、皆さんにこの小説の面白さをより伝えていくためですので、ご了承下さい(。>д<)
時を同じくして、地上のとある豪華な一軒家。
その一軒家は誰もが一瞥しただけで分かるほど、明らかに普通とは呼べない異様な雰囲気を醸し出していた。と言うのも、例えば家の中の光を外へ漏らさないようにするためか、窓という窓の全てには釘で木の板を打ち込んでおり、敷地内を見張りが至るところへ巡回する。挙げ句の果てには肌に直接触れただけで脳に酸素が回らなくなり死に至る、という毒草まで家の敷地内に生えているのだ。
それだけ警戒を怠らないお陰か、家の敷地内には見張り以外動くものが見当たらない。それこそ、影の1つも見当たらないのだ。
やや老け顔で白髪交じりの年をとった男は……いや、彼の事は日本の大統領と言った方が聞こえが良いだろうか?日本の総理大臣である川岸総理は、その一軒家の一室で手足を鉄の鎖で縛られ、自由に身動きが取れないよう拘束されていた。
「一体君達は、私に何をするつもりなのですか?」
川岸総理は唯一拘束されていない口を動かし、目の前にいる3人の男女から何を行うつもりなのかを訊ねた。
「あんたが『アルカナ』についての詳しい情報を知っている、っていう情報をうちのボスが仕入れたもんでね。詳しく話を聞かせてもらうために、誘拐させてもらっただけさ」
長身の女性ーーアンナは、盗賊のつもりなのか頭には黒いバンダナを巻いており、動きやすさだけを追求したかのような、見た目と機能を限りなく捨てているシャツとズボンという服装で川岸総理に応えた。
「なるほど、そういう事でしたか」
川岸総理はなるほど納得、と言った表情をしてそのまま黙り込む。鎖に縛られて動けないでいると言うのに、川岸総理はずいぶん余裕そうに安堵した表情を見せる。
マイペースと言うか薄情と言うのか、川岸総理は目の前で側近を何人も殺されたばかりだというのに、どうやら何とも思ってないらしい。
だがその余裕、いつまで続くか楽しみだとアンナは思った。
――アルカナ。何のために存在し、いつから存在していたのか?それだけではない。どういったアルカナが存在し、どうやってアルカナを獲得するのか。全てが謎に包まれた特殊な力。
古の言い伝えでは『アルカナを持つ者に世界の一角を統べる力を与えん』とだけ言い残されており、『アルカナ』を獲得するために幾つもの国が戦争を行い、数えきれないほどの死者を出してきた。
そんな未知の力についての情報をこの男が知っている。そうアンナはボスから教えられた上、川岸総理がこの国の王でもあると聞かされた。もしアルカナについて何も知らないと白を切ったとしても、裏から操って利用すれば良いとボスから言われている。だからアンナは川岸総理を誘拐したのだ。
「アンナ、こいつがこの国の王ってほんとな訳? Cレベル1の雑魚じゃん、早く殺っちゃおーよ!」
一見何処にでもいるような女子高校生に見える女、リンは右手に持つ黒いナイフに舌舐め刷りをしながら、アンナに抹殺の許可を得ようと声をかける。
「落ち着きなさい、リン。殺すのはたっぷり利用してからよ」
「ちっ」
だがアンナに一蹴されると露骨に舌打ちをし、顔を歪ませて不機嫌さを露にした。
「それじゃ、ボチボチ答えてもらおうか? 川岸総理?」
アンナは川岸総理にそう言うや否や、自身の右手の辺りに銃を出現させた。そして、脅すように銃口を川岸総理へ向ける。
だがしかし、川岸総理の表情は一切変わらない。何をされても口を割らない自信があるのか、あるいは仲間が助けに来るとでも思っているのか?何にせよ、この男は馬鹿だという意味で大物だとアンナは評価した。
しかし――
「……ふむ、それで私からアルカナの何を知りたいのでしょうか? 異世界のーーいや、パンゲアの世界の住人さん?」
川岸総理はにこやかな表情1つ崩さず、そう言ってのけた。
その口ぶりは例えるなら、貴女方の全てを知っていますよ。と言っているかのようで、挨拶代わりにと放たれた言葉の先制攻撃をアンナ達は受け、驚きを隠す事が出来なかった。
「っ!? 何の事だ、そんな事よりもアルカナの」
「ええ、分かっておりますとも。ここ地球が存在する世界とは違う、パンゲアと呼ばれる世界からこちらへいらっしゃったのでしょう?」
川岸総理は捲し立てるように言葉を続け、アンナに喋らせる隙を与えない。アンナの言いかけた言葉を都合の良いように解釈し、更に追い討ちをかけるように言葉を紡ぐ。
察しの良い人ならば既に気付いているかもしれないが、パンゲアとはROの世界名の事である。そして、ROの――いや、地球に住む人間ならばは普通、ROについての全てを忘れているはずなのだ。……にも関わらず、川岸総理は次から次へとROの知識を知らなければ答えられない事を言ってのける。事情を知っている者からすれば、この時点で川岸総理は十分脅威に値する。
「ほっほっ、何故そんな事を知っている? という顔をしてらっしゃいますね。簡単ですよ、私がROというゲームが存在し、パンゲアという世界が存在していた事を覚えている。ただ、それだけですよ」
その言葉を聞き、ついに動揺を隠す事をやめたのか、リンの隣に待機していた男が怒声を放った。
「それ以上喋ってみろ……殺すぞ!」
「バルツ! やめろ!!」
バルツと呼ばれた男は両手に細身の剣を1本ずつ持ち、アンナの制止を振り切って1本の剣を川岸総理へ投げた。
もちろん急所は外して足首に、だ。……とは言え、相手はCレベル1の雑魚なので、下手をすると死んでしまうかもしれないが、まあいいだろう。本当に死んでしまったら、全てアンナのせいにすれば良いだけだ。
しかし、バルツの予想は大きく外れる事となった。
「……お前、何者だ!?」
剣は確かに川岸総理の右足首に突き刺さり、そこから血が滲み出ているのが見て取れる。本来ならば激痛に顔を歪め、対話など出来なくなっているはず。ーーだと言うのに。
「うぐ……流石に本物は痛いですね。ですが、この程度ですか」
川岸総理は一瞬顔をしかめただけで、また先ほどまでの表情に顔を戻したのだ。こんな事はCレベル1の人間では絶対にあり得ないこと。これにもその場にいた全員は驚きを隠せずにはいられなかった。
呆然としているアンナ達に代わり、川岸総理が口を開く。
「さて、アルカナについてですがーー」
が、その言葉が最後まで紡がれる事はなかった。後ろから扉が開かれる音が部屋中に響き渡り、川岸総理を含めた全員がそちらへと意識を向けたからだ。
……そして、部屋に入ってきた人物をアンナ達は見るや否や、顔色を一変させた。
「ボ、ボス!? 今日は留守にするはずだったのでは!?」
そう、扉を開けて入ってきたのは、アンナ達のボス――数日前、シロを観察していた謎の男だった。
アンナ達のボスはアンナの問いに答える事はせず、川岸総理に向かってゆっくりと歩みを進めーー重々しく口を開いた。
「久しいな、旧友よ」
「なるほど、この方々のボスとは君の事だったのですね。懐かしい」
2人が言葉を交わした後、しばしの間静寂が訪れた。当然だ、その場にいた誰もが口を開かなかったからだ。
理解が追い付かず、呆然とするしかないアンナ達。ただ分かる事はと言えば、2人が知り合いらしいと言う事だけだ。
しかし、その静寂はアンナ達のボスにより破られた。それは戦いの幕開けを表したかのようだと、アンナは本能的に理解した。
「塵も積もる話もあるだろう、だが……今の我々は敵同士だ。……後は分かるな?」
「……ええ、もちろんですよ」
何がどういうことなのか、全てを教えてほしい。そうアンナ達は思った。だがボスから発せられる威圧は凄まじく、辛うじてアンナ達の意識が保てるよう調整されている。何か口を開いたが最後、刹那のうちに殺されてしまうだろうという恐怖が、アンナ達を束縛していた。
そんな中……川岸総理はゆっくりと、だが確実に口を開き――そして、こう言った。
「ようこそ、我々の住む世界へ」
Q.川岸総理は何者?
A.ただのCレベル1の人間です。ついでに日本の凄い偉い人です。でも、普通なら大山隊長よりは弱いはずですね。まあ、掴み所のない人間という事で覚えておいてもらえれば良いかと(・・;)




