秘密の話
時刻は午後11時を過ぎ、皆が寝静まった頃。
レジスタンスのお家に広がる謎の明るさは、夜になると段々光源が弱まるように設定されているらしい。この時間になると辺りはほとんど真っ暗で、手元にある物でも目を凝らさなければ見ることすら出来ないーーそんな中。
ボクの部屋では、ボクとクロが隣り合うよう互いに布団にくるまり、シロはクロの側の壁にもたれかかりながらすやすやと寝息を立てていた
ボクは壁にもたれかかって寝ているシロを起こさないよう、慎重にゆっくりと布団をめくり、横に寝ているクロへ耳打ちをした。
「クロ、もう大丈夫だよ。シロを起こさないようにゆっくり起きてね」
「ひゃっ……!」
ボクの耳打ちが余程くすぐったかったのか、クロは小さく呻き声を漏らすと、もそもそと布団から出てきてくれた。
「な、何ですかラティア様ぁ……。こんな時間に、クロに何をするおつもりなのですかぁ……」
「え、もう忘れちゃったの? いくら身体を綺麗にする魔法ーーもとい状態異常を取り除く魔法【浄化】があっても、たまにはお風呂に浸かってのんびりしたいでしょ? だからシロが寝た後にこっそりついてきてって言ったよー?」
「……あ、あぁ……。 そうてした。でも……のんびりしたいならば、ラティア様お1人の方が良いのでは? それに、何故シロが寝た後なのですか……?」
……クロの言う通り、全くもって正論である。
だけどボクがここで引いたら、何のために寝たふりをし続けてシロの目を盗んだのか分からなくなってしまう。
シロのため、クロのため。それに知りたいこともある。クロには何がなんでもついて来てもらうよ!
薄暗い暗闇の中。ボクはクロを両手で抱き締めて、クロの耳元で優しく囁いた。
「ううん、クロと2人でお風呂に入りたいんだ。……だめ?」
突然抱かれたからなのか、それとも耳元で囁かれたからなのか。クロはビクッと1度だけ身体を震わせたが、ラティアのぬくもりを肌身で感じるのが心地良いのか、次第にラティアへ身を任せていた。
「ラティア様、温かくてほっとします……」
「はいはい、早くお風呂に行こう?」
シロもそうだったけど、クロにこういう事をしても恥ずかしい気持ちが沸いてこない。それどころか、気持ちが落ち着いていくのを感じるんだ。
おかしいな、スーやアイカさんならこんな事は恥ずかしくて出来ないのに。
「……不束ものですが、お、お供させて頂きます」
クロはボクの顔から目を逸らしてはいるものの、確かにそう言った。
……不束ものって、それはお嫁さんになる人が言う言葉だよ、クロ?
例え数十人が入っても、広さに余裕がありそうな大浴場。
天井は此処が地下だとは思えないほど高く、端から端までは50メートルくらいあるだろう。
そんな広大な浴場の中、部屋のど真ん中にある大きな円形の浴槽からゆらゆらと白い湯気が立ち込め、ここがお風呂だと言う事を主張する。
そんな大浴場に、ボクとクロは足を踏み入れていた。
「本当に此処って地下なのかな……?」
ボクは改めてレジスタンスのお家の広さや非現実さを実感し、驚きを隠せずにはいられなかった。
レジスタンスのお家では、通路や廊下と言った場所は全て四方八方が土で出来ており、洞穴のようになっている。
だが四角く開けた空間ーー何かしらの部屋の前からはフローリングの床に変わりだし、石の上から白いペンキを塗ったようなごつごつとした壁に変わっていく。
だがこの大浴場は少し違う。床は大理石のようなつやつやとしたひんやり冷たい石が敷き詰められ、壁は滑らかな白いタイルで出来ており、所々柱が立っている。
おまけに、この浴場は夜でも明るいのだ。
「あの、クロのためにこんな立派なお風呂へ連れて来て下さって……あ、ありがとうございます」
「良いよ良いよ、気にしないで。ここならボク達以外誰もいないし、のんびりとくつろげるからさ。少しクロと話をしたいと思ってついてきてもらっただけだし」
クロはラティアの1歩後ろを歩きながら、ふと気になった事をラティアへ投げかけた。
「えと、何の話をするのでしょうか?」
「簡単だよ、クロについて教えてほしいんだ。どうしてボクに襲いかかってきたのか、どうして今は大人しいのか、どうして写し身の鏡は灰色に曇って何も写さないのか……この3つが知りたいな」
ラティアは壁際までたどり着くと、壁に備え付けられているシャワーを浴び出し、クロが話始めるのを待った。
「すみません、クロがどうしてラティア様を襲ったのか……分からないんです」
「へ?」
「その……あまり記憶が定かではなくて。クロが覚えているのはシロとしての記憶がほとんどなんです。正直クロが写し身の鏡だと言うのが信じられないくらいで……うう、すみません……」
クロはしょんぼりと頭を項垂れ、顔を隠すようにシャワーを浴び出した。
(ボクに襲ってきたのは、写し身の鏡としての本能だったからなのかな?クロを誰かが操っていたとかは考え辛いし。ボクが力任せに鳩尾を殴ったから、ショックを受けて鏡としての記憶が飛んでしまった……とか? まだ力の使い方がイマイチ分からないけど、それでクロは自分の事をシロだと思い込んでいた。……うん、これなら辻褄は合いそうかな?)
これじゃあ色々と知りたい事を追及出来ないな……。とラティアが考え始めた頃、クロはシャワーの詮を閉じて、前髪から水滴を滴らせながら口を開いた。
「でも、クロが鏡として覚えている事も無いわけではなくて……」
「ほんとっ!? 覚えている事なら何でも良いんだ、ボクに話してくれないかな?!」
ラティアは無意識のうちにクロの両手を掴み、頭を下げていた。一瞬何が起きたのか分からなかったクロだが、ラティアに頼られている事を次第に理解し、ぱぁっと花が咲いたような笑顔になった。
「……はい! ラティア様だけなら大丈夫です! でも、その、お願いがあって。どうか他言無用でお願いしますっ!」
――そしてクロは、ボクの予想を遥かに上回る言葉を口にした。
――――です。
それを聞いたラティアは、身体から血の気が引いていくのを感じた。
それは例えるなら――知ってはならない事を知ったような……ゾクッとした気分だった。
クロから一体、何が告げられたのか?
次回は来週に投稿予定なので、楽しみにお待ち下さると幸いです(*´∀`)(来週話すとは言っていない)
《その頃地上では~》
数宮「俺、もう帰って良いか? 待機していてくれって言われてから2話以上待ってるんだけど」
大山(魔物との戦い前編推奨)「俺なんかずっと出番がないんだが。あれか? 俺はモブだったって訳か?」
※ちゃんと裏で行動してくれている、はずです。
レンジ「大山さん? あんた、俺とキャラ被ってねえか?」




