宝物庫と資料室
ラティア達から別れた後。シロは宝物庫に足を踏み入れ、ラティアか言われた通りに目ぼしいものがないかを調査していた。
……え?『宝物庫に入る時、扉に鍵はかかっていなかったのか』ですか?もちろん鍵はかかってましたよ。だから宝物庫の扉は力任せに叩いて、無理やり入りました。
「しかしまあ……大層な名前の割には、使えそうなものはないですね……」
宝物庫という名前からして、金銀財宝ざっくざく!珍しい武器や防具がさっくざく!……などと少し期待をしていたシロだったのだが、いざ宝物庫の中を調べてみればガラクタばかり。そもそも宝物庫という割には部屋の広さが5畳程度しかないし、壊れた銃や折れた剣、使い道が分からない金属の塊などで埋め尽くされていたのだ。
「元の世界なら1つくらい使えるものが入っていたのに……」
シロはこの世界の評価に1つマイナス点をつけ、ラティアの元へ行くために出口へ足を進めた……その時だった。
微弱ではあるものの、シロは邪悪な魔力の波動を感じ取ったのだ。
「おや? 先ほどまでは何も感じなかったのですが……」
シロはすぐさま警戒体勢に入り、念のために【守りの護符】を自分の周りに張って様子を窺った。
……しかし、いくら様子を見ても何も起こらない。確かにガラクタの山から魔力の波動を感じるのだが、一向に動きを見せて来ない。
(この程度の魔力なら……雑魚ですね。さくっと片付けても良いのですが、多少は知能もあるようですし……軽く脅してみましょうか)
痺れをきらしたシロは護符を3枚右手に持ち、そこにいる何かに向けて静かに声をあげた。
「……誰ですか? そこにいるのは分かっているんですよ、姿を見せなさい」
そう言ってシロは【サーチ・アイ】を使用する。……が、おかしな事に視界には何も表示されない。通常生きている者か魔物であるなら必ずステータスが表示されるというのに、ステータスの『ス』の字さえ表示されないのだ。
(……嫌な予感がします。さくっと片付けておきましょう)
シロは右手に持っていた護符を1枚、何かがいる場所に向けて放とうとしてーー
「……あ、あれは!!」
ガラクタの山に埋もれていた何かを、見てしまった。
……――様っ!
「……シロ?」
……変だな。一瞬シロの声が聞こえたような気がしたんだけど……やっぱり何も聞こえないし、気のせいか。
「おっとと、今はこの崩れた本の山を何とかしないとだよね……」
ラティアは目の前にある崩れた本の山に意識を戻し、1冊1冊丁寧に本を本棚に戻し始めた。
ラティアのいる資料室には大量の本が床に散乱しており、更に無数の本棚が倒れているため……足の踏み場が全くないという酷い有り様になっていた。
とはいえ本が元々散乱していた訳ではない。ラティアがうっかりドジを踏んだせいで床一面に本が散乱し、この状況が生み出されているのだ。
変わった本はないだろうか?そうラティアが本棚を調べ回っている時の事だ。
『あれ、あの本何だろう?』
部屋の隅に置かれている、一見おかしなところのない本棚。
その本棚の1番端に、周りの本と比べると不自然な厚さの本が収納されている。見たところ、周りの本と比べて2周りほどその本は薄いだろうか。
ラティアは何となくその本に怪しさを感じ、手に取ろうと腕を伸ばした。……のだが。
(と、届かない!)
本棚の1番高い所にその本は収納されており、ラティアではぎりぎり手が届かなかった。元の体なら届いていたはずだが、そんな事をいっても体は元に戻ってはくれない。
仕方がないので軽く本棚に体を預け、さらに背伸びをする事で本を掴む事に成功はしたが――
『うん、なんとか取れ……おっとっと!?』
本を棚から取り出そうと踵を地面につけた時、重心のバランスをうっかり崩してしまい……ラティアは後ろにある本棚めがけてよろめいてしまった。
常人なら本棚に支えられ、多少の被害で済むはずなのだが……。ラティアの育てすぎた|ステータス(腕力)が、それを許してくれる筈もなく……
『ああっ、本棚が……!』
その結果……。後ろにあった本棚が、収められていた本を吐き出しながらゆっくりと倒れていったのだ。
――他の本棚を巻き込んで。
言葉でそれを表現するなら、ドミノ倒しとでも言うのだろうか。本棚が本棚を押して倒し、倒されていく本棚が更に別の本棚へ当たり、倒していく。
『ボク……今日中に皆のところへ帰れるかなあ……?』
こうして今に至る、という訳だ。
「全然片付かないや……。1度皆のところへ戻って、手伝ってもらおう……」
うん、いくら片付けても1人じゃ終わりそうにないね。あの時手にした本だけ持って、一旦戻ろう……っと。
「……」
「あれ、シロ……? 宝物庫の方に行ったんじゃなかったの?」
ボクが資料室から退散しようとしたら、宝物庫に行ったはずのシロが扉の前に立っていた。
(宝物庫から資料室までは結構距離があるはずなんだけど……走ってきたのかな?)
でも、走ってきたにしてはシロから疲れた様子が見られないんだ。それどころか左手に数枚の護符を持って、ボクの事を虚ろな目でずっと見ている。
「……シロ、大丈夫?」
シロはボクの質問が耳に届いていないのか、相変わらずぼーっとした表情だった。
ボクはシロの体調が悪いのかと心配になってきて、急いでシロに駆け寄った。
するとシロは、左手に持っていた全ての護符を……ボクめがけてゼロ距離から放ったんだ。
咄嗟の事ですぐさま反応できなかったボクは護符に張り付かれてしまい、護符の効力をもろに受けてしまった。
(くぅっ……体の中が焼けるように熱い、まるで血が沸騰しているみたいだ……!)
「シロ、痛いよ……? どうしたの……?」
「……」
おそるおそるシロに声をかけて見たけど、やっぱり反応がない。
ボクはシロが何らかの状態異常にかかっているのだと思い、シロのステータスを確認して見たけど……至って健康そのものだった。
シロ、一体どうしちゃったの……?
たまには後書きがない日があっても良いと思うんです(えっ)




