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リアル=オンライン  作者: 原田まるるん
1章
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効率の良い探索の進め方

「ところでレンジさん。今気付いたんですけど……ボク達、手分けして行動した方が良かったんじゃないですか?」

「「あっ」」

 

 その発想はなかった、とばかりに2人が同時に声をあげ、口を開けたそのままの体勢でシロとレンジは固まった。

 このラティアの意見は正論で、そもそもシロはドーピング剤なしのキャラクターレベル100と同等の力を持っているし、ラティアに至ってはその遥か上の実力を持つ。魔物が現れるかもしれないから、3人固まって慎重に移動しよう。と言うのは、はっきり言って過剰戦力なのだ。


 「「……」」

 その事に今頃気付いたのか、シロとレンジの間には奇妙な沈黙が流れた。


「ちょっと2人とも……? 大丈夫、1つや2つの失敗は誰にでもあるよ!」

 だが……ラティアが口を開いた事で、その沈黙は破られた。

 

「えっと……。それじゃあ1人ずつ手分けして、1部屋ずつ調べよう? それが終わり次第今日はお開きって事で。どうかな?」

 ラティアは苦笑いを浮かべながらも、2人を励ますようにそう話しかける。

「……シロはそれで良いと思います」

「お、俺もそれで構わねえ」

 ただ……とレンジは付け加え、頭をポリポリと掻きながら言葉を紡いだ。


「スー達が心配なんだよ。俺達の帰りがあまり遅くなるようだと、スー達が俺達の身を心配して変な事をするかもしれないからな。だから1度、スー達の元へ戻らせてくれないか?」

「女性に仕事を任せて自分だけが帰ろうとは……最低ですね」


 シロは誰にも聞こえないくらいの声でブツブツと何かを独りごちると、ジトッと目を細めてレンジを睨みつけた。明らかに怒気が読み取れるその目をレンジは見て、言い訳のように慌てて言葉を付け足した。 


「ち、違う! スーが心配なんだよ。『思い立ったらすぐ行動』がスーのモットーだからな、1度走り出したら俺が言って聞かせないと止まらねえんだよ」


 そう言ってレンジは身振り手振りを交え、懇願するようにシロへ説明した。端からその光景を見ていたラティアからすれば、レンジより頭2つ分小さいシロに咎められているレンジは相当かっこ悪いものだった。

 だが同時に、それだけレンジが必死にシロを説得しようとしている事も、ラティアにはすぐに分かった。

 

(いつの間にシロはレンジさんを尻に敷いたんだろう?でも、そろそろレンジさんに助け舟を出してあげた方が良いよね)


 そうラティアは1人で納得すると、2人の世界に足を踏み入れて話を切り出した。

「それじゃあボクは資料室に行ってみるから、シロは宝物庫の調査をお願い。ボクもスーの事は心配だから、レンジさんはスー達の所へ戻っていてよ」


 突然ラティアが割り込んできたからびっくりしたのか、それともラティアがレンジを庇うとは思っていなかったのか。

 ……おそらく後者なのだろう。一瞬だけシロは顔を不服そうに歪めた後、ラティアに返事を言った。


「ら、ラティア様がそう言うなら……分かりました。宝物庫に何か使えそうな物がないか、きっちり調べておきますね」


 何故だかシロは少し凹んでしまったようで、先ほどまでの恐ろしい形相は消えていた。代わりに暗い顔を覗かせながら、重い足取りで宝物庫に向かい歩き出した。


「……ふぅ、助けてくれてありがとな。それじゃ俺はスー達のいる談話室に戻るから、早めに戻って来てくれよ」

「大丈夫、分かってるよ」


 2人は言葉を交わし終えた後、互いの目的のために別々の方向へ歩みを進め出した。




 一方その頃。スーはカフェのようにお洒落な談話室にて、ある1つの問題に頭を悩ませていた。


「うー、やっぱりこの部屋もそうだけど……土っぽい臭いがして何か嫌だなあ……」


 スーは犬の獣人と呼ばれる種族であり、見た目はほぼ人と同じ姿をしている。違いは犬の耳と尻尾が生えている事であり、頭の上にはショートヘアの茶髪に溶け込むようにして茶色の犬耳が、お尻の辺りからは犬の茶色い尻尾が生えているので、犬のコスプレをした少々痛いたしい中学生に見える事だろう。


 だが今回は見た目に関する問題ではない。犬の獣人の身体能力が問題なのだ。

 『犬の』と名前にある通り、スーは犬の身体能力を受け継いでいる。つまりどういう事かと言うと、人間と比べて鼻がとても良く利くのだ。

 そう、『とても』良く鼻が利くのである。


「鼻が利きすぎるのも問題だね……でも負けないぞ! 日常生活で使いそうな部屋だけでも、土の臭いは消して見せるんだから!」


 スーは土のじめっとした臭いに鼻をしかめつつも、持ち前のポジティブさで鼓舞して気合いを入れる。そして談話室の隅っこに備え付けられていた箒を握り、掃除を始めていった。


「……スーはどこまでも明るい。ほんと、眩しすぎるくらいに」

「ふぇ?!」

 突然背後からアイカの声が聞こえてびっくりしたスーは、思わず声の方に顔を向けた。


「アイカぁー……! 気配もなく後ろに立たないでよ、びっくりしたよ!」

「それより、レンジ達の帰りが遅い。探しに行った方が良いんじゃない、迷子になってるかも」

 アイカはいつもと変わらぬ無表情を崩さないまま、スーに淡々とたどたどしい言葉を伝える。

 スーはその言葉の意図を理解した瞬間、顔を真っ青にして箒を投げ捨て、すぐに探さなきゃ!と言い残したかと思えば、嵐のようにその場を後にした。


「……全く、騒々しい」

 アイカは黒く艶やかな枝毛を弄り、小さく溜め息をつく。

 彼女はスーの後ろ姿を視界からいなくなるまで目で追っていたが、視界からスーがいなくなると興味を失ったらしく、ソファに腰かけて本を読み出した。

Q.ラティアってスーの事を犬のコスプレをした子だって思ってるよね、獣人だと気付いてないの?(新しい仲間……?前編より)

A.気付いてないです。今後気づくかもしれないですが、いつ気付いてくれるかは分からないです。


Q.じゃあ、ラティアはスーの事を痛い子だと思ってるの?

A.痛い子だとは思ってないです。犬の耳と尻尾が本物だったら良いのに。って思ってると思います。


Q.ラティアはかなりバカなんじゃ……

A.それ以上はいけません(迫真)

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