30-3
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「十種雲形・積乱雲!」
「いきます! 全弾発射!」
ビルの隙間から一筋の青い光が天へと昇り、雷鳴とともに黒い雨雲を生み出す。それと同時に、無数のマイクロ・ミサイルと銃弾がマジカル☆ミラクル♡フェリーチェ目掛けて駆け抜けていく。
「う、嘘?! あの二人は撃破したはずじゃあ?!」
「それより、回避か防御しなくては!」
「駄目、間に合わない!」
鉛の礫が地面を穿ち、辺り一帯を凄まじい数の爆風が襲う。聞こえてくるのは大小様々な破裂音。飛び散る破片と爆炎とが何もかもを破壊していく。
『やった?!』
『ちょ、吹雪ちゃん~?! それフラグよ~!』
アルテミスがすべての武装を空にしつくす。足元には空の薬莢が山積みとなり、ミサイルコンテナはすっかり軽くなってしまった。
ミラクルスターらが居た場所は白煙で何も見えなかったが――――
そこに彼女たちは毅然と立っていた。
「私達は……負けない……!」
三人は魔法の杖でそれぞれ三方向へとバリアを展開していたのだった。しかし、アルテミスの圧倒的火力をまともに受けたバリアはことごとく破られてしまい、本体への大きなダメージを許してしまったのだった。
「絶対に……倒れませんわ!」
見るからにボロボロ、残りHPも殆ど無い。しかし、それでもバトキュアの使命を帯びた彼女たち三人はその足をしっかりと大地に踏ん張っていたのだ。
「それが……バトキュアの……!」
『いいえ真理先輩、やりましたよ。ヴェルグ達の勝ちです』
直後、一面に広がった曇天が蒼く煌めく。
そして、万にも及ぶ光の雨が降り注いだ。
叢雲の放った十種雲形・積乱雲。天之叢雲剣と叢雲自身のエネルギーを殆ど使い果たす代わりに、最大の威力と広範囲に及ぶ破壊を引き起こす、まさに必殺技。天から降り注ぐ無数のビームを避けるのは至難の業であり、一発一発が致命的なダメージを秘めている。
バリアを破られ、身動きも満足に出来ない状態、そこへ周囲一帯を破壊し尽くす広範囲攻撃。この波状攻撃を耐えきるドールはまずいない。
『ゲームセットォ! 勝者、チーム・ブロッサムメイツ!』
* * *
会場はまさにカオスと言っていい様相を呈していた。割れんばかりの歓声と怒声が1:1で混ざり合う。原因はもちろん、ブロッサムメイツの勝ち方だ。
「おーおー、魔法少女好きなファンが怒り狂ってるデスねぇ」
「いや先生、そんな呑気な事言ってる場合じゃないでしょ……」
「とはいえ、あいつらには何の落ち度も無い、まっとうな作戦での勝利デス。ルールに違反するような事もしてないデスし、ま……なんとかなるデスよ」
「ええ……そんな無責任な……」
* * *
『まさかまさかの結末に! チーム・マジカル☆ミラクル♡フェリーチェがここで敗退! チーム・ブロッサムメイツの作戦勝ち! いやぁ、このバト子ちゃんのスーパーAIでもこの結果は予測出来なかった!』
「卑怯だぞ! あんな勝ち方!」
「そうだ! 正々堂々と決着をつけろ!」
「あれだって作戦のうちだろうが! 別にいいじゃねぇか!」
「俺はブロッサムメイツを支持するぜ!」
『わー! 皆さん、落ち着いて! 落ち着いて~! ケンカは駄目ですよ~!』
過熱する観客同士の語気が荒くなる。それを必死になだめようとするバト子ちゃんだが、もはやその声も届かないまでになってきていた。
「うわー、なんだか凄いことになってるねぇ……」
「そうね~どうしましょうか~」
マスターブースでは勝ったにも関わらず、遠い目をした吹雪と真理が立ち尽くしている。
「吹雪さん、真理先輩。勝ちは勝ちです。現実逃避せずに堂々としていましょう」
一方で美空は一人やりきった笑顔だった。
「観客のみなさん! 私達の話を聞いてください!」
と、突如として会場に響く声。必死さが伝わる声色に会場は一気に静まり返ってしまった。
「え、と……あ、いきなりすみません……。私はマジカル☆ミラクル♡フェリーチェのメンバー、朝比奈リエといいます! この度は私達の試合を見て頂きありが……」
見れば、バトルフィールドの前にマスターである彼女らがマイクを持って立っていた。
「ちょっとリエ、はやく本題に!」
「ご、ごめんユイ……! えっと、今の試合なんですが、私達のチームが負けました。完敗です」
改めて本人たちからの敗北宣言に、ファンの間に動揺が走る。ざわざわとした会場がもう一度静まりかえるのを待って、リエは言葉を続ける。
「敗因はマスターである私達にあります。ミラクルたちは頑張って戦ってくれて、それぞれ最大限のベストを尽くしてくれました。対戦相手……ブロッサムメイツのドールも、マスターさんも、ここにいる全員が持てる力を発揮した結果です」
まだ中学生だというのに、この大観衆の前で堂々と喋るリエ。その姿に彼女たちのファン、いや観客すべてが一言一句に聞き入っている。
「ブロッサムメイツさんの最後の攻撃には驚きました。だって、倒したと思ってたドールが無事だったんですから。そしてそれは、作戦を最後まで見抜けなかった私達がマスターとして未熟だったせいでもあります。だから、ブロッサムメイツさんの事は、どうか、勝者として褒め称えてあげてください!」
ひとしきり、自分たちの思いを吐き出す。そしてしばしの間、会場は静寂に包まれた。
――――パチ、パチ
――――――――パチパチパチ
どこからか拍手が鳴る。それは連鎖的に広がっていき、会場中がその渦に包まれるまでにそう時間は必要としなかった。
「いいぞー!」
「リエたーん!」
「感動じだっ!」
「うおおおー!」
先程とは打って変わってブロッサムメイツを称賛する声と、打ち負かされたというのにそれでもなお相手を擁護するマジカル☆ミラクル♡フェリーチェの気高さに感化されたファンの叫びで埋め尽くされる。それを受けてリエは少し照れた様子で手を振ってファンの歓声に応え始めた。
「みんなー! 応援してくれてありがとうー! ここまで来れたのは皆のお陰だよー! これからも私達は頑張るからねー!」
「あらあら~、なんだか丸く収まりそうね~」
「ほっ……良かった……」
「むぅ。なんだかこれでは向こうが正義の主人公みたいな感じじゃないですか。勝ったのは私たちなのに」
「あ、あの? 美空さん?」
ぷりぷりと不満そうな顔の美空をどうにか宥める吹雪。会場はいまだ大きな歓声がやまず、次の試合へと進行したいバト子ちゃんほか、大会スタッフも困り出し始めてしまった。
何はともあれ、ブロッサムメイツは二回戦を間違いなく突破することが出来た。次は準決勝戦。あと一つ勝てば、因縁の対決……チーム・黒風白雨との対戦が待っている。
「あー勝った勝った。さ、吹雪たちの所へ戻りましょ」
「なんだか今回は疲れましたね……」
「ふははは! 叢雲、アルテミス! ン我がマスターの下へいざ、参らん!」
「……フレイスヴェルグ、あんたそれ気に入ったの?」
(コクコク)
「別にいいけど……私達を巻き込まないでよね?」
「楽しいから叢雲もやってみるといい。きっと悪の女幹部とか超似合う」
「ゼッタイに嫌よ!」
「あ、あはは……」
作者はノリノリで執筆してたデス!(報告)
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