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メインホールは薄暗く、しかし観客の熱気に包まれている。この日を待ち望んでいたファンの熱量と、もうすぐ始まるバトルへの緊張感とが混ざり合い独特の雰囲気を醸し出す。
バトルドール・ガールズ東日本大会、その本戦大会。
二年ごとに開催されるこの公式大会は多くの強豪チームのバトルが見られるとあって、全国からファンが観戦にやってくる。そのため観戦チケットの倍率は非常に高く、ネットでの視聴も同時接続は最大10万人超という大規模なイベントである。
BDGの楽しみ方はバトルだけではないものの、多くのマスターとドールはこの東日本・西日本、そして全国大会を目指して共に切磋琢磨していく。それは単に数少ない公式戦だから、というだけではない。人間のDNAに刻まれた闘争の本能がそうさせるのか、それともドールのAIプログラムにそのようなコードがあるからなのか。それは不明だが、一つだけ言えるのは。
頂点に立ちたい。
「さぁー! とうとうこの日がやってまいりました!」
ホール中央に突如として現れる巨大な女の子。3Dホログラムで映し出されたBDG公式マスコットキャラクター、バト子ちゃんがくるりとその場でターンする。バトルフィールドの立体映像と音響技術が使われており、あたかもそこに実在するかのような臨場感が観客を圧倒する。
「私のAIも既に興奮しております! なぜなら! 東日本の各地から集まった猛者どもが、互いの意地とプライドを賭けてギリギリの限界バトルを繰り広げるから! みんな、熱いバトルが見たいか~?!」
観客の合いの手と同時に会場全体が明るく照らされる。そしてホールには出場する各チームが揃っていた。予選大会を勝ち抜いたトップクラスの実力を持ったチームだけあって、その纏う雰囲気は並々ならぬものを秘めている。
「予選の激闘を勝ち抜いた16チーム! 果たして一体どのチームが並み居る強敵を蹴散らし、その頂点に到達するのか! 全く、熱い夏がさらに熱くなってきたぜっ!」
すると観客席に向けて巨大なボードが表示される。そこにはいわゆるトーナメント表が記されていた。
「本戦大会はトーナメント形式で行われます! AブロックとBブロック、それぞれに分かれて勝ち抜いていったチームが決勝戦を戦います! さて、それでは早速組み合わせ抽選をしましょう!」
ハイテンポのBGMと共に、トーナメント表の空白だったチーム名が次々と埋まっていく。同じ予選大会で戦ったチームはA、Bブロックで分けられており、ブロッサムメイツと黒風白雨は別のブロックに分けられた。
つまり、吹雪と叢雲たちが黒風白雨にリベンジするためには決勝戦以外にはありえないのだ。
「さぁ、抽選も終わりました! 今日から三日間、このトーナメントに従ってバトルが進められていきます! ルールは皆さんご存知、公式戦ルール! 制限時間内に敵チームを全て撃破するか、多くの戦果ポイントを稼いだチームの勝利です! っと、この辺はもう説明しなくても大丈夫ですよねっ!」
「私達、Aブロックで一番最初の試合だね!」
「いきなりのバトルとか、ちょっとドキドキするわね~」
「いいじゃないですか。チームの宣伝になりますし、黒風白雨の皆さんに私達の強さを見せつけられます」
会場中央、ブロッサムメイツは発表されたトーナメント表を見てそれぞれ意気込みを語っている。決勝戦までは3つのチームを破り、Aブロックを制覇しなくてはならない。だが、他のチームも黒風白雨に負けず劣らない実力の持ち主ばかりだろう。
「そうね~! あれだけ特訓をしてきたし、今度は絶対に勝つわよ~!」
「新武装もギリギリまで調整しましたし、準備は整っています。後は行動あるのみ、です」
「……最初はさ、大会で優勝して私達の学校を廃校にしないようにするって目的だったけど。今は目的と手段が入れ替わっちゃってる気がするんだ」
そう話す吹雪の視線はとあるチーム――――黒風白雨へと注がれている。
「でもね、今はそれで良いと思ってる。だって、ここにいる人たち、みんな優勝するのが目的なんだもん。それだけの為にここまで勝ち上がってきてるチームばかりだし、私達も優勝を目指していかないと気持ちの部分で負けちゃうような気がするんだよね」
「フン……そんな御託は良いのよ」
腕組みをし、自信満々な様子の叢雲が仁王立ちしている。その背中には天之叢雲剣を背負い、挑戦的な笑みを浮かべ吹雪へ問いかけた。
「吹雪はどうしたいの? 誰に勝ちたいの? 言ってご覧なさいな」
「……うん。私はね、黒風白雨……ううん、シューちゃんに勝ちたい! シューちゃんと陽炎に勝って、私と叢雲の方が強いんだって言いたい!」
「それでいいのよ。後は私が戦ってきてあげるわ」
二人は互いに見つめ合い、ニヤリと微笑む。
「ちょっとちょっとっ! お二人だけで戦うわけじゃないんですよっ!」
「同意。それに叢雲だけだと突撃しか作戦がとれない。これは致命的」
そこへアルテミスとフレイスヴェルグが割って入る。真理と美空も同じ気持ちのようで、吹雪は改めてみんなの方へと向く。
「――――うん。みんなで、このチーム・ブロッサムメイツで優勝しよう!」
「……さて、長々と喋ってきましたが、そろそろ観客の皆さんも焦れったくなってきた頃合いだと思います! では、そろそろ開催の宣言をさせていただきますね!」
立体映像のバト子ちゃんが静かに深呼吸し、マイクに向かって叫ぶ。
「それではっ! BDG公式主催、東日本大会本戦の開催をここに宣言致します!」
* * *
「先輩、どうやら俺らは第一試合みたいっすよ」
「オウ、辰子。オメーも準備しとけよ?」
「うっす。……というか、ブロッサムメイツってどんなチームなんすか? 俺、全然知らないんすけど」
「いやどーでもいいんじゃね? ゆーてもあーしら、サイキョーだし?」
「いや、副部長……そんなこと言ってるとフラグ立っちゃうんで止めてくれないすか?」
「ブロッサムメイツ、確かアレだよ。黒風白雨とやりあったっていうチームだ。なんでも最近結成したチームらしくて、ネット上じゃあんまりめぼしいデータは無かったが……」
「が? 何か分かったんすか?」
「フレイスヴェルグっていうドール……ありゃあ要注意だ……あの可愛さはマジパネェ……後で写真一緒に撮ってくれねぇかな」
(また部長の悪いクセが出てる……)
チーム・Xドラグーン。吹雪たちブロッサムメイツと第一試合で当たるチーム。若干、怪しい言動が目立つが、それでも本戦大会に勝ち上がってきた実力は本物だろう。
本戦大会、一日目。第一試合の開始まで、あと少し。




