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第二十四話「フン……そんな御託は良いのよ。吹雪はどうしたいの? 誰に勝ちたいの?」

第二十四話


「ふわぁ……ここが会場? それに人がたくさん!」


 駅の正面から出てきた吹雪はその大きさに、人の多さに圧倒される。ここは東京都23区内のとあるイベント会場から一番近い地下鉄駅。目的はもちろん、BDG東日本大会本戦へと参加するためだ。


「凄い人の数ね〜? みんな、迷子になっちゃ駄目よ〜?」


「こ、こんなに人でごった返しているとは……ちょっと疲れてしまいました」


 吹雪らの住んでいる街も関東圏に入るとはいえ、さすがに人口密度が違いすぎる。大都会の洗礼を受けつつ一行は目的地を目指す。


「わぁ! ここが会場?!」


「ええ、ダンバイドームね~。BDGの開発と製造している老舗玩具メーカー・㈱ダンバイが開催するイベントでおなじみの場所よ~」


 色とりどりの垂れ幕にのぼり旗。イベントホールへの入り口は開場待ちの観客らが長い行列を成している。すこし離れた場所ではキッチンカーや屋台、出張売店が並び、美味しそうな匂いがここまで漂ってきた。


「お二人共、選手用の入り口はこっちみたいですよ」


 メインホールの端、観客用の入り口とは別に選手用の通用口があった。吹雪らはそこで警備員に予め郵送されていた大会参加賞を見せ、通用口から控室に案内される。


「へー、各チームにそれぞれ控室があるんだね!」


「開会式まで少し時間があるわね~。私すこし休むわ~」


「私はヴェルグの最終調整をしておきます。万が一があってはいけないので」


「あ、なら私ちょっとそこら辺を見てきます!」


「吹雪ちゃん、気をつけてね~」


「開会式が始まる5分前には戻ってきてくださいね」


「うん、分かった!」


 勢いよく扉を開けて出ていく吹雪。恐らくは外の売店が目当てなのだろう。と、彼女のカバンからもぞもぞと叢雲が這い出てきた。


「ようやく到着したの? って、吹雪は?」


「あら〜吹雪ちゃんなら今ちょうど出ていったばかりよ〜?」


「は?! この私を置いていくなんていい度胸ね!」


「開会式の前には戻ってくると思いますけど……」


「むぅ……ここで待つしかないわね」


「だったら叢雲ちゃん、私と一緒に吹雪ちゃんを探しにいきましょうか〜?」


「あっ、それなら私も! 私も連れて行ってください、真理!」


 いつの間にかアルテミスも外に出てきていて、机の上でぴょんぴょんと飛び跳ねている。よほど真理から離れたくないようだ。


「そうね、アルテミスも行きましょうか〜。どうする? 叢雲ちゃん」


「あら、助かるわ。それじゃあお願いしようかしら」


「ヴェルグちゃんはマスターと一緒にいる」


「先輩、大丈夫ですか? なんなら私が代わりに……」


「美空ちゃん、心配しないで〜? ちょっとそこまで探しに行くだけだから〜」


 そう言うと真理は叢雲とアルテミスを自分の肩に座らせる。どことなく、叢雲が遠慮がちにしているのが分かる。高飛車な性格だが、あれは吹雪だからこそ素の自分をさらけ出しているのだろう。


「それじゃあ二人とも、落ちないように気をつけてね〜」





 * * *





「見つからないわね……」


「吹雪ちゃん、どこに行ったのかしら〜?」


「スマホも控室に忘れてるようですし、困りましたね。真理」


 エントランスはおろか、外の売店にも吹雪の姿は見えない。まさか駅前の方までは行っていないはずだが、それでも捜索範囲を広げたほうがいいのかもしれない。


 そんな風に真理が思っていると。


「あら……? あの、すみません」


「はい〜? まぁ、あなたは……」


 そこに居たのはどこかで見た顔。長く艷やかな黒髪、白磁のように透き通った肌。以前、ファミレスにいた店員……いや。


「きちんとお会いするのは初めてですね。私は萩谷風(はぎやふう)、黒風白雨のメンバーです。あなたはブロッサムメイツの愛宕さん……でいいのかしら?」


「まぁ、ご丁寧にどうも〜。ええ、愛宕真理です」


「……フン、黒風白雨のマスターが私達に何か用かしら?」


「ちょ、叢雲さん! そんな()()付けちゃ駄目ですって!」


 真理の肩にちょこんと座ったまま叢雲は風の方を睨んでいる。予選では彼女と直接戦闘したわけではないが、叢雲にとっては黒風白雨の一員というだけで敵意を向けるに値するらしい。


「ふふ、噂通りのドールですね」


「すみません〜。こら、叢雲ちゃん。そういう態度は駄目よ〜?」


「……フン!」


「ごめんなさい、怒らせてしまったようね。それより……こんなところで誰か探しているの? 先程からそんな感じがしたのだけれど」


「ええ、うちのメンバーを探してるんだけど〜全然見つからないのよね〜。どこに行ったのかしら?」


 真理は腕時計を見ると、もうそろそろ控室に戻ったほうが良さそうな時間だった。


「それなら私も探しましょうか? もうすぐ開会式の始まる時間でしょう?」


「あら〜、お気持ちはありがたいのだけど……」


「大丈夫、ブロッサムメイツについてちゃんと調()()()()()わ。もちろん、あなた達マスターの事もね?」


「……なら、お願いしようかしら〜? 吹雪ちゃんて言うんだけど……」


 真理はその言葉の意味するところを思案するが、風の表情や佇まいからして特に裏はないらしい。喋り方といい雰囲気といい、この風という人物は根が真っ直ぐなのかもしれない。


「ああ、あの娘ね。うちのチームの秋華の幼馴染だって聞いてるわ」


「たぶんこの辺りの屋台で何か食べ物を買いにきたんだと思うんだけど~」


 二人は周囲を見渡しながら歩いていく。キッチンカーや屋台からはケバブやカレーライスといった美味しそうな匂いがしてくるせいか、それらを求めて並ぶ人が多い。


「この前はごめんなさいね」


 突然、風が口を開く。何のことかと真理は考えるが思い当たる事は一つ、すぐに分かった。


「いいえ~、あのときは舞さんも何か事情があったんでしょう~?」


 予選大会の後、真理たちは黒風白雨のメンバーの一人、浦沢舞にバトルを申し込まれたのだ。その時は美空とフレイスヴェルグが一対一で戦ったものの、秋華が割り込んできたことで有耶無耶になってしまった。


「私達のドールはなるべく他人に見せないよう約束をしていたのよ。この大会で優勝するため、ギリギリまで性能を隠しておきたかったし、何度も戦ううちに対策を取られちゃうでしょう?」


 真理はニコニコ顔で風の話を聞いているが、ブロッサムメイツとしては正にその情報収集のために勝負を引き受けたとは言えない。そして、実際に彼女らへの対抗策を講じている最中だ。


「舞の言い分はね、あなたたちブロッサムメイツが運や()()()で本戦に上がれたんじゃないのか……それを確かめたかったらしいの。あ、ごめんなさいね。決して悪い意味で言ってるんじゃないのよ?」


「舞さんの考えももっともだわ。あのとき、私達は全然手も足も出なかったもの~」


 叢雲は「なによ、上から目線? 偉そうに……」と毒づいているが、そこはあえて無視する真理。


「でも、次に戦うときは必ず勝つ、でしょう? あなたたちからはそんな雰囲気がするわ」


「フン、当然よ。予選大会はたしかに私達が負けたわ。完敗よ。でもね……!」


「私と真理はあれからたくさん特訓したんですよっ! 新装備も準備万端、いつでも戦えますっ!」


「見ての通り、ウチのチームは負けず嫌いが多いのよ~。もちろん、私もね?」


「……ふふ、良いチームですね。ブロッサムメイツは」


 ふわりと笑う風。だが、その笑みはどこか諦めを含んでいるように真理は見えた。


「あなたたちの黒風白雨も良いチームだと思うわよ~? あれだけの戦闘力、よっぽど練習して、たくさんぶつかりあった証拠では~?」


「そう……ね。ええ、私達もいろいろなことがあったわ。だってうちのチームも、負けず嫌いばっかりだもの」


「ねぇ、風さん? もしかして……」


「あれ、真理センパイ? と、どちら様?」


 と、唐突に吹雪の声が。真理と風はそちらの方を見ると、彼女はクレープ屋の行列に並んでいる。その手には唐揚げやハンバーガー、他にもここいら一帯の屋台を巡ったらしい荷物を抱えていた。


「ちょっと吹雪! この私を置いていくとはいい度胸ね!」


「吹雪さん、探しましたよっ!」


「あなたが吹雪さんね? 私は黒風白雨のメンバー、萩谷風と申します」


「あ、これはご丁寧に……え? 黒風白雨? シューちゃんのチームの?」


「吹雪ちゃん~、失礼よ? きちんと挨拶なさい~? それにあなたを探すのを手伝ってくれたんだから~」


「いえいえ、私が好きにやったことですし。それと、のんびりお話してる時間は無さそうです」


 風は自分のスマートフォンで時刻を確認する。真理も腕時計で確認すると、開会式まであと5分というところまで迫っていた。ご丁寧に、美空からのショートメッセージも届いている。


「あっ、もうこんな時間?! うぅ~、せっかく美味しそうなの買ったのに食べる時間が無いよー!」


「そんなの後になさい! ほら、さっさと戻るわよ!」


「うぅ~……あ、えっと、萩谷さん?」


「何かしら? 吹雪さん」


 言いたいことが纏まらないのか、少し間を置いて吹雪は真っ直ぐ彼女を見る。


「シューちゃん……じゃないや、秋華ちゃんに伝えておいてください。私達は絶対に勝つって」


 その言葉に真理は視線で伝えてくる。「ね~? 負けず嫌いでしょ」と。やや面食らってしまった風はクスリと微笑んで返す。


「分かったわ。秋華には必ず伝えるし、決勝戦で待ってるわ。絶対に勝ち上がってきてね」


「はいッ!」




この度、すぎもんさんが拙作アルヴァリスと開放のゴーレムのコラボ作品を書いてくださりました!


スーパーなろうロボット小説大戦~天涯のアルヴァリス×解放のゴーレム使い~

https://ncode.syosetu.com/n4806gt/


謎の世界に飛ばされてしまったクレア! そこで出会うのは、銀髪の女性……そしてマシンゴーレムと呼ばれるロボット?! 一体なにが起きたのか?! クレアはユウの下へ帰る事ができるのか?!


ぜひお読みください!

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