22ー2
22ー2
「と、言うわけで真理センパイに連れてこられたわけなんだけど……」
吹雪たちがやって来たのはいつもの街のゲームセンター。平日の夕方でも客がそれなりに混み合い、BDGのバトルフィールドでは白熱した戦闘が繰り広げられている。
「あ、こっちよ〜、みんなもう待ってるみたいね〜」
「みんな? 待ってる?」
真理が向かっていったのは稼働中のバトルフィールド。そこではまさにバトルが佳境を迎えているようだ。
「……! 吹雪さん、あのチーム!」
「あ、あれって?!」
吹雪と美空が目にしたのは、見覚えのあるドール。ひと目見て海賊と分かる衣装、巨大な大砲片手に荒々しく戦うのは――――
「オラオラァ! このブラッド・パイレーツのアルビダ様に敵うと思ってんのかい!」
立てば勇猛、座れば策士、戦う姿はバイキング。凄まじい戦闘力と巧みな戦法であらゆる難敵・強敵を撃破してきたブラッドパイレーツだ。
リーダーのアルビダを先頭に近接特化のメアリー、射撃特化のアンというバランスの取れたチームワーク。吹雪たちブロッサムメイツは直接彼女たちと戦ったわけではないが、これを破るには生半なことではないとよく知っている。
「見て〜吹雪ちゃん? 相手のチームは誰でしょう〜?」
「あのドール……もしかして?!」
ブラッドパイレーツが戦っている相手、それは灼熱の炎を操る紅蓮のドールたち。予選大会で優勝候補の一つとされていたバーニングフレアだ。
「へっへ、陸に上がった海賊なんざあたしらの敵じゃねー!」
リーダーであるイグニッシュは手にした無骨な火炎放射器で周囲に大量の炎を撒き散らしながらブラッドパイレーツを追い詰めていく。その様子はさながら火炎を纏った大蛇がのたうち回っているようだ。
「真理先輩、もしかして待ってると言ってた人たちは……?」
「そうよ〜美空ちゃん〜! 麗華さんの伝手を頼って私達の対戦相手になってくれるチームを探してたんだけど、ブラッドパイレーツとバーニングフレアが快諾してくれたのよ~」
「こ、これは……確かに強敵ですけどっ?!」
吹雪は予選大会での激闘、特にバーニングフレアとのバトルを思い出す。あの時は叢雲の捨て身の大技で窮地を脱したが、一歩間違えればあそこで敗退していたかもしれないほど彼女たちの実力は高い。
「ふん、いいじゃない? 何度戦っても私達が勝つに決まっているわ」
「ふーん、アタシらの前でそういうこと言えるんだー?」
「へっ、それくらいじゃねぇとリベンジのし甲斐が無いぜ!」
叢雲の言葉に反応したのはバトルフィールドの両側、それぞれのマスター。バトルはちょうどタイムアップによるドロー判定。両者とも一歩も退かない白熱した戦闘を繰り広げたようだ。
「はじめまして~私はブロッサムメイツの~……」
「おう、知ってるよ。愛宕真理サンだろ? んで、そっちの黒髪が葛城美空、頭にドール乗っけてるほうが神代吹雪。いつぞやの予選は忘れてねぇぜ」
「ちょっと日美子ちゃん! 私達もちゃんと挨拶しないとでしょ!」
「おいマリー、アタシのことはボルケーノって呼べよ!」
「どうもどうも~ウチらがバーニングフレアでーす! それからこの面倒くさいリーダーはほっといてな~」
真っ赤に染めたツンツン頭のパンク娘、火山日美子に大人しそうな印象の窯元緋毬、独特なイントネーションで話す木山萌依留。それぞれが改めて自己紹介をし、吹雪たちも挨拶する。
「そっち終わったー? それじゃあアタシらの番だね。アタシはブラッドパイレーツのリーダーやってる西海紬〜。よろしくねー」
「私が水上杏莉で、」
「私が水上芽亜里だよ」
「二人は姉妹なんだよねー」
「あのっ、はじめまして! 私は神代吹雪って言います! 予選大会では凄いバトルでした!」
「ああ、ありがとねー。でもアタシら黒風白雨に負けちゃったからなー」
「それを言ったらウチのチームはコイツらに負けたんだぜ?」
「まーねー。でもそれを承知でここに来たんでしょー?」
「おうよ! 勝負は勝負、実力で負けたとは思っちゃいねぇがこれもバトルの宿命だしな。それよりも重要なのはアタシらバーニングフレアに勝ったコイツらが本戦で無様なバトルをしないようにしねーと!」
「ブラッドパイレーツも似たようなもんかなー。黒風白雨にコテンパンにされちゃった手前、あいつらをギャフンと言わせてもらいたいわけよー。というわけで、これからブロッサムメイツにはアタシたちの特訓を受けてもらいますー」
熱血な日美子とローテンションな紬。割と対照的な性格な二人だがその思惑は一致しているらしく、バーニングフレアとブラッドパイレーツは吹雪たちに協力してくれるという。両者とも予選敗退となってしまったが、その本来の実力は十分に予選突破していてもおかしくない程。
「よ、よろしくお願いします!」
そんな強豪チームに協力してもらえるとあって、吹雪はペコリとお辞儀をしてみせる。それを見て日美子と紬はお互いに顔を見合わせ、そしてニヤリと獰猛な笑みを浮かべた。
「へっ、もう本戦まで時間がねぇんだ。スパルタでいくぜ!」
「ドールは戦えば戦うほど学習して効率がよくなるからねー。バンバンいくよー?」
「お、お手柔らかに……!」
先程までバトルしていたせいか、二人はむき出しの闘志をぶつけてくる。流石は全国レベルの実力者、吹雪はその迫力に思わずたじろいでしまった。
「ふふふ、私の練習相手にはちょうどいいじゃないの。あのいけ好かない陽炎を倒すために、ありがたく踏み台にさせてもらうわ!」
「テメェ……いい度胸じゃねぇか!」
「まずはお前から血祭りにあげてやろうかゴラァ!」
叢雲は叢雲で彼女らのドール、アルビダやイグニッシュに挑発まがいの言動をかましている。しかし三人とも、互いに互いを見やるとにやりと微笑む。どうやら同じバトルフィールドに立ったドール同士の遠回しな挨拶のようなものらしい。
「よーし、打倒・黒風白雨! ねらうは優勝だー!」
「ここまで来たらやるしかありませんね」
「うふふ、本戦が楽しみね〜!」
吹雪と美空、真理は拳をそれぞれ突き合わせる。本戦大会は東日本中から猛者が集まり激戦が必至となり、これまで以上に強大な相手がひしめいている。そして、おそらく決勝戦には黒風白雨が待ち構えているだろう。
だがブロッサムメイツの三人はそのプレッシャーに負けることなく闘志を燃やしている。残り少ない時間ではあるが、それでもやれるだけの事はできるはずだ。そう信じ、吹雪は、美空は、真理は前を見続ける。
「……そういえば、今日は海賊のコスプレしてないんですね?」
「あー。アレはあくまで大会やイベ用の格好だからねー」
「意外と着るの面倒なのよ、メイクも大変だし」
「でもあのカッコじゃないと、ブラッドパイレーツって認識されないのはツライのよ……」
意外なところでトップチームの苦悩を垣間見てしまった吹雪たちであった。




