第十四話「だから言ったでしょ? 私の名前は炎を消す雲を呼び出す神剣なのよ」
第十四話
チーム・バーニングフレアはその過剰な火力を武器に相手を圧倒するチームだ。火炎放射器、グレネードランチャー、ナパームミサイルを駆使した、線ではなく面で制圧する攻撃は並のチームでは相手にならない。
「チッ……結構なダメージを貰っちまった……ッ!」
リーダーであるイグニッシュは自身のステータスを再度確認する。残りHPは約六割。エネルギーは余裕があるが、装甲はビームで焼け焦げ、メインウエポンである火炎放射器も被弾によって本来の火力が出せなくなっていた。
『イグニッシュ、無事か?!』
「おうよマスター! でもこれはちっとヤベー展開だ!」
イグニッシュのマスター、ボルケーノは安堵したが、その戦意は未だ鎮火していない。
『火炎放射器は駄目だ、このままじゃ使い物にならねぇ! こうなったら全員、近接戦でカタを付けるぞ!』
「了解だ、マスター! 行くぞウェスタ、ヘスティア!」
「俺達をこんなにした相手だ、丁寧に屠ってやんぜ!」
「撲☆殺!」
気合を入れ直すバーニングフレア。イグニッシュはその場に火炎放射器を突き立て、腰に装備していた板状の武器を取り出す。小さいが鋭利な刃が無数に並んだソレは小ぶりな片手持ちチェーンソー。しかしエンジン音が轟きチェーンが激しく始動し始めると同時に、その刃は勢いよく炎に包まれた。
ビジュアル的にも、実際の性能も凶悪なフレイムソーを構えるイグニッシュと、その後ろに控えるウェスタ、ヘスティア。二人は武装こそ無事だが、何発かビームの直撃を食らっており、残りHPの余裕は無くなっている。
彼女たちと相対するのはチーム・ブロッサムメイツのドール二人。片方は黒いウイング、もう片方はアースカラーの砲撃戦特化型。実力は未知数だが、ここまで無事に勝ち残っている事、実況から聞こえてくる戦果からそれなりにやるらしい。
『イグニッシュ、あの大剣使いはエネルギー切れでへばっちまってるらしい。隙を見てヤッちまえ!』
「おうともよ! さっさと倒して、残りの連中もこんがり焼き上げてやるぜ!」
フレイムソーの回転を一段上げ、その顔に獰猛な笑みを浮かべるバーニングフレア。まずはウェスタのグレネードランチャーが連射され、何発もの榴弾が飛翔する。それをアルテミスは肩部ガトリングで迎撃、見事に撃ち抜いて両者の中間点で爆発炎上した。
「そっちは囮だァ!」
グレネードの破片をくぐり抜け、イグニッシュが猛然とダッシュする。狙いは黒いやつ。
「やらせません!」
引き続きガトリングを掃射して迎撃するアルテミス。しかしイグニッシュは軽やかな動きで銃弾の雨を回避していく。
「無視☆必罰!」
ここぞとばかりにウェスタの全身に武装されたミサイルハッチが展開する。無数のミサイルが尾を引いてアルテミスとフレイスヴェルグに狙いを定め追尾した。
「ふふふ、このヴェルグちゃんを舐めてもらっては困る……!」
チャキ、と二丁のマシンピストル・フギンとムニンを構えるフレイスヴェルグ。その瞳がキラリと光り、彼女に搭載された各種センサー及びレーダーが全てのミサイルを捕捉する。フギンとムニンはその連射性を生かし、アルテミスと協力して即席の弾幕を形成した。
「追加☆増量!」
ミサイルの数はさらに増し、二人が迎撃できる許容量を遥かに圧倒してくる。アルテミスはキャノン砲やガトリング、オリオン・ボウと、複数の火気を搭載しているが故にミサイルの搭載量はそれなりだが、ウェスタはナパームミサイルに武装を極振りしている。そのため、ちょっとやそっとではミサイルが尽きることがないのだ。
無限かと思うほどのミサイル群とグレネード。さらにイグニッシュがフレイムソーを携え接近していく。先程と同じく、圧倒的火力でブロッサムメイツを追い詰めるつもりのバーニングフレア。
だが。
「?!?! 発射☆不可?!」
ウェスタのコンテナは突然沈黙し、ミサイルの雨は唐突にやんでしまった。
「オイ、テメェら! こっち寄るんじゃねぇぞゴラァ!」
「接近☆誘爆!」
「チッ、これじゃあ同士討ちになっちまう!」
なんとフレイスヴェルグとアルテミスは一気に前進し、イグニッシュとヘスティアにピッタリとくっつくよう立ち回り出したのだ。
ヘスティアのグレネードランチャー、ウェスタのナパームミサイルはかなりの攻撃力を誇る武装だが、その攻撃範囲から味方の近くには撃ち込めないという弱点があった。高すぎる火力が仇となった形だ。
彼女らの持ち味は敵に息をつかせないほどの猛攻で自分たちのペースに引き摺り込む事だ。その一端を担うウェスタのミサイル攻撃が停止するのはかなりの痛手となる。
「バーニングフレアの戦い方は有名。それに対する策もマスターとヴェルグちゃんは考えていた」
「これならミサイルもグレネードも撃てない筈です!」
超接近戦を仕掛けるブロッサムメイツ。フレイスヴェルグはフギンとムニンのマシンピストルを巧みに操り、アルテミスはオリオン・ボウをアーチェリーモードにして戦う。
「へっ、見てて分かるぜ! お前達二人は近接向けの武装じゃねえ! そんなんでこのアタシ達に……おわっ?!」
フレイムソーで反撃しようと力むイグニッシュ。だが、目の前のフレイスヴェルグは全身を使った重心移動と腰部スラスターによるアクロバティックな動きで相手を翻弄するではないか。
まるでアクション映画さながらの銃捌きで的確にイグニッシュの装甲を削っていく。自慢のフレイムソーも、ただただ宙を切り裂くばかりだ。
「てっ、テメェら……! そんなナリで近接プログラムも仕込んでやがったのか?!」
「生徒会長さんと皐月さん仕込の修行はバッチリなんです!」
アーチェリーモードのオリオンボウは速射性と特殊な軌道を描くビーム弾を撃てるようになる。アルテミスはそれを最大限に活かしつつ、ゼロ距離からヘスティアを射る。重いランチャーを両手に持ったヘスティアはどうにかしてその射線を逸らすのに精一杯だ。そして一人残されたウェスタは援護も出来ず、かといって逃げるという選択肢も無い。
「へっ、ただのルーキーかと思えば! なかなかやってくれるぜ!」
「ヴェルグちゃんはマスターの為にこの予選を突破する。その為なら例え火の中、水の中、草むらの中!」
「だぁー! いい加減に離れろッ! ウザイ!」
「いいえ、絶対に離れません! あなたを撃破するまでは!」
「命令要請☆主人!」
これまでの勢いはとっくに消え、バーニングフレアは防戦一方となってしまった。本来ならその火力を最大限に発揮し、とっくに撃破している相手にここまで手こずるとは。
「なんて、ちょいと追い詰められた感じ出してみたけどよォ?」
必死なだったイグニッシュの表情が急に変化する。口角を持ち上げ、ギザギザな歯が剥き出しになるほどの、猛獣を連想させる笑み。
「何を言って――――」
瞬間、フレイスヴェルグの華奢な身体が宙に舞った。




